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先日の大更駅の記事で予告したとおり、数回に分けて松尾鉱業鉄道の廃線探訪シリーズを開始します。

東洋一の規模の鉱山専用鉄道

https://blogs.yahoo.co.jp/IMG/ybi/1/60/5d/tophamhat6539/folder/1499461/img_1499461_55180323_8?1275126896
(写真S44・北斗星さん提供 ED50形電気機関車:1951年日立製作所製。廃止後、秩父鉄道に譲渡)
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奥羽山脈北部に位置する八幡平東側の中腹で、鉱石の採掘操業をした松尾鉱業㈱が、現JR花輪線の大更駅から松尾村屋敷台までの12.3kmに施設した専用鉄道が松尾鉱業鉄道である。
(一般的には松尾鉱山鉄道と呼ばれていたので、記事内では“鉱山”と記述することにします)

精製硫黄や硫化鉄鉱の運搬に利用され、最盛期には1万3千人もいた鉱山関係者や地域住民、生活物資の輸送などにも使われた。また、一時は上野から屋敷台までの直通スキー列車も運行された。

松尾鉱山は1890年(M23)に露頭が発見され、1914年(T3)に松尾鉱業㈱が創立、採掘と製錬が開始された。
最盛期の1960年代には精製硫黄10万t、硫化鉄鉱68万tの生産があり、長い間東洋一を誇ったが、その後、石油精製時の回収硫黄に押され急激に衰退、1972年(S47)に閉山となった。

専用鉄道の設立は、屋敷台と東北本線(IGR)好摩駅間21kmの計画のうち、屋敷台から寄木間7kmに完成した馬車鉄道に始まる。1914年(T3)のことで、翌年には大更まで延長された。さらに1917年(T6)には平舘・好摩間に岩北軌道が敷設され、屋敷台から大更経由で好摩までの輸送体制が確立されることになる。

1929(S4)にはガソリン機関車を導入、1934年(S9)松尾鉱山専用鉄道として認可を得て、乗車賃十銭を徴収した。1948年(S23)地方鉄道として営業開始、3年後に電化が完成する。

しかし、1969年(S44)会社が倒産し鉄道も運休。その後硫化鉄鉱のみの輸送も行われたが、三年後には全ての運行を終えた。

JR大更駅構内には、未だにホーム跡が残っている。
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駅舎は現在のJR大更駅とは別にあった。白いアパートがある辺りに駅舎が建っていたという。
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反対側から見る行き止りのホーム。
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そのホームへ停まっている松尾鉱山鉄道の電車。
https://blogs.yahoo.co.jp/IMG/ybi/1/60/5d/tophamhat6539/folder/1499461/img_1499461_55180323_7?1275126896
(写真S44・北斗星さん提供 モハ20形電車:1968年国鉄払い下げ。廃止後、弘南鉄道に譲渡)

ホーム跡へと続くレールは、現在は花輪線のレールに繋がっている。
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当時も花輪線と繋がっていたが、松尾鉱山鉄道の本線は花輪線と500mほど平行して敷かれていた。
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大更駅を出てすぐ国道282号線(津軽街道)と交差する。
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この付近に踏切があったのは、今でもよく覚えている。
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父親の実家が平舘の方だったので、子供のころから何度もここを通っていました。
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鮮明に記憶にあるのは、踏切を松尾鉱山鉄道の蒸気機関車が通り過ぎてゆく光景、そして奥の花輪線にも同じく蒸気機関車が走っていて、この踏切で停まるのが当時の楽しみのひとつでもありました。
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「私鉄」という単語を覚えたのもこのころで、当時は「国鉄」が鉄道のすべてでしたが、ひとつの会社が独自に鉄道を運行していることに驚いたのを覚えています。そして岩手県内にある廃線路線の中で唯一現役時代を生で目にしたことがあるのも松尾鉱山鉄道だったのです。
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踏切の先は、それらしい跡が分かります。
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よく見ると石垣がありましたが、当時のものかは不明です。
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この先は私有地で藪になって進めませんでしたが、著書「鉄道廃線跡を歩くⅤ」ではキロポストもあったとか。
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線路跡は緩く左へとカーブし、西に進路をとって国道282号線・花輪線から離れます。
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さらに畑の中を進む。そこは資材や廃車、石材置き場やになっていた。
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よく見ると墓石のようで、まるで廃線になったことを弔うかのようにも見えた。
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参考資料:昭26応急修正 1:50000「八幡平」
https://blogs.yahoo.co.jp/IMG/ybi/1/60/5d/tophamhat6539/folder/1499461/img_1499461_55180323_9?1275200563
大きい地図なのでクリックして見て下さい。赤い区切りが今回の記事で紹介した区間です。

次回は最初の駅「田頭(でんどう)駅」を目指します。