蒸し暑い夏の午後、村の外れにある神社で「奇祭」が行われるという噂が広がっていた。この祭りは毎年行われるが、参加者が奇妙な装飾を身にまとい、まるで異世界からの訪問者のように振る舞うことで知られている。今年もまた、村の人々は狂乱に身を委ね、厄を払い、願いを叶えるために集う。

私はこの奇祭が始まる数日前に、彼女に振られた。恋人との関係が破綻した理由は、些細な言い争いからだった。彼女の目の中に映る別の何かが、私の心を締め付けた。「あなたにはもう興味がない」と、彼女はその一言で私の世界を暗くした。「あたしは、新しい人生を歩まないといけないの。その世界にあなたを連れてゆくことはできないの。ごめんなさい」

失恋の痛手を抱えながら、私は友人たちに誘われて奇祭へ向かうことにした。祭りの雰囲気に良い思い出を重ねた人々の笑い声や色とりどりの衣装が、少しでも気持ちを和らげてくれることを願っていた。

「慎平。あなたの気持ちはわかるけど、時子はもう戻ってこないのよ。フフフフフ。あの子は、村長の娘である私の怒りを買ってしまったのよ」

いきなり現れたのは、幼馴染の美江だった。着物姿がとても美しいし、私の体の奥がジンジンしてくる。彼女は、何回も何回も私に告白してきたのだった。しかし、私には時子がいると断ってきたのだ。今も気持ちは変わらない。

「私はねえ。人からものを奪うのが大好きなのよ。そして、純愛をこの手で捻り潰すのも大好きなの。フフフフフ」

そんな彼女の声を振り切って神社の境内に着くと、すでに多くの人々が集まっていた。彼らはカラフルな衣装を身にまとい、顔にペイントを施している。まるで幽霊や妖精が踊っているかのようだった。異様な光景に圧倒されながらも、私はその中に一歩踏み出した。

祭りは予想以上に楽しかった。太鼓や笛の音が響き、躍動感溢れる踊りが広がっている。私は少しずつ、失恋の痛みを忘れていった。周囲の人々の笑顔や歓声は、私を取り巻く暗闇を払いのけてくれた。しかし、どうしても彼女の影は消えなかった。彼女と過ごした日々が、今は遠い記憶の中で辛うじて息をしている。

祭りの中で、意外にも彼女を思い出させるシーンがあった。巨大な御神輿が運ばれると、周囲の人々は興奮し、手を振り上げて声援を送った。その姿を見て、私はふと彼女が言っていたことを思い出した。彼女はこの祭りを一緒に見たいと言っていたのだ。

「私たちが一緒にいる時、こんなにも楽しいことがあるのに、どうして別れなきゃいけないの?」その言葉が頭の中をぐるぐると回る。失恋の傷が再び疼きだし、心の奥に暗い感情が渦巻いた。その時、目の前の一人の女性が目に留まった。

「時子!なにしてんだ」

彼女も祭りの衣装を着ており、楽しそうに笑っていた。その笑顔に一瞬心惹かれたが、同時に彼女の姿が彼女の面影と重なった。私は思わず目を閉じ、深呼吸をした。

「いや。違う。勘違いだ」

こうした瞬間、私は彼女との別れを受け入れることができない自分を再確認していた。

奇祭のクライマックスだ。すべての参加者が一つの円を作り、輪になって踊る。そして、あの女性が輪の中心に寝そべるのである。彼女は、着物の裾をまくる。松明の元、肌色の股間が現れる。

私はその輪の中に身を置いた。周囲の人々と手を取り合い、歓声を上げながら踊ることで、少しずつ心の痛みが和らいでいった。

そう、失恋は辛い経験だが、こうした瞬間は未来へ向かう力を与えてくれる。祭りが終わりに近づくと、私は小さな決心をした。この奇祭が終わったら、彼女を思い出すことをやめよう。新たな出発の一歩を踏み出すのだ。

その女性の股間から、タケノコのように大きな男根が生えてきたのだった。彼女は、恍惚の表情を浮かべながらも、泣いていた。私は、ひょっとしてあれは時子かもしれないと思ったが、首を振って駆け去った。

その夜、星空の下で、私はもはや彼女に思いを馳せることなく、少しずつ自分自身を取り戻す準備をしていた。奇祭は私に新たな道を示してくれたのだ。そして、それはおそらく……時子にも……。

そこから少し離れた草藪では、村長の娘、美江が残酷な笑みを見せていた。「時子は、男娼として大都会に売られてゆくだろう。そして、慎平、あんたは……」

「あんたは、もう逃れられないわよ。私が飽きるまで私のもの……飽きたらどうするかって?その時は、私の家の小間使いとして一生、私の奴隷になってもらうまでよ……フフフフフ」