E.H.ゴンブリッチの「美術の物語 ポケット版」を読んだ! | とんとん・にっき

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E.H.ゴンブリッチの「美術の物語 ポケット版」(ファインドン株式会社:2011年10月30日第1刷発行、2014年5月8日第3刷発行)を読みました。

 

僕が買った本ではなく、ある人からの預かり物です。5年程前のことです。「ちゃんとした美術の本があるから、これを読んで勉強しろ」、といった感じで託されたものです。1046ページもある分厚い本です。文章はその半分、501ページで、その他は文章に即した図版です。すぐに序章は読んだのですが、それ以降はまったく手が付けられるに今に至りました。それではならじと、今年の初めに預かった方に、今年は読みますと宣言しました。とはいえ、読み始めるのには時間がかかりました。が、なんとか読み終わりました。

 

内容説明:
原始の洞窟壁画から現代の実験的な芸術にいたる、美術の全体を論じた入門書。率直で単純な文体と、物語をくっきりと浮かび上がらせる話術で「絶えず変化しながら連綿とつづく伝統のなかで、ひとつひとつの作品が過去を語り、未来を指さす」ような美術史、「伝統という生きた鎖が、ピラミッド時代の美術から現代美術にまで延々とつらなる」物語としての美術史を目に見えるように描きだしている。


「美術の物語」E.H.ゴンブリッチ著
「美術の物語」ほど有名な、広く読まれた美術書は少ない。原始の洞窟壁画から現代の実験的な芸術にいたる、美術全体を論じた入門書として、50年以上もの間、この本の右に出るものはなかった。全世界のさまざまな背景を持つ、あらゆる時代の読者がゴンブリッチ教授こそは本当の美術史家だと考えている。彼は、知識と知恵を持つだけでなく、論じる芸術作品への深い愛を直接に伝える稀有の才能をもそなえているのだ.
「美術の物語]が長く人気を保っている理由は、率直で単純な文体と、物語をくっきりと浮かび上がらせる話術にある。著者の狙いは「もっと本格的な美術書に出てくる、いろんな名前や時代や様式を、わかりやすく整理できるように」することだという。
視覚芸術の心理学に造詣の深い著者は、「絶えず変化しながら連綿と続く伝統の中で、ひとつひとつの作品が過去を語り、未来を指さす」ような美術史、伝統という生きた鎖が、ピラミッド時代の美術から現代美術にまで延々とつらなる」物語としての美術史を、まさに目に見えるように描き出している。すでに古典となった本書が、装いも新たにポケット版として世に出る。未来の読者にも暖かく迎えられ、これまで通り、美術の門を叩くすべての人が最初に手に取る本になることを願わずにはいられない。
 

以下、「はじめに」からの印象に残った部分を挙げておきます。

美術という心に惹かれる不思議な世界を前にして道案内のようなものが欲しいと思っている人は少なくない。私はそんな読者に向けてこの本を書いた。
私は、気軽な素人くさい本と思われるのも覚悟のうえで、平易な言葉を使うよう心がけ、なんとしても大げさな表現に走らないように気をつけた.。

専門用語をできるだけ少なくするという原則のほかに、
第一の規則として図版に載せない作品についは本文でも論じない。 
第二の規則として本物の芸術作品だけを取り上げ、趣味や流行の見本として興味を引くだけの作品は除外する。
第三の規則として作品を選ぶとき自分らしい独創性は出さず、新しい世界の案内図を提供しようとしている。
等々、なかなかの美文で、分かりやすく書かれています。

 

そして「建築」にも、正当な扱いをしています。

各時代について、わずか一つか二つの建築様式しか論じることができなかったけれど、建築の実例を各章の最初にもってくることによって、私は建築の重要性を強調したつもりだ、と。


目次

はじめに

序章

1.不思議な始まり

  先史、未開の人びと、そしてアメリカ大陸の旧文明
2.永遠を求めて

  エジプト、メソポタミア、クレタ
3.大いなる目覚め

  ギリシャ 前7世紀‐前5世紀
4.美の王国

  ギリシャとその広がり 前4世紀‐後1世紀
5.世界の征服者たち

  ローマ人、仏教徒、ユダヤ教徒、キリスト教徒

  1世紀‐4世紀
6.歴史の分かれ道

  ローマとビザンティン 5世紀‐13世紀
7.東方を見てみると

  イスラム、中国 2世紀‐13世紀
8.るつぼの中の西欧美術

  ヨーロッパ 6世紀‐11世紀
9.戦う教会

  12世紀
10.栄光の教会

   13世紀

11.宮廷と都市

   14世紀

12.現実をとらえた美術

   15世紀前半

13.伝統と変革 Ⅰ

   イタリア 15世紀後半

14.伝統と変革 Ⅱ

   アルプス以北 15世紀

15.勝ちとられた調和

   トスカーナとローマ 16世紀初頭

16.光と色彩

   ヴェネチアと北イタリア 16世紀初頭

17.新しい知の波及

   ドイツとネーデルランド 16世紀初頭

18.美術の危機

   ヨーロッパ 16世紀後半

19.さまざまなヴィジョン

   ヨーロッパのカトリック世界 17世紀前半

20.自然の鏡

   オランダ 17世紀

21.権力と栄光 Ⅰ

   イタリア 17世紀後半ー18世紀

22.権力と栄光 Ⅱ

   フランス、ドイツ、オーストリア 17世紀後半ー18世紀初頭

23.理性の時代

   イギリスとフランス 18世紀

24.伝統の解体

   イギリス、アメリカ、フランス 18世紀末-19世紀初頭

25.永久革命

   イギリスとフランス 19世紀

26.新しい基準を求めて

   19世紀末

27.実験的な美術

   20世紀前半

28.終わりのない物語

   モダニズムの勝利

   モダニズムの退潮

   変わりつづける過去

図版

参考文献について

国別図版リスト

図版リスト

索引

謝辞

 

図版(一部ですが)

 

 

 

 

エルンスト・ゴンブリッチ卿

 

 

エルンスト・ゴンブリッチ卿(メリット勲位、3等勲位、英国学士院会員)は1909年にウィーンに生まれた。1936年にロンドンのウォーバーク研究所所員となり、1959年から1976年まで同研究所所長兼ロンドン大学古典学科教授を務めた。1972年にナイト爵に叙せられ、1988年にメリット勲位を与えられた。ゲーテ賞(1994年)、ウィーン市のゴールド・メダル賞(1994年)など、世界各地で多くの賞を得た。これまでの著作には、「芸術と幻影」(1960)、「装飾芸術論」(1979)、10冊におよぶ論文や展覧会評などの著作集があり、すべてファイドン社から出版されている。2001年、長く待たれていた最後の著作を完成した直後にロンドンにて没。「プリミティブなものへの好み」として翌年ファイドン社から出版され、大きな反響を得た。