世の中、活字離れが進行中である。「富士には月見草がよく似合う」という太宰治の有名なフレーズも、知らない人間の方が圧倒的に多くなるのだろう。この月見草、在来種のそれではなく、外来種のオオマツヨイグサを指しているとおもわれる。西洋種には、黄色い花ではなく、白などの花が昼間も咲いている園芸種もあるのだが、野生種のオオマツヨイグサは荒れた土地にも大いに繁殖したものだった。浅川の川原も、ホタルが飛び交っていた頃から、ごく普通に繁茂していた。その後、ホタルの姿がすつかり消え去った後も、オオマツヨイグサは、相変わらず早朝まで花の香りは放っていた。
その環境に強いと思われていた帰化植物の茂る姿が見られなくなったことに気が付いたのは、記憶の上では12年位前のことである。理由は分からないが、代わりにオオマツヨイグサが小ぶりになったような、しかし這い性の今まで見たことのない植物が黄色い花をつけていたのを何度か見かけている。
現在、川原は駆除されるべきとされるアレチウリやニセアカシアの木までジャングル状態に繁茂している。外来種にもかかわらず一定の風情さえ持っていたオオマツヨイグサの消失の原因を知りたい。川原で何が起こっていたのかを。
前述の太宰の1文をはじめ、文化に対する人々の関心が薄れ、共有する日本文化の範囲は狭まりつつある。人々の間で、今まで常識的とされた言葉や概念が、外国語の如くに通じなくなってきている。
日本文化の無知には、忘れな草がよく似合う。