山高登木版画集「東京昭和百景」! | とんとん・にっき

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来るもの拒まず去る者追わず、
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山高登の世界

東京で生まれ育った私は、東京の風景を半世紀近く描いてきたが、不思議なことに有名な寺社仏閣や観光地には全くといっていいほど興味がわかなかった。反対に強く惹かれるものは、近所の人の話し声が聞こえる細い路地、人の息づかいがする長屋といった場所で、そういうものを選ぶように描いてきた。残念ながら、私の好きな風景は次々と壊され、再びその場所を訪れた時、その場所は跡形もなく消え去り、愕然とさせられる。しかしながら、今でも賑やかな表通りを外れ、裏道を歩いてみると、もう残っていないだろうと思っていた風景が、しぶとく生き残っていたりもする。そう言う意味で、この画集は私が愛した「昭和の東京」が失ったものへの鎮魂歌であり、生き残ったものへの応援歌でもある。

山高登


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山高登の木版画集「東京昭和百景」(発行所:株式会社シーズ・プランニング、発行日:2014年3月20日)を手に入れました。これがなかなか面白い、というか懐かしい風景が次々に出てきて、興味をそそります。本の帯には、以下のようにあります。


この画集は東京が失ったものへの鎮魂歌であり、生き残ったものへの応援歌でもある。

消えゆく東京の街並を版画家・山高登が100の風景と文章で綴りました。幻想的な風景があなたを昭和の登用へいざないます。


以下に僕がまったく個人的に選んだ「本郷菊坂」と「ビヤホール」、そしてこちらも個人的ですが、僕が結婚式を挙げた霊南坂教会と、再開発が進んでいる谷町の様子を描いたものを載せておきます。

本郷菊坂(1978年)

菊坂の町名は明治時代、菊をつくる植木職人が多く住んでいたからと言われている。この路地に樋口一葉が一年ほど住んでいた。近くには彼女が通った質店伊勢屋も残っている。路地の井戸は「一葉さんの井戸」と愛称されていて、階段を上がり右へ行くと「本郷あぶみ坂」の途中に出られる。近ごろ文学散歩でこの路地を訪れる人が多くて住民は迷惑しているそうだ。


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ビヤホール(1979年)

銀座七丁目にあるビヤホールライオンは、戦前の貴重な建築である。たまたま訪れた私は、その立派さに驚いた。高い天井と、アール・デコ風でまとめられたデザインは見事で、私はすぐこの広い空間の空気を表現してみたいと思い、食事をしたり、ビールを飲みながら何枚もスケッチをした。銀座で唯一残してほしい文化財である。


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谷町の変容(1998年)

六本木に近い谷町が大工事をしているところに出会った。このあたりは小市民的な静かな町であったが、高級ビジネス街として再出発を図るために再開発に踏み切ったのであろう。遠くに見える霊南坂教会も谷の奥に引っ越した。私は残念でならないので、空に怪鳥のような雲を描きこんで、すこし鬱憤を晴らした。


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霊南坂教会の冬陽(1992年)

麻布谷町にあったこの教会は、東京駅の設計を手がけた建築家・辰野金吾による設計である。俳優の三浦友和と箇所の山口百恵の結婚式場として大いに注目を集めたが、谷町の再開発とともに姿を消した。「谷町の変容」でも解体寸前のこの教会を描いた。


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昭和東京実景(その1)
①北千住 ②品川 ③建設中の東京タワー ④恵比寿のビール工場

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昭和東京実景(その2)

佃島


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昭和東京実景(その3)
①本郷菊坂 ②本郷真砂町・足軽長屋 ③両国 ④新大橋 ⑤日本橋


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「東京昭和百景」作品一覧


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詳しくは下記ホームページをご覧下さい。