その日何か胸騒ぎがした
母はバックと風呂敷包み持って出かけていった
その前に何かのやり取りがあったかどうかは正直覚えていない
姉は何も気付いていなかったので何の会話もなく出かけたのだと思う
私は見送った後、何故か裏山へ駆け上がり
いつも山遊びで使う獣道を走っていた
そこから道路は丸見えで、真直ぐなので追いつくと思ったのか
母の姿は遠めに見えた
普段は余り泣き顔を見せなかったようだが、誰もいない山道で私は確かに泣いていた
一キロほど行くと道路は大きく左にカーブしており
山道から隠れてしまう
そこで諦め、少しの間残像をみていた
とぼとぼ来た道を帰っていくと
道にはくもの巣がいっぱいあって
振り払いながら、気付くと首筋に蜘蛛がまとわり付いていた
大きな蜘蛛で私は怖くなって、きている物を蜘蛛と一緒に振り捨てるように放り投げて走った
どう帰ったか、家にはまだ蚊帳が張ってあった
そこには、何もなかったように祖母と姉がいた
私はいらいらしていて、二人に当り散らした
思わず蹴った所に姉の腹部があり
姉はもんどりうってひっくり返った
もちろん祖母に叱られた
それもあって、何か身体の力が抜けてしまった
この日の記憶はこれだけだ
その後母は、この家に入る事はなかった