$東京タワーが見えないんですけど・・・

この話は
ODEN:おでん1から続いていますが、
ココから読んでも全く問題ありません。


東京タワーの下で、
おでんの屋台を出していた歯無しのお兄さん。

出身は、山梨県で高校卒業後、
親の知り合いの工務店で働いていたが
上司とソリが合わず退職。

親の顔に泥を塗ったということで
地元に居づらくなり東京へ・・・

貯金もすぐ無くなり
路頭に迷っていた所、師匠となる人に拾われて
おでん屋台修行を3年。
独り立ちして4年だそうだ。


「夜は、スゴく冷えて大変でしょう?」と尋ねると

山梨は、もっと寒いし、
子供の頃、睡眠以外はずっと外で遊んでたから大丈夫なんだそうだ。

そして、やっぱり寒くなければ 
おでんは売れないらしい。


そんな話をしていると・・・

「寒い? ちょっとコレ飲んでみてよ! すごく温まるよ。」

歯無しのお兄さんは焼酎をコップに注ぎ、
オタマでおでんの出汁ですくい
その焼酎をおでんの出汁で割り
そして、そのコップを差し出した。



えっ、おでんの出汁で・・・



一瞬、びっくりしたが、考えたら、不味いワケがない。
おでんの出汁だけ飲んでも美味いのに、そこに焼酎も一緒に・・・


熱々の焼酎のおでんの出汁割りは、
焼酎お湯割りの”なにか物足りない感”を
うまいこと補っていた。

体も温まるし、これは屋台ではうれしい酒だ。


うまい!うまい!とチビチビやっていると
酔いも回ってすぐ体も温かくなってきた。

「これは、いいわぁ・・・」

と絶賛していると、

「お客さんに教えてもらったの
 焼酎を出汁で割ったら美味しいよって。
 あと、彼女が風邪引いて食欲がない時に、
 コレ作ってあげるとスゴく喜ぶの。」



また、歯の無い笑顔で
さらっといい人エピソードを語るお兄さん。



なんか、イイ気持ちになった。
焼酎のおでんの出汁割りをもう1杯おかわり。



彼女とは、そろそろ結婚したいのだが、相手のご両親が
“おでんの屋台”という職業を認めてくれていないらしい。
自分は屋台が好きでマジメにこの仕事をしているコトを
解ってもらいたいのだという。



そんな話を聞きながら
焼酎のおでんの出汁割りをチビチビとやっていると、
ある事に気付いた。


焼酎のおでんの出汁割りのスゴさは、
おつまみと酒を一緒に飲んでいるというコトだと。



考えてみれば、今までいろんな酒を飲んだが
おつまみの塩気と酒の合体は
そういえばなかったかも・・・



しかし、弱点も・・・

おつまみがいらないってコトは、
おでんが売れないっす・・・

$東京タワーが見えないんですけど・・・


 東京タワーの下で
 こんなお話・・・