前回の続きを書く。



親しい先輩経営者(以後、H氏)が休眠させている法人を譲渡してくれることになり、ありがたく引き継ぐことになった。  

ただ、その譲渡の形が少し特殊だった。


株式を、T氏、僕、H氏、H氏の会社の副社長の4人で25%ずつ分け合う形にしたのだ。


今思えば、これは絶対にやらない方が良かったと深々と反省している。

株の分散が後々どんな問題を引き起こすか……これはまた別の機会に詳しく書こうと思う。




ともあれ、諸々の手続きが終わり、いよいよ事業が動き出した。


既に関係のある会社様へ連絡を取り、営業活動を開始。

話は順調に進んでいった。



そのタイミングで、営業が2名(前回の記事に書いたAさんと、もう1人)、事務員さんが2名、パートさんが1名、新たに仲間として入社してくれた。



組織らしくなり、ここから一気に加速するはずだった。





だが、ここで一つ大きな計算違いが起きた。

僕が、代表を務めるT氏と、会社を譲渡してくれたH氏を引き合わせたことだ。

後々考えれば、これが良くなかった。



H氏は営業力が強く、とにかく口がうまい。

まだ先方の合意が得られていない未確定の案件すら、「確定した」と言わんばかりの熱量とトーンでT氏に説明する。


真面目なT氏は、そのH氏の話にすっかり翻弄されてしまった。



結果、T氏は本来やるべき自社の工事や現場管理ではなく、H氏から持ち込まれる案件の「調査業務」に追われることになった。



しかもその調査は、どれだけ汗をかいても直接的な売り上げにはならないものばかりだった。


例えば、東北エリアを一週間かけて回り、120件近くの現場を調査する。

1件につき写真を20枚近く撮影し、図面を起こし、見積もりを作成する。


全国を飛び回り、莫大な出張費と経費だけが削られていく。

T氏は連日調査に追われ、会社にも滅多に来られない。自社の経営や現場の話すらろくにできない状態が続いた。


そして、あれだけの労力をかけた東北の120件の調査は、結果として1件も売り上げにならなかった。



一方、僕が動いていた営業案件は着実に受注を重ねていた。


しかし、業界の特性上、受注してから実際にお金が入金されるまでには3ヶ月ほどのタイムラグがある。

売上にならない調査で経費ばかりが飛んでいく一方で、入金は3ヶ月先。



あっという間に、資金繰りは限界を迎えた。



このままでは会社が倒れる。



覚悟を決め、社長交代を実行した。



僕が、社長になることとした。


つづく