『逃げろ、ヨル、この世界には
愛も 自由も 平等も 存在しない。
逃げろ、逃げろ、逃げろ。
どこからともなく聞こえる声が
ヨルを追い詰める。
さぁ、ヨルの綱渡りの始まりだ。』
規則とか友情とか勉強とか
狭い世界の中で生きていると
溺れてても 息苦しくても
声をあげて叫んでも
誰も気づいてなんてくれない。
大人は助けてなんてくれない。
むしろその逆で
その夢を その希望を潰そうとする。
そこに存在する
大きな闇に引き摺りこもうとする。
誰かが私の心に踏み込んで来て
全てを粉々に砕こうとしている。
動き出さなきゃ何も始まらない.。
`いったいどれぐらい進んだんだろう。
いったいどれぐらい続くのだろう。
ヨルは思う。
今すぐ全てを終わらせてみようか。'
それでも恐怖が現実へと立ち戻らせる。
あの子だけは私が守らないと。ヨルだけは。
その思いが少女を何度も死の淵から
生を掴みとらせた。
そして最も重大なことは
死を選ぶという勇気も 力も
少女にはなかったということだ。
そう胸を撫で下ろしたのは
涙を流したあの子の心に
安堵したからだろう。
傷ついていくのは少女だからか―
思いは平行線のまま交わることなく続いていく。
“否定すればするほど、疑われますからね”
そうして知っていく。
大人になっても何も変わらないことを。
今のこの時よりもっと不自由で
もっと面倒で退屈なことを。
そうして知っていく。
この世の中は生を選べないということを。
希望なんてどこにも落ちてないってことを。
それでも少しずつ成長していく。
誰かの生の隣で、誰かの死の隣で。
余りあまった孤独を抱えて。
少女たちはその孤独の中で
見つけていく、遠回りしながらでも。
ちゃんとここにある、寄り添っていける。
命の拠り所を。
心の端にいつもある、見つけることが出来る
心の拠り所を。
『永遠の闇だと思っていた世界に
色とりどりの光が煌めき始めた。
そう、ヨルが恐れていたのは闇ではない。
光だ。明るい世界のその果てに絶望を
はっきりと見ることが怖くて
ヨルは自分で世界を闇の中に沈めたのだ。』
少女たちはきっとこれからも
見定めていくことが出来るだろう。
今というこの現実を受け入れることができたから。

