何となくパラパラと開いて読み始めたが、面白い。まず、その皮肉100パーセントのセリフ劇にしびれた。この物語の登場人物は、すべての言葉の裏に皮肉のスパイスを効かせることを旨としている。晩年のシェイクスピアのこの作品における最大の特徴らしい。
この物語はある医者の娘が主人公なのだけど、彼女は「わかっています。私の心の中に太陽の人はいますが、階級差がありますし、この願いは叶いっこないんです」と、思いびとの母親に、前もって言ってしまっている。
そして、その女性を狙っているある男は、彼女に「処女についての瞑想でもなさっているのですか」と、とんでもないことを言い出す(笑)
読了(笑)
結論。
この劇、登場人物がみんなアホだろ(笑)
まず、女主人公のヘレナが自分が嫌われていることに気付かずに幼なじみを強引に婿にしようとして断られる。名医の子で、すごく頭が良くて王様の病気も治すのであるが、誰を婿にするか選べと言われて、よりによって本編のバカ主人公を選ぶ。この男は、平気で断る。。
男主人公バートラム。おおよそ、シェイクスピアの劇の中で、一番くらいの、主人公に似つかわしくないひねくれ者。ヘレナの求婚を断るという謎ムーブをした後で、旅先で直ぐに女に手を出す。それが災いして、ヘレナのトラップにハマるが……そこまでして、そんな男、賢明なはずのヘレナが欲しいか?と思うような男なのだ。
王様。病弱で、判断力が弱っていたのであろうが、気が良いだけで、登場人物に振り回される役。
ペーローレス。話の冒頭で恋に悩むヘレナに「処女について瞑想中ですかな。ああいうものは、時間が経つほど価値が下がるので、頃合いを見つけてうっちゃった方が良いですよ」という、アホすぎてむしろ名言に聞こえる口説き方をする。そして、話の途中で老将から「お前はクソだ」と宣告される(笑)しかも、「敵兵に捕まったらどうするか」ドッキリにかけられて、あっさりみんな白状してしまい、追い出される(笑)この人、そんな悪い人には思えないんだけど、何で、みんなよってたかっていじめるのか。。
いやあ。凄いな。この劇をどう評価したら良いのか、みんな困っているらしい。昔からよく知られている、利口な女性のトンチ話を、シェイクスピアがアレンジして、大失敗したという稀有な例らしい。でも、セリフがとても面白い。