多胡淳の「戦争とは何か」を読んだ! | とんとん・にっき

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多胡淳の「戦争とは何か」(中公新書:2020年1月25日初版、2020年2月15日再版)を読みました。

 

僕は本屋へ行くと、ほとんどまず行くのは、「岩波新書」と「中公新書」のコーナーです。新刊はなにが出ているかなと、品定めをします。もちろん、ネットでも調べてはいますが…。だいたい行くたびに1~2冊は、購入してしまいます(買いすぎだっちゅうの)。最近、買う機会を失したのが、岩波新書の「独ソ戦」です。もちろん刊行された時から知ってはいましたが、あれよあれよという間に「2020新書大賞」第1位ですよ。いまさら買うのもなんだし…。迷ってます。

 

 

というわけで、「独ソ戦」に対抗するわけではないですが、直接的に「戦争とは何か」を購入するきっかけになったのは、朝日新聞に載った呉座勇一の書評、「理論とデータで予測にも挑む」でした。そこには、以下のようにあります。

 

今日の国際政治学では、理論とデータに基づいて戦争を研究する方法論が確立している。それは、過去の戦争と平和の事例をリスト化し、そのサンプルから母集団の真の値を推定する統計学の手法である。つまり「戦争を確立でとらえる」のだ。

本書は一般にはあまり知られていない国際政治学の最先端の議論を紹介する優れた入門書である。

論点は多岐にわたるが、個人的には、民主的平和論をめぐる研究の蓄積が興味深かった。これは、民主主義国家同士の間では戦争は起こりにくいという主張である。正直に告白すると、民主的平和論は理想論というか、ある種の願望が入っているのではないかと評者は疑わしく思っていた。ところが、民主主義国のペアに顕著な戦争抑制効果があることがデータ的に裏付けられ、そのこと自体に対する異論は今では存在しないという。

 

やはり、もっとも興味を引くのは、第5章日本への示唆、です。とりわけ「領土問題と領土の平和論」と、それに続く「抑止と安全保障のジレンマ」および「岐路に立つ日本の安心供与政策と見えない危機」です。いうまでもなく、日本の場合には、国境を接する国・地域との紛争が、北方領土問題、竹島・独島問題、尖閣諸島問題と三つもあります。一触即発、さあ、どうするか?

 

本のカバーには、以下のようにあります。

世界と日本の平和のため

国際政治学にできること

「戦争の原因には何があるのか」「国際介入の効果とは」「民主主義と平和は関係があるのか」「戦争を予測することは可能か」……。本書は、国際政治学の最前線の成果を生かして科学的に国家間戦争や内戦を論じ、多くの疑問に答える。そして緊張を増す東アジアの現状を踏まえ、日本の安全保障などの展望も示す。歴史やイデオロギーから一定の距離を置き、データ分析から実証的に国際情勢と戦争の本質に迫る試み。

 

目次

はじめに

序章 戦争と平和をどのように論じるべきか

 1 定義の試み

 2 戦争と交渉の連続性

 3 戦争と平和をめぐる問い

 4 科学としての戦争と平和

第1章 科学的説明の作法

 1 ユニークな戦争はありえない

 2 分析に用いられるツールの説明

 3 戦争には常にコストがかかる

第2章 戦争の条件

 1 国際関係の常態は平和である?

 2 誤解が戦争を生む―情報の非対称性

 3 確信と不信が戦争を生む―コミットメント問題

 4 こだわりが戦争を生む―価値不可分性

 5 戦争はどうして終わるのか?

第3章 平和の条件

 1 民主主義が平和を作る―民主的平和論

 2 報道の自由と経済的相互依存

 3 国際介入が平和を作る―国際制度の平和論

第4章 内戦という難問

 1 資源をめぐる争いが内戦を生む―資源の呪い

 2 不平等が内戦を生む―不満の顕出

 3 内戦に対する国際介入は効果があるのか?

 4 早く終わる内戦、長引く内戦

第5章 日本への示唆

 1 日本の安全保障環境

 2 領土問題と領土の平和論

 3 抑止と安全保障のジレンマ

 4 岐路に立つ日本の安心供与政策と見えない危機

第6章 国際政治学にできること

 1 戦争の予測は可能か?

 2 予測結果とわれわれにできること

補遺

おわりに

主要参考文献

 

多胡淳:

1976年静岡県生まれ。早稲田大学政治経済学術院教授。1999年東京大学教養学部卒業。2004年東京大学大学院総合文化研究科(国際社会科学専攻)博士課程単位取得退学。2007年2月東京大学より博士号(学術)取得。神戸大学大学院法学研究科准教授などを経て現職。2017年からオスロ平和研究所(PRIO)グローバルフェロー。第16回 (令和元年度)日本学術振興会賞受賞。

著書「武力行使の政治学」(千倉書房、2010年)

共著「政治学の第一歩」(有斐閣、2015年)など

 

朝日新聞:2020年4月4日