ある日、静かな村グラフィスは、恐ろしい伝説が囁かれるようになった。かつてこの地に住んでいたというミュラ族の末裔たちが、長い間語り継いできた物語には、ヌルティマという名のドラゴンが登場する。  

【ミュラ族の歴史】

その前にミュラ族について説明しないといけない。ミュラ族は、古代から現在に至るまで、独自の文化と歴史を持つ民族だった。彼らのルーツは、アジアの中央部に位置する山岳地帯に遡るとされていた。ミュラ族の起源は不明だが、彼らの伝説によれば、山の神々によって創造されたと言われている。この神話的な背景が、ミュラ族の文化や習慣に深く影響を与えている。

中世には、ミュラ族は農業と牧畜を主な生業として繁栄した。主に米や小麦、豆類を栽培し、山岳地帯の特性を生かした独自の農法を発展させた。特に、段々畑を利用した農業は、彼らの生活スタイルと密接に結びついている。さらに、山々から得られる資源を利用するために、彼らは特別な技術を習得し、金属加工や陶芸の技術も進化した。この時期、ミュラ族は周囲の民族との交流を通じて、商業を発展させ、文化の多様性を広げていった。

しかし、13世紀に入ると、外部からの影響が増大し、ミュラ族の生活は大きく変わる。植民地支配や戦争が彼らの地に及び、伝統的な生活様式が脅かされた。特に、土地の収奪や文化的同化政策により、ミュラ族はアイデンティティの危機に直面した。彼らは自己の文化を守るために、秘密裏に伝統的な儀式や習慣を維持し続けた。

14世紀に入ると、ミュラ族は再び立ち上がり、自己の文化を再評価する運動が始まった。この時期、彼らは地域の文化遺産を守る活動を行い、観光資源としてのサステナブルな開発を推進した。伝統的な祭りや音楽、手工芸が再注目され、若い世代もその重要性を認識するようになった。特に、伝統的な舞踊や歌は、ミュラ族のアイデンティティを表現する重要な手段として位置づけられた。

現代において、ミュラ族は持続可能な発展を目指し、教育や経済の分野でも積極的な取り組みを行っている。彼らは外部文化との共存を図りながらも、自らの歴史や伝統を大切にし、次世代に伝えていくことを心がけている。観光業の発展に伴い、外部との文化交流が進む中で、ミュラ族は新たなアイデンティティを形成しつつも、自らのルーツを忘れずにいる。

このようにミュラ族の歴史は、苦難や変革を経ながらも、独自の文化を守り続ける力強さを示している。彼らの未来は、伝統と現代を融合させる中で、さらなる発展を遂げることが期待されている。ミュラ族の物語は、文化の多様性とアイデンティティの重要性を再確認させるものであり、その歴史は今もなお続いている。

【ヌルティマという毒ドラゴン】

このような民族の末裔たちが、ヌルティマという毒ドラゴンを恐れているのである。では、そのヌルティマとは、どんな歴史を持つ毒ドラゴンなのか。

ヌルティマ。その名は古の時代から語り継がれ、多くの民に畏れられてきた。彼女は毒ドラゴンとして知られ、暗い森や深い洞窟、そして精霊に満ちた湖の底に潜む存在であった。彼女の鱗は深い緑色に光り、目は血のように赤く輝く。ヌルティマの歴史は、金色のドラゴンとともに語られることが多いが、彼女の物語は単なる悪役のそれではない。

時は数千年前に遡る。ヌルティマは他のドラゴンたちと共に広大な大地を支配していた時代、その祖先たちは各々異なる属性を持ちながら覇権を争っていた。ヌルティマは特異な存在であった。彼女は毒を象徴する存在であり、他のドラゴンたちにとっては恐怖の対象であったが、彼女自身はその力を持て余していた。

彼女の毒は、単なる武器ではなく、自然との共鳴によるものであった。ヌルティマの存在は、生命と死の循環の一部であり、彼女の毒は土地を豊かにし、病をもたらすこともあった。このように、彼女の力は善と悪の境界を曖昧にし、文明の一片を引き裂いた。

ある日、彼女は人々の村に足を踏み入れた。そこでは、彼女の存在を恐れた村人たちが、束になって彼女を追い払おうとしていた。武器を持たず、ただ一人で近づくヌルティマ。彼女は抑圧された心の痛みを抱え、それを癒やすために村に向かった。彼女の毒は、これからの未来を変える可能性を秘めていた。

しかし、村人たちは彼女を敵と見なし、矢を放った。矢は彼女の身体に突き刺さり、血が流れた。ヌルティマは苦痛に満ちていたが、その瞬間、彼女は激しい怒りではなく、悲しみを感じていた。彼女の毒は村を覆い、村人たちは次々と倒れてゆく。彼女の静かな涙は、土地にしみ込み、植物を枯れさせ、人々の記憶を消し去った。

その後、ヌルティマはその場所を去ることにした。彼女は人間の心の中に潜む恐れや怒りを理解することができた。彼女は自らの存在がもたらす影響を知り、以降は自らの力を隠して生きる道を選んだ。毒を持つドラゴンとしての誇りは残しつつ、彼女は静かに生きていく決意を固めた。

時代は流れ、彼女の存在は伝説となった。人々はヌルティマを恐れながらも、その名を口にすることが少なくなった。彼女は自身が引き起こした悲劇を悔い、毒の力を利用することなく、静かに自然と共存していた。彼女の毒は、次第に彼女自身の一部となり、自然と結びついていったのである。

最終的に、ヌルティマは「生命の守護者」として再評価されることになった。彼女の力は恐れだけではなく、再生の象徴として認識され、その存在は新たな神話として生き続けることになる。「毒のドラゴン」と呼ばれた彼女の真の姿は、悠久の時の中で再び光を放つのであった。

ヌルティマは、暗い森の奥深くに潜んでおり、その体は緑色の鱗で覆われ、毒を放つ蒸気を吐き出すという。久々に復活したその姿は、易々と人間を殺しては喰らう獰猛な魔法生物になっていたのであった。

村人たちは、毎晩のようにドラゴンの恐ろしい咆哮を耳にし、不安にかられていた。特に、若者たちはこのドラゴンに立ち向かう勇者を待ち望んでいたが、誰一人としてその伝説の生物に挑む勇気を持てなかった。

そんなある晩、若者の一人、エリオは心の中で決意を固めた。「僕がヌルティマを倒すんだ。」彼は村の長老から聞いた伝説を思い出し、仲間を募ることにした。それは、有名なヌルティマ殺しの伝説であった。

【ヌルティマ殺しの伝説】

昔々、ヌルティマと呼ばれる小さな村がありました。この村は、青い湖に囲まれ、緑豊かな山々に抱かれていました。村人たちは素朴に生活し、木々から採れる果実や狩りで得た獲物を分け合いながら平和に過ごしていました。しかし、そんな平穏を脅かす恐ろしい伝説が村にはありました。

その伝説では、毎年一度、満月の夜に現れる「ヌルティマの怪物」と呼ばれる影が、村の若者を一人さらっていくと言われていました。怪物は目にも留まらぬ速さで現れ、捕えられた者は二度と戻らぬと村人たちは恐れをなして暮らしていました。若者たちはその年の満月の夜が近づくにつれ、恐怖に怯えて過ごしていました。

ある年、若き猟師のアリオは、この怪物の正体を突き止めることを決意しました。彼は幼い頃から村の伝説を聞いて育ち、もう十分に成長した今、仲間たちと共に怪物に立ち向かう覚悟を固めました。彼は友人のリナやトモと共に、月明かりの下、村の外れにある古い神社へと向かいました。

神社には、数世代前の村人が常に生け贄を捧げてきた場所でした。彼らは、「ヌルティマの怪物」は村の者たちが犯した罪に対する罰であると信じていたのです。アリオはこの罪を贖うために、真実を探るための儀式を行うことを決めました。

夜が深まり、三人は神社の周囲に香を焚き、祈りを捧げました。すると、次第に風が吹き荒れ、森の奥から重い足音が響きました。緊張が走る中、月光が一瞬雲に隠れ、そして再び怪物が姿を現しました。それは、肉体を持つ者ではなく、影のような存在でした。巨大な翼を広げ、恐ろしい目が彼らを見つめていました。

怪物はフッと口を開き、低い声で囁きました。「お前たちは何を求めてここに来たのか。」アリオは恐れの中にも勇気を振り絞り、自らの目的を告げました。「村の平和を奪う者としての言い伝えを終わらせたい。どうか、真実を教えてほしい。」

怪物は一瞬静まり、そして緩やかにその姿を変えていきました。影が溶けるように、そこにはかつての村人らしき姿が現れました。彼は自らの過ちを語り始めました。「我々は、村の恵みを一方的に奪い合った。欲望に溺れ、他者を傷つけた結果、呪いを受けたのだ。」

真実を理解したアリオたちは、村人たちがかつて犯した罪を思い、その罪を贖うため、村全体で協力して自然を大切にし、皆で助け合うことを誓いました。影の姿をした怪物は、アリオの言葉に納得し、村に笑顔が戻ることを願い、静かに消えてゆきました。

それ以来、ヌルティマの村では、毎年満月の夜に感謝の儀式を行うようになり、彼らの心には怪物の恐怖ではなく、共存の価値が刻まれたのでした。この伝説は、村人たちによって語り継がれ、今もなお、恵みと調和を求める教訓として大切にされています。

【三人の友情の物語】

エリオの親友であるメイラと剣士のマークが、彼の決意に賛同した。彼らにはお互いに協力して過ごした、友情に溢れた歴史があったのだった。

エリオは静かな村に住む若い農夫だった。彼の日常は、太陽が昇る頃に始まり、夕暮れと共に終わる。毎日の単調な作業に疲れを感じていたが、夢の中で出会う冒険者たちの姿が心の奥に希望を灯していた。そんなある日、彼の村に突如として魔物が現れた。村人たちは恐怖に怯え、逃げ惑う。エリオもまた、どうすることもできずにただ見守るしかなかった。

一方、エリオの幼なじみ、メイラは村の一角にある小さな祠で不思議な力を持つ石に出会った。彼女はその石から、村を守る者となる運命を授かる。彼女は決心し、村の外に向かうことにした。メイラはエリオに連絡を取り、一緒に冒険に出ることを提案した。エリオは最初は戸惑ったものの、彼女の決意に心を動かされ、旅立つことにした。

道中、彼らは剣士マークに出会う。彼は孤独な旅を続ける中、村の危機を聞きつけ、助けにやって来た。マークは強く、優しい心を持つ剣士であり、エリオとメイラが求める力の象徴でもあった。彼らは共に魔物を倒すための訓練を始める。

エリオはマークから剣の使い方を学び、メイラは石の力を操る術を磨いていった。彼らの絆は徐々に深まり、共に過ごす時間が楽しくてたまらなかった。エリオはメイラの笑顔を見ていると、村を守りたいという意志が強くなっていく。

数日後、ついに村に再び魔物が現れた。今回は、エリオ、メイラ、マークの三人が立ち向かう時が来た。彼らはそれぞれの力を合わせることを誓い、恐れることなく魔物に立ち向かった。

エリオはマークから学んだ剣技を駆使し、剣を振るった。彼の瞳には決意の炎が燃えていた。メイラは石の力を使い、魔法で周囲の状況を変化させ、仲間たちをサポートした。彼女の力は徐々に強まっていく。

戦いは長引いたが、三人はあきらめずに戦い続けた。ついに、マークの一撃が魔物の心臓を貫き、勝利を収めた。村人たちは歓喜に沸き、エリオとメイラ、マークは英雄となった。

村の広場には、彼らの名を讃える祭りが開かれた。エリオは村の人々と共に祝い、メイラと目を合わせて微笑んだ。その瞬間、二人の心の奥底にあった冒険への渇望が、ついに実現したのだった。

マークは旅立つ前に言った。「次の冒険が待っている。いつでも戻ってきなさい。」そう言い残し、彼は新たな旅に出る。エリオとメイラは、そんな彼に影響を受け、自らの冒険を考えるようになった。

彼らはこの村だけでなく、広い世界のことを夢見るようになっていた。今ある平和が永遠であることを願いながら、エリオとメイラは新たな道を歩み始めた。運命の交差点で見つけた絆は、彼らの未来を照らす光となるだろう。

と思っていたところに、この村で、毒ドラゴンのヌルティマが復活を遂げたと言われたのだった。これは三人にとっては名を挙げる大きなチャンスであった。

【毒ドラゴン、ヌルティマの洞窟】

次の日、彼らは準備を進め、必要な道具を集めた。村の神殿で祝福を受けた後、三人は暗い森へと足を踏み入れた。森はどこまでも薄暗く、怖れが心に影を落と した。しかし、エリオの強い意志が彼らを引っ張り続けた。


ヌルティマの洞窟は、山脈の奥深くにひっそりと隠れた場所に位置し、その入り口は錆びついた岩石に覆われている。洞窟に足を踏み入れると、まるで別世界に迷い込んだかのような感覚に包まれる。洞窟内部は薄暗く、鬱蒼とした湿気が漂い、石壁には根のように広がる苔がへばりついている。天井からは滴る水が音もなく地面に落ち、石の床を濡らしている。

洞窟は三つの主要な空間に分かれ、最初の部屋には血のように赤い鉱石が散在している。鮮やかな色合いは不気味さを増し、地面に広がる暗い影が、何か不吉な運命を暗示しているかのようだ。洞窟の壁には古代文字が刻まれており、訪れる者に警告を与えている。しかし、誰もそれを読み解くことができない。

さらに進むと、第二の空間へと足を踏み入れる。この場所は「溶ける部屋」と呼ばれ、洞窟の奥底から湧き出る熱い蒸気によって、まるで沸騰する鍋のように暑くなっている。周囲には不気味な形をした石柱が立ち並び、その一つ一つがまるで何かを守るかのように、洞窟の神秘的な雰囲気を醸し出している。空気中には腐敗したような悪臭が漂い、呼吸するたびに心臓が高鳴る。

そして、ついにヌルティマの洞窟の中心部、毒ドラゴンの住処へとたどり着く。そこは広大な空間で、まるで天井が存在しないかのように広がっている。中央には巨大な池があり、その水は濁った緑色をしており、触れるものを瞬時に蝕む毒性を持っている。池の周囲には、これまでに侵入した者たちの忘れ形見が散乱しており、骨と装飾品が混在し、時折、ヒソヒソと囁くような声が響いてくる。

そこに棲む毒ドラゴン、ヌルティマは、まるで生きた伝説のようにその姿を現す。体は深緑色で、鱗は艶やかに光り、冷たく光る目はまるで暗闇の中から何かを見透かしているかのようだ。彼が呼吸するたびに口からは薄い煙が立ち上り、その煙は目に見えない毒を含んでいる。ヌルティマの存在そのものが、この洞窟の禁断の守護者であり、侵入者に対する警告となっている。

毒ドラゴンの周囲には、彼が守る宝物が無造作に散らばっている。金銀の宝石、古代の武器、そして失われた文明の遺物は、彼の高貴な威厳と相殺するように、ひどく醜悪な形で置かれている。ヌルティマがこの宝物に手を触れた者は、運命を狂わされ、彼の毒にやられてしまう運命だ。

洞窟は静寂の中にありながら、同時に緊張感が漂っている。入口から進むほどに、ダイナミックに変化する環境は、自然の狂気を感じさせ、訪れる者に絶望感を与えずにはいられない。ヌルティマの洞窟は、単なる物理的な場所ではなく、訪れる者の心の奥深くに潜む恐怖を刺激する、まさに「悪夢の源泉」なのだった。

時折響くヌルティマの咆哮がより近づいてくることを示していた。ついに彼らは、伝説のドラゴンが住むと言われる洞窟に辿り着いた。そこで彼らは恐るべき生物と対峙することになる。

まるで悪夢から抜け出したような姿のヌルティマが洞窟の奥に鎮座していた。緑色の鱗はぬらぬらと光り、口からは紫色の蒸気が立ち昇っている。エリオたちの心臓は高鳴った。果たして彼らは、この恐怖の象徴に立ち向かうことができるだろうか。

【毒ドラゴン、ヌルティマとの死闘】

濃厚な霧が立ち込める山中、吐き出す毒の煙に包まれた場所に、伝説の毒ドラゴン、ヌルティマがひときわ存在感を放っていた。巨大な体躯は、鋭い鱗に覆われ、目は死者のように無感情に輝いている。その下では、エリオ、メイラ、そして剣士マークの三人が立ち向かう勇敢な姿を見せていた。

エリオは深呼吸をし、肩にかけた大剣を引き寄せる。「みんな、準備はいいか?」彼の言葉には決意が満ちていた。メイラは弓矢を構え、冷静に言った。「冷静に、ヌルティマの動きを見極めるのが大事よ。」その背後で、マークは身構え、剣を高く掲げて叫ぶ。「勝利を掴むためだ!」

ヌルティマは、彼らの声を聞き流すように、一歩踏み出す。その動きで大地が震え、歪な響きが周囲に広がった。その瞬間、ヌルティマは口を大きく開き、緑色の毒煙を吐き出した。煙が三人に向かって迫る。エリオは素早く剣を振るい、毒煙を切り裂こうとするが、その効果は薄い。「避けろ、みんな!」

メイラは速やかに矢を放った。弓から放たれた矢は、ヌルティマの目を狙うが、鱗で覆われた眼球は容易に防がれた。「無駄だ!」「もっと別のアプローチを試みるわ!」彼女は次の矢を構え、進撃する。

マークはヌルティマが炎を吐く準備をしているのを見極め、一瞬の隙を突いて飛び込む。「今だ、エリオ!」エリオはその言葉に応じ、剣を高く掲げ、灼熱の炎を受けつつも、突進した。「はい!」

彼の剣が、ヌルティマの鱗に抵抗し、亀裂を生む。しかし、ヌルティマの毒は凄まじく、近づく者たちを蝕んでいく。「意識を失うな、エリオ!」メイラの声が響く。エリオは痛みに耐えながらも、さらに攻撃を続ける。

突如、ヌルティマは尾を振り回し、マークを弾き飛ばす。マークは堂々と空中で一回転し、着地して立ち上がる。「くそ!奴め!」怒りの声を上げながら、彼は再び前進する。切り裂かれた大地が彼の足元で崩れ落ちていく。

「まだ足りない!全力で行くぞ!」エリオが叫ぶと、三人は一斉に攻撃を仕掛ける。メイラは弓を高く構え、強力な矢を引く。彼女の弓から放たれた矢は、今度はヌルティマの胸を直撃した。「完璧なタイミングだ!」エリオが声を上げる。

ヌルティマは一瞬身を震わせるが、すぐさま激怒して三人を睨みつける。その目には憎悪が宿っており、翔ぶように飛びかかる。「逃げて!」マークの叫び声が響く。少し遅れて、彼らは立ち去るが、ヌルティマの巨大な口が開く。今度は、恐ろしい雷鳴のような吠え声を発し、身の毛もよだつ。

エリオは必死に立ち向かい続ける。「俺たちがやるしかない!」彼は仲間の目を見、信じる力を与える。三人は一体となり、ヌルティマの動きを阻止するために互いにカバーしあいながら攻撃を続けた。

攻防が続く中、ヌルティマは疲れ始め、動きが鈍くなる。三人はその兆候を見逃さなかった。最後の一撃を放つため、全力でヌルティマへと突進する。メイラが弓を引き、エリオとマークが共に進み出る。彼らの心に一つの希望を宿して、運命は動き出すのだった。

「私が行く!」エリオは勇気を振り絞り、一歩前へ進んだ。その瞬間、ヌルティマが猛然と吠え声をあげ、彼に向かって突進してきた。エリオは剣を構え、間一髪で身をかわす。しかし、毒の蒸気が彼を襲い、彼の肺を焼くような苦痛が広がった。

「エリオ、大丈夫?」メイラが叫ぶ。彼女はエリオのために、薬草を取り出して彼に投与した。その瞬間、エリオはほんの少しだけ力を取り戻した。しかし、彼らはまだ勝機を見出せていなかった。

マークが叫ぶ。「このままでは負けてしまう!あいつの首を取るんだ!」彼は剣を振りかざして突進し、ヌルティマの顎に突き刺した。だが、ドラゴンの皮膚は堅く、深手を負わせることはできなかった。ヌルティマは怒り狂い、威嚇のために再び蒸気を吐き出した。

そのとき、エリオの心の奥に何かが閃いた。彼は洞窟内に反響する声を聴いた。「ヌルティマの毒は、彼女の苦しみから生まれた。」彼は洞窟の奥に目を向けると、印が描かれた古い石版を見つけた。

「皆、今だ!この印に力を集めるんだ!」エリオは叫ぶと、二人も彼に従った。「俺は、エンドア山で、魔法の訓練を受けてきている。今こそ、究極呪文ブラムエンドアバラムスターを放つ時かもしれない」彼の脳裏に、懐かしき老師の顔がよぎる。

【究極呪文の習得】

エリオは静かな山奥にひっそりとした寺院で修行する若き僧侶だった。彼の師である老師、賀良は長い人生を送り、今まさに死の間際を迎えようとしていた。月明かりが寺院の屋根を照らし、静寂の中にただ風の音だけが響いていた。エリオは心に不安を抱え、老師の枕元に膝をついた。

「師匠、私はまだ未熟です。なぜ私に究極の呪文を授けようとするのですか?」

賀良は微笑み、その白髪混じりの顔に柔らかい光を浮かべた。「エリオよ、私がこの世を去る前にお前に伝えねばならぬことがある。それは、呪文の力ではなく、心の在り方についてなのだ。」

エリオは一瞬戸惑ったが、老師の言葉を静かに受け止めた。そして、賀良は目を閉じ、深呼吸をした。エリオは次第にその表情が穏やかになっていくのを見守った。

「命は流れ、儚いものである。しかし、その中にこそ真理がある。究極の呪文は、私が生涯探し続けたものだ。それは…『慈愛』だ。」

エリオは目を大きく開いた。「慈愛ですか? それが呪文なのですか?」

「そうだ。誰もが持つ力だが、簡単には実践できぬもの。しかし、この呪文を真に理解した者は、自らの内なる闇と向き合い、他者を愛し、世界を受け入れることができる。教えは伝わりにくいが、慈愛こそが最強の呪文だ。」

エリオは心に響くその言葉を噛み締めた。「それでも、私は未熟です。どうすればその慈愛を持てるのでしょうか?」

賀良は力を振り絞り、指を立てた。「まずは自らを許すこと。過去の失敗や後悔を受け入れ、胸を張って生きるがよい。そして、他者を理解し、共感することで次第にその力が育まれる。」

その時、賀良は一瞬苦しそうに眉をひそめたが、すぐに再び落ち着いた表情に戻った。「忘れてはならぬ。真の強さは、愛と共にあるのだ。人々の痛みを感じ、自らがその一部になること。だからこそ、どんな困難も乗り越えられる。」

エリオは頷きながら、老師の言葉を胸に刻む。彼の言葉は、まるで光のように彼を包み込み、心の奥深くに根を下ろす。エリオは、賀良の目に揺らめく命の蜃気楼を見つめ、時が経つのを忘れていた。

やがて、賀良は静かに息を引き取った。その瞬間、エリオは胸に温かい感覚を覚えた。彼の内なる不安が、老師の教えを通して少しずつ洗い流されていくようだった。

夜が明け、月が沈んでいく。エリオは寺院の外に出て、日の光を浴びた。その瞬間、彼は心に決意を固めた。「慈愛」をもって生きることを誓い、世界へ出て行く準備が整ったのだ。

エリオは故人への感謝の念を込めて、柔らかな微笑を浮かべた。そして、彼は歩き出した。新たな旅路が始まる。その先で、彼は自らの心を磨き、世界を温かく包み込むために、慈愛の呪文を広める旅に出るのだった。

エリオは究極呪文のパワーを集めながら叫んだのだった。
「そして、今、ここに至る!俺は、魔法使いでありながら、僧侶でもある。この二つの職業の力が交わりし時、究極の呪文が誕生する。くらえ。ドラゴン!呪文ブラムエンドアバラムスター!!!」

【抵抗するドラゴンと爆発する究極呪文】

静まり返った洞窟の奥深く、毒ドラゴンがその存在を誇示するかのように、木々をゆらしながら進む。描くように立ちはだかるその巨大な影、鱗は緑と黒が入り混じり、まるで影の迷宮に紛れているようだった。エリオはその場に立ち尽くし、目前の獣に立ち向かう決意を固めた。

息を整え、エリオは心の中で呪文を練る。彼の知識と経験を積み重ねた究極呪文が、今まさにその力を発揮する時が来たのだ。しかし、ドラゴンの目は冷酷で、紫色の光を放訳し、彼の心臓が強く脈打つ。体を動かす前に、心の中で何度も自らを鼓舞しなければならなかった。

「今こそ、真の力を見せてやる!」

エリオの声が静寂を破る。彼は杖を高く掲げ、手から放たれる魔力の波動が周囲を包み込む。エネルギーが集中し、光の球が彼の手のひらで形成される。周囲の空気が震え、万物が彼の意志に従って動くかのようだった。

だが、毒ドラゴンはその様子を見逃さなかった。舌を絡めるようにし、黒い煙を吐き出して彼に迫る。煙は、腐食性のスモッグのように周囲を包み込み、エリオの視界を奪っていく。

「無駄だ、ただの人間が俺に挑むとは!」ドラゴンの声は低く響く。

煙が彼に近づくにつれ、エリオは抗うように呪文の詠唱を続けた。「天の光、地の力、風の剣、我に授けたまえ!」

その瞬間、輝く光が彼の足元から湧き出し、全身を包み込む。力強いエネルギーが彼の体を駆け抜け、神々の加護が乗り移るようだった。エリオの目が白く輝き、全ての感覚が研ぎ澄まされていく。

「跳ね返せ!」彼は叫び、手を振るう。光が大きな円を描くように広がり、息を飲むような閃光となってドラゴンに向かって飛んでいく。

猛毒の霧が。対する毒ドラゴンは一瞬驚愕したように硬直した。その刹那、エリオの放った究極呪文が煙を切り裂き、ドラゴンの鱗に深々と刺さった。

「クアアアア!」ドラゴンの叫びが木々を揺らし、森全体が響き渡る。その力量に動揺したドラゴンが、尾を振り回して反撃するも、エリオはその動きを冷静に見極めた。

「まだ終わらせるわけにはいかない!」エリオは再び呪文を吟唱した。今度は、彼の内なる力を呼び覚ますことに集中する。心の中で無限のエネルギーを感じ、彼の力がかつてないほどに高まるのを見た。

「最終の力を、我に集え!」

最後の呪文が口から放たれた瞬間、彼の周囲に光の剣が無数に形成され、それらがドラゴンに向かって放たれる。無数の剣が、毒牙のドラゴンを襲い、周囲の木々が次々と破壊されていく。

「グワアアア!」ドラゴンはとうとう地面に叩きつけられ、その表情に痛みと動揺を浮かべていた。エリオが目の前に立つ姿は、彼の怒りと勇気の象徴だった。

「これで終わりだ!」エリオの声に力を込め、彼は光の連撃を続けた。毒ドラゴンの咆哮がだんだんと弱まり、ついに静寂が戻った。勝利の余韻が彼の心を満たし、エリオは深呼吸をし、力を解放した。

彼の周囲に静かな夜の気配が漂い、星空が彼を見詰めていた。彼はその時、自己の成長を感じながら新たな冒険の始まりを感じた。いや。待て。冒険は終わっちゃいない。話を続ける。

彼らの心を一つにし、石版に力を注ぐと、ヌルティマの毒が浄化され始めた。すると、ドラゴンは苦しみながらもその姿を変え、人間の姿を浮かび上がらせた。

「私はヌルティマ。長い間、この毒に苦しんでいた。君たちの助けのおかげで、解放されることができた。」新たな姿のヌルティマは感謝の意を示した。「お主らに、私の血濡れた歴史を是非ともお教えしたい。少し時間がかからがよろしいか」エリオとレイラとマークは黙って頷いた。

【毒ドラゴンの悲しい物語】

遠い昔、神秘の山脈に住む雌の毒ドラゴン、ヌルティマがいた。彼女の体は美しい緑色で、光を浴びると輝くような毒の鱗が特徴であった。しかし、その見た目とは裏腹に、彼女の心には深い悲しみが秘められていた。

ヌルティマは幼い頃から、周囲の生き物たちから恐れられ、孤独な生活を送っていた。人間たちは彼女の存在を注意深く避け、時に狩りに出かけることさえあった。彼女の毒は人々の命を奪う力を持っていたが、ヌルティマ自身はそんな力を持つことを恨んでいた。彼女は心の底から友達が欲しかったのだ。

ある日、ヌルティマは山の頂上で泣いている小さな狼を見つけた。その狼は足を怪我していて、動くことができなかった。彼女はその子を助けることを決意した。優しい心を持つヌルティマは、恐れずに近づき、彼女の毒を使って傷を癒す草を見つけた。狼は彼女に助けられ、感謝の気持ちを込めて、普段口にしない言葉を発した。

「あなたは怖いドラゴンではなく、私にとっての友達です。」

この言葉はヌルティマの心に温かさをもたらした。それから彼らは友情を深め、毎日一緒に遊ぶようになった。しかし、ヌルティマの心の中には、いつか彼女の本当の姿が狼を傷つけるかもしれないという不安が渦巻いていた。

ある夜、村人たちがヌルティマの存在を知り、狼を狙って彼女を捕まえようとした。ヌルティマは狼を守るために立ち上がったが、村人たちは彼女を恐れ、毒が放たれることを警戒した。戦いが始まり、彼女は村人たちを傷つけることなく自ら身を伏せた。

「逃げて、私を置いて行って!」

狼は泣き叫んだが、ヌルティマは応じなかった。彼女の心は決まっていた。毒を持つ彼女には、誰も守れない運命が待っていたのだ。

しかし、その時、狼は彼女の元へ駆け寄り、自ら彼女の尾に耳を寄せた。「一緒に行こう、どこへでも。」その言葉がヌルティマの心を打ち、彼女の毒の鱗が輝くことができた瞬間でもあった。

その後、村人たちは猛り狂うヌルティマに怯え、逃げ去った。彼女は狼を抱きしめ、静かな山の奥に姿を消した。そこで二人は新しい生活を始めた。惑わぬ心が深まる一方、ヌルティマの内心には変わることのない孤独が宿った。

年月が流れ、ヌルティマは村の米や草花が変わり果てるほどに時を生き延びた。しかし、彼女は決して人々に戻ることはなかった。毒を持つ者としての悲しい運命を受け入れ、狼と共に静かな日々を過ごすことが彼女の幸せであったのだ。

そして、ヌルティマの物語は、自然の中で静かに語り継がれ、彼女は美しい緑色の鱗の下に隠された悲しみを持つドラゴンとして、人々の記憶に留まることとなった。

「剣士マーク!あなたの父親がその狼。フェンリルのエリオットなのですっ!」

 剣士マークは、その話を聞くと驚愕のあまり口がきけなくなった。だから、お父さんは、いつも月夜になると、森の中に消えるのか。そして、お父さんは行方不明になって十年になろうとしている。

「お父さんは今、何をしているんだ」

 ヌルティマは悲しげに首を振る。

「それはわからない。永遠の謎だ」

村に戻ったエリオたちは、ヌルティマと共に新たな平和を築く決意をした。恐怖のドラゴンは、仲間となり、共に未来を切り開く存在へと変わったのであった。

「さあ。みんな、村に帰ろう」

 人間の姿になったヌルティマと、マーク、エリオ、レイラの三人は森の中を、戻ってゆくのだが、そこで、農夫のアレンに出会うのだった。彼は、山小屋に四人を泊めると、自分の物語を始めるのだった。

【農夫アレンの物語】

昔々、静寂に包まれた小さな村がありました。この村には、穏やかな人々と豊かな自然が広がっていました。しかし、村人たちは一つだけ恐れていることがありました。それは、古の伝説に語られる恐ろしい獣、フェンリルの存在です。彼は月を呑み込み、神々をも恐れさせる狼とされています。

ある晩、村が静まり返る中、突然空が暗くなり、冷たい風が吹き始めました。村人たちは恐れおののき、狼に似たうなり声が聞こえてきた時、心の底からの恐怖を感じました。「フェンリルだ!」誰かが叫びました。村人たちは家の中に閉じ込め、ドアを強く閉めました。

しかし、村の中心に位置する小さな家に住む若者、アレンは違いました。彼はただの農夫でありながら、伝説に対して疑念を抱いていたのです。「誰かがこの獣を止める必要がある。私が行く。」アレンは自らの心に誓いを立てました。

彼は静かに村を出て、山を越えると長い距離を進みました。薄暗い森を抜け、冷たい石を踏みしめ、やがて「フェンリルに立ち向かう」という運命を迎えました。アレンは武器を持たず、ただ彼の強い意志と信じる心だけを寄り添わせていました。

山の頂上にたどり着くと、彼はフェンリルの姿を見つけました。その巨大な体、凛々しい牙、そして目の前でうねる黒い毛皮は、恐怖そのものでした。しかしアレンは、ただ恐れずにその場に立ちました。「フェンリル!お前はこの村を襲うな!」彼の声は震えていましたが、心には勇気が宿っていました。

フェンリルはアレンの方を振り向きました。その目は、ただの獣のものとは思えないほどの知恵と怒りをたたえていました。「人間よ、何故ここに来たのだ?」低い声が響きます。

「村を襲う必要はない!お前は力強い獣だが、我々は共に生きる道を見つけられるはずだ。」アレンは言いました。彼は自らの心からの願いを込め、フェンリルに訴えかけました。すると、フェンリルはしばらく静まり返り、考え込むような表情を見せました。

「人間よ、私に何を ofere のだ?私の力を借り、何を望むのか?」フェンリルは尋ねました。

アレンは心の底からの願いをさらに強く持ちました。「あなたは神々を恐れさせる存在。でも、その力を使って守ることもできる。村を守ってほしい。共に共存しよう。」

フェンリルは一瞬、アレンを見つめていました。その黒い目の奥には、彼の話を真剣に聞いているような光がありました。「面白いことを言う人間だ。それなら、私の力を借りた者には何かを与えよう。」

フェンリルの唇が微笑むと、村の空気が変わり、冷たい風が彼のもとから吹き抜けました。そして、彼の存在は徐々に薄れていきました。

アレンは村に帰り、村人たちに伝えました。「フェンリルと約束を交わした。彼は我々を襲わないだろう。互いに理解し合うことこそが、真の強さだと。」

その日以来、村は静かな安寧を取り戻し、アレンの勇気が村の伝説に新たな章を加えることとなりました。彼は村人たちと共に、フェンリルと共存する未来を信じ続けました。彼らは自然と調和し、恐れることではなく、理解し合いながら生きる道を選んだのでした。

 「そのフェンリルこそ。エリオの父親。エリオットなのです!」とヌルティマが叫んだ。その場にいたみんなが驚くのだった。すると、ドアが開いて、険しい表情の中年男が現れる。

【フェンリル、エリオットの物語】

「フフフ。そうさ。俺がエリオットだよ。そこにいるエリオの父親だっ。これから、少し長くなるが、俺の物語を語らなくてはならないようだな。少し悲しくてビターな物語だ。では。始めるぞ」中年男は、暖炉の焚き火に当たりながら話し出した。「あれは、何年の前のことだった……」

「フフフ。そうさ。俺がフェンリルのエリオットだよ。そこにいるエリオの父親だっ。これから、少し長くなるが、俺の物語を語らなくてはならないようだな。少し悲しくてビターな物語だ。では。始めるぞ」中年男は、暖炉の焚き火に当たりながら話し出した。「あれは、何年の前のことだった……」
「……あれは、何年の前のことだった。寒い冬の晩、暗い森の奥深くに住む獣たちが一斉に鳴き始めた。恐ろしいほどの静寂の中、彼らの声が響き渡る。そんな音に目覚めた俺は、その音の正体を確かめるために、暖炉の火を背にしながら、森へと足を踏み出した。

当時の俺は、村の狩人として生きていた。人々から尊敬され、幸福な日々を送っていたが、その裏では心に片隅に抱えていた影があった。家族の絆、特に愛する息子エリオとの関係が、次第に希薄になっていったのだ。彼はまだ小さかったが、村の外の世界に強く憧れていた。俺も彼に夢を与えたかったが、それが果たせずにいた俺の胸に、ジリジリとした痛みが広がっていくのを感じていたんだ。

その晩、森の奥深くで出会ったものは、俺の運命を大きく変えることになる、ある獣だった。灰色の毛並みを持つ大きな狼、まるで夜空のように深い青い目を持つその獣は、俺を見つめると、そのまま森の奥へと消えていった。俺は無意識のうちに、その獣を追いかけていた。まるで、その先に何か特別なものが待っているかのように。

小枝が足元で音を立て、冷たい風が背筋を撫でる。心臓の鼓動が高鳴る中、俺は自分の信じる力を胸に、さらに奥へと進んだ。ついには、広い川の岸にたどり着いた。そこにいたのは、あの狼だった。じっとこちらを見つめ、何かを訴えかけてくるようだった。俺はその瞬間、彼がただの獣ではなく、何か特別な存在であることを理解した……。

その後、月日が流れたが、あの狼の存在は俺の人生に大きな影響を与えた。何度も森へ通い、そのたびに彼と心を通わせることで、息子のエリオとの関係も少しずつだが改善されていった。彼との時間が、俺の心に再び家族の大切さを思い起こさせてくれたのだ。しかし、平和な日々が続くわけではなかった。何かが、俺たちを試すかのように迫っていた……」 

男は深いため息をついて、炎の揺らめきを見つめた。物語はまだ始まったばかりだった。エリオは、愛情に溢れた目で見つめている。

「親父。わかったよ。で、俺たちは何をすれば良いんだい?」
「フェンリルの呪いを解きたいんだ。そのためには、山奥にいるあの狼と戦わなきゃいけない。伝説のオオカミ王、シルベルトとだっ!」
「無理よ。ダメダメ!」

 とヌルティマは膝をつく。皆は、この毒ドラゴンが恐れるほどのオオカミ王とは、どんな生き物だろうかと驚いたのだった。

「おそらく、エリオさんの究極呪文でも、オオカミ王には勝てないのよ。なぜなら、あいつは、どんな魔法をも防ぐ強力なお守りを持っているからなの。その「魔法封じの護符」を彼の首から外さなきゃいけない。でも、腕力でそんなことできる人間なんていないもの。

「竜のお嬢さん。それは、わからねえ。ここに剣士のマークがいるってことを忘れちゃならねえな。俺が一気に奴との距離を詰めて、その護符を奪えば良いんだろう」と言ったのだった。エリオは目に涙を浮かべている。

「やってくれるのかい」
「ああ。友のためだ。やってやるぜっ!」

 それから、皆んなは、オオカミ王を倒すための作戦会議を開いて、翌日、オオカミ王のものにゆくのだった。

【オオカミ王・シルベルトとの戦い】

 冷たい風が吹き荒れる山頂。薄暮の空に黒い影が浮かんでいた。それはオオカミ王・シルベルト。彼の体は銀色の毛で覆われ、月明かりに照らされるたびに神秘的な光を放っている。彼を囲むのは、折れた木々と凍てついた岩。戦場は静寂を保ちつつ、緊張感だけが漂っていた。

「お前が、シルベルトか?」声をかけたのは、若き戦士マークだった。彼は初めてオオカミ王との対峙を果たし、心臓の鼓動が耳にまで響く。彼の手には青い宝玉が埋め込まれた剣、アクアリスが握られていた。水の精霊が宿るその剣は、彼の手に自信を与えてくれている。この剣は、ヌルティマが洞窟の奥にある宝物コレクションから、マークにあげたものだった。

シルベルトは一歩前に進み、低い唸り声を上げた。「人間よ、お前の力は本物か?それとも、無駄な足掻きに過ぎないのか、試してみるがいい。」その声は重く、雷のように響いた。

マークは一瞬、躊躇った。彼の心に恐怖が忍び寄る。しかし、家族を奪った闇の王に立ち向かうためには、シルベルトを倒さなければならない。勇気を振り絞り、剣を構えた。仲間たちは、固唾を飲んで見守っている。

「みんな、悪いが、これは俺とあいつの一騎打ちだ。誰も手を出すなよ!」

「さあ。来い、シルベルト!」と叫び、マークは駆け出した。鋭い牙を持つ獣との戦いは、彼の心に熱い血潮をもたらす。アクアリスが煌めき、彼の剣を受け止めた光の軌跡が、その決意を裏付ける。

シルベルトは素早く身を翻し、鋭い爪でマークの横腹を狙った。死の匂いを感じさせるその攻撃を、マークは剣で受け止め、力強く反撃した。しかし、シルベルトの毛皮に剣が滑り、致命傷には至らなかった。

「あっ。あいつも、月夜になると狼に変身しちまうぞ。奴からダメージを受けたからな」とエリオットが叫んだ。

「その程度か、若者よ。」シルベルトは嘲笑し、その鋭い目で剣士マークを見据えた。再び突進してくるシルベルトを、マークは冷静に待ち構え、瞬時に横に身をかわした。振り返りざまに、彼は剣を一閃。水の精霊が剣に宿り、流れるような美しい軌跡を描く。

しかし、シルベルトは敏捷にその攻撃をかわし、長い尾を揺らしてマークの足を狙った。地面に転がるマーク。息を切らし、立ち上がると、シルベルトの視線が鋭く彼を貫く。

「お前の心の中、その力の源は何だ?復讐か、正義か。それとも、ただの自尊心か?」シルベルトの質問が、マークの心に波紋を広げる。

「守りたいものがある。だから戦う。」マークは力強く答えた。仲間たちの熱い友情が彼の背中を押している。

シルベルトは一瞬静止し、やがて力強い声で吠えた。「ならば、力を示せ!我が力をもって、お前の魂を試してやる!」

彼の言葉と同時に、シルベルトは駆け出し、衝撃的な攻撃を放った。地面が揺れ、岩が砕ける。マークは回避しようとするが、そのスピードに追いつけず、彼は再び地に倒れ込んだ。

少しの間、彼は不安に駆られた。しかし、マークの心の中で何かが目覚めた。復讐と正義の狭間に揺れながらも、彼は立ち上がる。

「私は、私は諦めない!」彼の声は今までになく大きく響き渡る。秘剣アクアリスが輝き、全身にエネルギーが満ちる。彼の心の奥底から湧き上がる強い思いが、剣に宿っていく。

再び前に進む。シルベルトの爪が迫る中、マークは一気に突進した。光が弾けるように、アクアリスがシルベルトに向かって放たれた一閃。その瞬間、寒気が周囲を包み込み、シルベルトの低い唸り声が風に乗って消えていった。

「おい。あいつには、物理攻撃は効かないぞっ!護符を取るんだ!」

  とエリオットが叫んだ。

「忘れていたっ!そうだった」

 マークは剣を握り直す。このままでは、無限に戦闘が続き、いつか疲れて倒されてしまう。その時、黒い煙がマークの隣を掠めて行った。

「毒ブレス!」

 そう。ヌルティマが口から毒ブレスを放ったのだった。実質的にダメージはゼロだが、少し怯ませることくらいはできた。

「今よ。マーク!」

 マークはダッシュして、シルベルトに駆け寄る。そして、奴の首についている護符を剥がそうとした時、マークは

「うおおおおおおおおお」

 と寝転がった。

「ど、どうしたんだ」

 オオカミ王は、凶悪な笑みを見せる。

「フフフ。フェンリルに変身する時がやってきたんだよ!そして、そこのエリオットもなっ!」

 オオカミ王の瞳が怪しく光ると、呪いにかけられた二人はフェンリルに変身させられるみたいであった。

「うおおおおおおおおおお」

 エリオットも膝をつく。二人とも、ジワジワとフェンリルになろうと、身体から毛が伸びているではないか。この光景を見て、レイラはリュートを手にして叫んだのだった。
  

「もう。戦いはゴリゴリよ。あたしが、仲直りのポエムを歌うわ。この歌を聴いて、みんな、仲良くしましょっ!」

【リュート使いレイラの仲直りのポエム】

静かな夜空に星たちが輝き、  
月の光が優しく照らす。  
リュートを弾く手は震え、  
心の奥に響く不安に負けそう。

過ぎ去りし言葉の刃、  
誤解と怒りが生んだ距離。  
でも、思い出すのは笑顔の時、  
共に奏でたメロディー、幸福の詩。

風が運ぶ、君の声、  
優しい響きが心を溶かす。  
忘れないで、あの日の約束、  
愛は時を超えて繋がるもの。

リュートに乗せた想いを、  
和音となり、乗り越えよう。  
悲しみも喜びも共に抱きしめ、  
これからの道を歩いて行こう。

一緒に奏でる未来の旋律、  
君の笑顔が灯す希望。  
誠実な心で紡ぐ、新たな物語、  
みんなの絆を深める音楽。

「許してほしい」と願う夜、  
星たちもきっと見守っている。  
傷つけた言葉を詫びるため、  
心からのメロディーを響かせる。

リュートの弦を優しく撫で、  
過去を振り返るのではなく、  
その先にある明日へと、  
一緒に向かう勇気を抱こう。

君の隣で、歌う幸せ、  
共に描く、未来の姿。  
不器用でも、精一杯の愛、  
リュート使いレイラ、仲直りの調べ。

風に舞う想い、精霊の舞、  
君と共に奏でるこの瞬間。  
音楽は心の架け橋、  
許し合うことで、新たな始まり。

手を取り合い、再び共に、  
リュートの音色で繋がる。  
私たちの物語、続いていく、  
愛のメロディー、永遠の調べ。

月明かりの下、二人の影、  
未来へと続く希望の道。  
リュート使いレイラ、心を込めて、  
君と奏でる仲直りのポエム。

「あぐわっ。はごわっ」

  オオカミ王、シルベルトは膝をつくのだった。

「なんて、素晴らしい歌なんだ。おいらが間違っとったんや。それにしてもどうして、おいらがこんなにやさぐれてしまったのか。お話をしなくてはならんのう」というと長い話をするのだった。

【オオカミ王・シルベルトの悲しき物語】

むかしむかし、あるところにオオカミ王・シルベルトっていうお方がおった。それはそれは立派な王様で、深い森の中を治めとったんやで。シルベルトの毛並みは艶やかで、目はまるで星のように輝いとったんや。

けどな、シルベルトには一つ悩みがあった。それは、人間とオオカミとの間にある「距離」やった。この地方の人間たちは、オオカミを見るとすぐに逃げたり、嫌がったりするもんやから、シルベルトは孤独やった。お友達が全然おらんかったんや。

ある日、シルベルトは村の近くまで行ったんや。そこには小さな女の子が一人で遊んどった。女の子は、シルベルトを見た瞬間、怯えもせずに近づいてきた。「おっきなオオカミさん!」て嬉しそうにしたんや。シルベルトはびっくりしたんやけど、その女の子の優しい笑顔を見て心が温まった。

「お名前はなんていうんや?」シルベルトが低い声で聞いたら、女の子は「ミカちゃん!」と元気よく答えた。「ミカちゃん、なんでそんなに怖がらんの?」とシルベルトが尋ねると、ミカちゃんはこう言うた。「オオカミは怖いって大人が言うけど、オオカミさんは優しそうやもん!」

それからというもの、ミカちゃんは毎日シルベルトに会いに来るようになったんや。二人はすぐに仲良しになって、いろんなことを話したり遊んだりした。シルベルトも、ミカちゃんと一緒にいるときだけは孤独を忘れられたんや。

でも、村の人たちはそんな二人の仲を良く思わんかった。ある日、村の男たちがシルベルトを捕まえようと罠を仕掛けたんや。ミカちゃんがそれを知ったとき、急いでシルベルトの元へ向かった。「ダメ!シルベルトさんを傷つけたらあかん!」と叫びながら。

しかし、男たちは聞こうとせんかった。シルベルトはミカちゃんを守ろうとして、罠にかかったんや。痛みが走る中、シルベルトはミカちゃんをかばうようにして倒れた。ミカちゃんは泣きながら「お願い、放してあげて!」と叫んだ。

その声は、村の人たちの心に響いたんや。少しずつ、周りの人たちもシルベルトの優しさを思い出し始めた。「こいつはほんまに悪いオオカミなんか?」と疑いを持ったんや。

最終的に、ミカちゃんの涙が村の人たちの心を動かした。その後、男たちはシルベルトを開放することに決めた。そして、村の人々も少しずつオオカミを理解し始めたんや。「きっと、オオカミにも心があるんやな」と。

シルベルトは自由の身になり、ミカちゃんと再会した瞬間、彼女を優しく抱きしめた。「ありがとう、ミカちゃん。君のおかげで、みんなが心を開いてくれた」と言うた。それから、シルベルトは村人たちと共存し始めたんや。

こうして、オオカミ王・シルベルトは悲しみを乗り越えて、ミカちゃんと共に新たな友情を築くことができた。村も森も、一つの家族になったんやで。

「つか、仲良くなってるじゃん!」

   と、ヌルティマが突っ込んだ。しかし、シルベルトは首を振る。

「話は終わっとらん。最後まで聞けや。ドラゴンの娘っ子」

【ミカちゃんの悲劇】

 その日、ミカちゃんとぼくはいつものようにカフェでおしゃべりしていた。お互いの仕事や趣味の話で盛り上がり、何もかもが楽しい時間の中、ふとしたことで喧嘩になってしまった。

「なんでそんなこと言うんだよ、ミカ!」とぼくの声が大きくなった。「私はただ、あんたのために言ってるだけじゃん!」ミカちゃんは、少し涙目になりながら反論する。彼女の、その目がぼくのドキッとするところだ。普段は可愛らしい笑顔なのに、今は怒りが渦巻いている。

「でも、あんたの言い方がきつすぎるんだってば!」ぼくの言葉に、彼女は腕を組んでふん、と顔をそむける。名古屋弁が二人の間に飛び交う中、周りの人たちもこっちをチラチラ見ているのが気になった。

「お前、いつも私を悪者にしよるよね!」ミカちゃんが不満をぶつける。それに対して、ぼくは反論する。「そんなことないだろ!俺はただ、正直に思ったことを言ってるだけじゃん!」

「正直も大事やけど、その言い方はないだろ!」ミカちゃんの声が段々大きくなる。本当は彼女のその頑固さが好きなのだけれど、今はちょっとイラッときてしまう。喧嘩するたびに、彼女の魅力が増すのも謎だ。

「なんでそんなにむきになんの?もっと柔らかく言ってよ!」とぼくが叫ぶと、彼女は「うるさい!自分が悪いと思ったら、素直に謝ればええやん!」と逆に責めてくる。なんだか、こっちが悪者になっていく感覚。

「でも、オレはそんなに悪くないと思うんだよな…」とぼくが言うと、ミカちゃんは目を見開いて「そうやって自分の非を認めんとこが、ほんとにイラつくわ!」と叫んだ。もう周りのお客さんたちは、この二人の演劇に完全に注目している。

「あんた、もうええわ!こんなことでいちいち辛気臭い顔せんといて!」と彼女が席を立ち上がり、一歩後ろに下がる。そうなると、途端に寂しさが心を刺す。

「待って、ミカ!オレも悪かった!」慌ててその言葉を放つが、彼女は振り返らない。「いいよ、離れれば解決やから」と言って、最後の言葉を残して外へ出て行ってしまった。

カフェの中に一人残されたぼくは、冷静に考え込む。ミカちゃんが言うように、いつも自分の言い方が厳しいのかもしれない。普段の関係が築かれているからこそ、つい本音をぶつけてしまう。

しばらくして、外の空気を吸ってみようと席を立ち、ミカちゃんを探す。しかし、彼女の姿はすでになかった。ただぼくの心の中に、彼女の強さと可愛らしさが渦巻いている。

「ほんま、どうにかせんといかん…」と心の中で呟きながら、ぼくは再びカフェの中に戻った。何か言葉を抱えていたあの日、でもそれをうまく伝えることができなかった。

これからどうするか、まだ決まっていない。でも、ミカちゃんの笑顔を取り戻したい。彼女との毎日が続くために、少しずつでも成長していけたらいいなと思う。

「けど、結局、別れたんや。だから、わしは、人間を憎み、このフェンリルの呪いを広めることにしたっちゅーわけよ。わかったか!あの日以来、わしは自分のことを「僕」ということをやめたんや!わかるか、このわしの気持ちがっ」

 だが、森の中から、一人の少女が飛び出したのだった。

「それは誤解。誤解なの。シルベルト。あたしは、あんたが好きなんよ!!」

 その声は森の中に響き渡った。レイラは、リュートの音合わせをしてから、「ミカちゃん。今の気持ちをポエムにしてちょうだい!伴奏は私がするから」「わかった。やってみる」

【ミカの渾身のポエム 許してシルベルト】

夕暮れの街で、日々を刻む  
笑顔と涙、心の奥底に  
シルベルト、あんたに伝えたい  
この思い、届いてくれやんか

この間、あんときのこと、ほんまにごめんね  
気持ちを言わんかったら、あんたを傷つけた  
いや、ほんまにすまへん  
かどわかしはしとらんが、心の中で葛藤しとった

オレンジの夕焼け、空が赤く染まる中で  
あんたのこと、思い出しよーて  
笑ってた日々、手を繋いだ瞬間  
でも、言葉が足りんかった、あんたに

「許して」って、今言うても遅いかもしれんが  
あんたと過ごした時が、ほんまに大切やった  
あんたの笑顔は、私の宝物  
それを忘れたら、私の心、枯れてまうやんか

恥ずかしくてちょっと照れるけど  
あんたには、ほんまに伝えたい  
あの時、逃げた自分に、もう一度立ち向かう  
シルベルト、逆に私からも許してほしい

一緒におる時間、また過ごしたいなぁ  
あんたの隣で、笑いながら過ごす日々が  
心に浮かぶ、まるで夢のように  
でも、現実は冷たい、あんたの背中を見送る

シルベルト、もしも私の声が届いたら  
もう一度、始めてみないか?  
小さな勇気を出して、手を繋いで  
この名古屋の街で、新しい冒険を

あんたがいるから、私の世界が色づく  
とまどいの中でも、真っ直ぐな思いを  
どうか受け取って、重ねたい未来を  
一緒に歩むこと、それが私の願い

夕暮れの風が、優しく撫でるように  
ふるさとの街並みも、温かく見守る  
シルベルト、あんたに伝えたい  
この思い、許してくれるといいなぁ

私の言葉が、あんたの心に響くように  
願いを込めて、筆を進める  
愛の詩が、心の底から湧き出る  
許してくれ!シルベルト、もう一度だけ

思い出のカフェで、また笑える日々が  
訪れるように、祈りを込める  
一緒に感じたい、この名古屋の風に  
私の心、あんたに届けたい

「あんまり上手じゃないな」とエリオは思ったが、シルベルトの方を見ると、彼は泣きながら寝転んでいた。

「うおおおおおおお。ミカちゃ〜ん!!!」
「うおおおおおお。シルベルトおおおお」

 二人は抱き合ったのだった。どうやら、愛のポエムに文学的な装飾はいらない、ということなのだろう。シルベルトは、エリオとエリオットの呪いをあっさり解除して、そして、みんなを村まで送ってくれたのだった。

 こうして、一行は、長い旅を終えることができたのだった。しかし、村にたどり着くと、なんだか、雰囲気がおかしい。どうも、殺風景である。近くの宿にゆくと、男が走り出してきた。

「た、大変だああ!ゾンビが、ゾンビが大量発生中!!!」

  と言って、男は倒れて、「ウゴボウォーーーー」と叫ぶと、ゾンビとなってこっちにやってくるではないか。

「ふふふ。なかなか、楽しいことになっているわね。しかも、ゾンビにはあたしの毒ブレスは効かないわ」

 とヌルティマ。

「この秘剣で、切り抜けるしかないな」

 とマーク。

「俺の究極呪文が今日も大爆発さ」

  とエリオ。

「あたしのポエムも響き渡っちゃうんだから」

  とレイラ。

「つか、また、バトルかよ。やなんだけど」

  とエリオット。五人の旅は、まだまだ続くようであった……。

    完