1月27日(月曜日)

昨年の暮あたりから某国で新型ウィルス性の伝染病が大流行してるって最近のニュースで話題になってた。

 

インフルエンザもそうなんだけど自分は自営業だし俺一人だから病気や怪我をしてしまうとどうしようも出来なくなる。

 

だから予防接種はもちろん健康面は慎重に手洗いうがいはしっかりしている。

 

実際、数年前に利き手の人差指を野球で大怪我をしてしまって手術も含めて数日間お店を休んだ事もあった。

 

あの時は手術後、直ぐに仕事は復帰出来ても利き腕を暫く使えなくてかなり往生した。

 

まぁそんな事があって今ではご飯を食べるくらいなら右でも左でもどちらの手でも普通に食べれる様になったんだけどそんなのは何んの自慢にもならない。

 

でも、そんな感じで慣れない事を毎回していると苦手な事でも出来る様になるのかな。

 

今まで彼女じゃない女性にプレゼントとかお土産とかそう言う様なアプローチって事を殆どした事がなかったから、特に緊張する。

 

たかが貰い物の余ったカレンダー。

 

彼女に何かを渡すのも初めてじゃないのにやっぱりヤバイくらい心臓がドキドキしていた。

 

そして今夜。

 

彼女は居た。

 

タイミング良く両隣も空いている。

 

俺は何時もの様にさり気なく隣に付いて挨拶をした。

 

彼女も何時もの様に返事をくれた。

 

隣で走る彼女はやっぱり何時見ても素敵。

 

一番いいなぁって思う。

 

こんなに人を愛しいって思ったのは本当に初めて。

 

本人にそんな事は一度も言った事はないけど彼女も何となくそれはもう、分かってると思う。

 

そりゃ言いたいよ彼女の眼を見てハッキリとでも、そんな大切な言葉はこんな所じゃ言えない。

 

それに今、それを言っても彼女を困らせるだけだから、今はその気持ちを大事にしていつかはそれを言える場所と演出とタイミングが来るのを信じて待つだけ。

 

もしそれでダメだったとしても、せめて告白は自分の納得が行く様にしたいから。

 

マシーンの上で軽くストレッチをしながら隣で走る彼女に聞こえる様に独り言を言う。

 

『あっ、そうそう!』

 

そう言ってマシーンにタオルを置いたままその場を離れる。

 

『ん?』

 

彼女はそんな感じで走ってた(笑)

 

俺は例のカレンダーを毎回持ち歩いてて折れ曲がったり、しわが出来ない様に、いつでも彼女が居たら渡せる様に手提袋に入れて予め自分のレンタルロッカーに入れてあった。

 

それをロッカーから取り出すと元居たマシーンに戻って彼女の走ってるマシーンの隣にそっとその手提げ袋を置いた。

 

『これ、店に来る常連のお客さんからいっぱい貰ったから、良かった使って』

 

『えぇ~!何ですか?それっ!』

 

彼女は少し驚いた感じで走りながら言った。

 

俺は中身がカレンダーって事を説明してデザインがディズニーキャラで自分にはガラじゃないって事、1月はもう終わるけど十分残りの11ヶ月は使えるからって事を言うと彼女は頷いて貰ってくれた。

 

『ありがとうございます。』

 

走りながらお礼を言うその笑顔は作り笑いの様にも見えたけど今の俺にはそれでも良かった。

 

もっとその笑顔が見たくて話を弾ませようとその勢いで俺は声を変えてミッキーとドナルドの物まねをしてやった。

 

上手く出来たか似てるかどうかは分からないけど彼女は少し笑ってた。

 

その物まねが彼女以外の周りにも聞こえたと思う。

 

{やっぱり、この人…変だ…} 

 

って思われたかも。

 

それでも彼女が笑ってくれるならいいって思った。

 

その後は年末に東京から帰省してた弟と一緒に初詣に参拝に行ってその帰りに些細な事で喧嘩をしてギスギスしたまま弟は東京に帰って行った事を話した。

 

後から考えたら何か弱音ぽい事を話してしまった。

 

かっこ悪い。

 

でも何故かそんなかっこ悪い事でも彼女に素直に話せた。

 

最後は今日の昼間にテレビでやってた内容で今、薬局やスーパーで1番売れてるものって何だ?ってクイズぽく言ったら彼女は直ぐに笑顔でマスクって言った。

 

たまにクイズっぽく問題を出したり話かけるとそう言う話には乗ってくれる。

 

彼女は知性的と言うかクイズが好きみたい。

 

そんなたわいもない話をするだけで俺は幸せを感じた。

 

今夜、渡したカレンダー使ってくれるといいな。