花火は、近くで観るより
遠くで観る方が好きで。
だって、どれだけ近くで観ても
隣にあなたが居ないと
意味がないもの。
そんなこと、あなたは知らない。
今日の約束もきっと忘れてるんだ。
大事なプレゼンを
抱えてるって言ってた。
最近は、家に帰って来ても
相手にしてくれない。
いじけてみても、
料理の腕を披露してみても
私になんか無関心で。
ずっとパソコンの画面と
にらめっこしてるんだ。
今年も1人きりの夏祭りが始まった。
浴衣を着た女の子たちが
綿あめにりんご飴、
射的に金魚すくい、
思い思いに
楽しんでるんだろうな。
そんなことを思いながら
ベランダの外に出る。
むっとした空気が
私の気持ちをさらに重くさせる。
花火の時間まで
あと2分――
ほらね?
今年も1人きり。
なにも変わらない。
もう、止めようかな。
彼を思うのはもう止めよう・・・
そう思った瞬間、
夜空に上がった一輪の花。
私の心をそっと隠すように
大きな音と共に夜空に弾け散る。
「・・・きれい。」
思わず見とれてしまう。
そう―――
この花火が打ち終わって
私の気持ちに変化がなければ
もう止めよう。
そう思って
見上げた空は
はじけ飛ぶ火の粉さえ美しい。
苦しくて涙が出た。
「――――気づいてないだろ?」
ふいにそんな言葉が耳元で聞こえて。
気が付いた時には
すっぽり腕の中に包まれていた。
タバコの匂いがする。
いつもより早い鼓動の音がする。
いつもと変わらない
優しい体温がそこにあった。
また違った涙があふれ出す。
「・・・・どうして?」
そう聞くのが精いっぱいで。
「また、変な事
考えてるんだろうなぁってさ。
最近、仕事が忙しくて
お前に構ってなかったしさ。
帰ってきたらお前がいないとか、
有り得ないから。
花火が終わるまでに
お前を捕まえないとさ。
花火と一緒にお前まで
失くすわけにはいかないだろ?」
―――ずるいよ。
知らないふりして知ってるんだ。
私の心も全部。
いつもそう。
だからまた、離れられなくなるんだ。
でも、きっと。
期待してるんだよね、私も、
元々離れる気なんてないんだよ。
そんなの私には無理なんだよね。
なんか恥ずかしくなって
笑いあった私たちの目の前で
無数の花火が宙を舞い、
私たちを祝福してくれたんだ。

