もともとはカントリー・ミュージシャンとして活動していた
エディ・コクラン(1938~1960)だが、
一般的にはロックンロール・シンガー&ギタリストとして知られており
のちのミュージシャンにカバーされた、
いわゆるスタンダードとなった楽曲を多く残すなど
今ではR&Rのオリジネイターの一人として知られている。
ロカビリー・シンガー然としたその風貌とは異なり
彼のスタイルはR&R一辺倒ではなく、カントリー・ミュージックや
大衆的なポップ・ミュージック等などの要素も取り入れた
キャッチー(?)な楽曲も積極的に演奏しており
全米で大ヒットとなった『Sittin' In The Balcony』は
ドゥー・ワップ風のコーラスを取り入れた
ミドル・テンポのポップスである。
こうしたポップな要素は、他にも『Drive In Show』や『Three Steps To
Heaven』 などでも聴くことができる。
一方で、ブライアン・セッツァーにも大きな影響を与えたと言われる
(セッツァーは映画『La Bamba』で、エディ・コクラン役を演じている)
コクランのR&Rは、グレッチのナチュラルな歪みがかかった
当時としてはかなりハードなギター・サウンドが特徴で
唱法的には、プレスリーからの強い影響を感じる。
力強いブレイクと叩きつけるようなピアノが印象的な「Skinny Jim」は、
曲名も曲調もモロにリトル・リチャードだし
パンキッシュな『Jeannie Jeannie Jeannie』や、
ブギウギ調の『Twenty Flight Rock』、
R&Rのスタンダードとして好んでカバーされている『Summertime Blues』や
『C'mon Everybody』、
強烈なシャッフル・ビートの『Pink Peg Slacks』、
カール・パーキンスの『Blue Suede Shoes』など
エディの代表作は本作に軒並み収録されている。
俺のお気に入りは、エディの神懸かり的なギターテクニックが聴ける
ハードなインストのブルース『Eddie's Blues』と、
スリーピー・ジョン・エスティス(ココモ・アーノルド?)の名曲を
スローブルースにアレンジした『Milkcow Blues』。
どちらも、エディのブルース魂がほとばしる、熱のこもった名演であり
後者は、プレスリーがアップテンポにアレンジした
『Milkcow Blues Boogie』が有名で、アルバム『Complete Sun
Sessions』に収録されている。
1960年4月、エディは英国ツアー中の自動車事故により
その早すぎる生涯を閉じた。
享年21歳。
若くして亡くなってしまった、悲運のロックンローラーであったが、
その名はR&R界に確かな足跡を残し、
ポピュラー・ミュージックの発展に大きく貢献した。