目黒区美術館で「ジョージ・ネルソン展」を観た! | とんとん・にっき

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目黒区美術館で「ジョージ・ネルソン展―建築家・ライター・デザイナー・教育者」を観てきました。


ちょうど1年前ですが、渋谷のアップリンクで「ふたりのイームズ」という映画を観ました。ふたりとは、チャールズとレイのことです。チャールズ・イームズは1907年生まれ、そしてジョージ・ネルソンは1908年、まさに同じ年代、同じ時代にアメリカのデザイン界で活躍した人たちです。ネルソンは、タイトルにあるように「建築家、ライター・デザイナー・教育者」という多彩な顔を持ちますが、イームズも同じように多彩な顔を持ちます。つまり、二人はいかなるカテゴリー化も撥ね付ける幅の広さがありました。


とはいえ、僕は二人のことについてはほとんど知りません。僕よりちょっと上の年代で、インテリアデザインをやっていた人たちは当然知っていたでしょう。ネルソンについては今回、「ボール・クロック」や「マシュマロソファ」を観て、このデザインを知ってはいましたが、名前とそのものとは結び付きませんでした。会場で見たのは、「マシュマロソファ」の開発をたどったビデオでしたが、けっこう手間暇がかかっており、見た目とは裏腹にローテクだったようです。オフィス家具やシステム収納などについては、いわばモジュラー化とユニット化により可変性や可動性を追求したモものだったといえるでしょう。ネルソンは、今までにない、まったく新しい家具の概念を生み出しました。


ネルソンは、住宅についても同じようにシステム化を追求しています。工期の短縮と品質の安定化を目指したものでした。「エクスペリメンタルハウス」は、12×12×12フィートの立方体を一つのユニットとし、その立方体を連続させることで規模も拡大・縮小が可能でした。この実験住宅は模型のみの提案に留まり、残念ながら実現には至っていません。こうしたフレーム構造の考え方で、1959年にモスクワで開催されたアメリカ博覧会の展示システム「ジャングルジム」に引き継がれます。


イームズと比べると、同じような時代に、同じような仕事をしてきたにもかかわらず、ネルソンはあまり知られていない人でした。目黒区美術館の降旗千賀子はネルソンは、「幅広いがゆえ思想的なために、イームズのような明快な捉えどころがあるといえないところが難しい」という。とはいえ、「童画家、ライター、デザイナー、教育者としての多彩な顔を持つことが調査によって明らかになり、デザイン思考とものの見方という意味で大変重要な仕事をした人であったことが紹介できた」と語ってもいます。



展覧会の展示構成は、以下の通りです。


The Home

―初期の製品やプロトタイプを含む家具

The Office

―アクションオフィスなど新しい考え方によるオフィス家具

Graphic and Corporate Design

―ネルソン事務所が担当したグラフィックデザインと企業デザイン

Clocks

―部屋のインテリアとして提案された壁時計

Exhibitions

―1959年にモスクワで開催されたアメリカ博覧会の模型

Bubble Lamps

―照明器具

Education

―視ること考えることを廻る数々のレクチャー資料










「ジョージ・ネルソン展―建築家・ライター・デザイナー・教育者」

チャールズ&レイ・イームズ、アレキサンダー・ジラードらの才能をいち早く見出し、戦後のモダンなライフスタイルにおいて、新しい家具の考え方、軽快なオフィスのあり方を提唱したジョージ・ネルソン(1908-1986)は、20世紀デザインを定義づけたデザイナーの一人といっても過言ではありません。アメリカのコネチカット州ハートフォードで生まれ、エール大学で建築の学位を取得、ローマのアメリカン・アカデミーで学んだ後、ニューヨークで建築事務所を設立します。いくつもの建築雑誌の編集に関わるなどライター、編集者としての資質も磨き、後に建築やデザインの本質を語る多くの著作を発表しました。壁の厚みに注目して考案した画期的な収納家具、《ストレージウォール》(1945)が『LIFE』誌に大きく紹介されたことがきっかけとなり、1946年からはハーマンミラー社のデザインディレクターに就任(~25年間)、システムによるデザインやCI(コーポレートアイデンティティ)を次々に提案し、イームズやジラードらとのコラボレーションにより同社を一躍世界的な家具メーカーへと成長させました。ネルソンは、卓越したデザイナーであったばかりではなく、優れたプロデューサーであり、常に先を見つめ、人、社会、流通をトータルで考え続けました。ネルソンの“モノを視る方法論”は教育者としても歓迎され、大学での伝説的な講義を生み出します。こうしたネルソンの生き方や考え方は、今この時代に新鮮に映ります。本展は、ドイツのヴィトラ・デザイン・ミュージアムの企画による世界巡回展で、日本では目黒区美術館のみでの開催となります。これまで、纏まった形で紹介されることのなかったジョージ・ネルソンとネルソン事務所による豊かな仕事とその魅力を、家具やプロダクト、模型や映像、そしてグラフィック資料など約300展でご紹介していきます。


「目黒区美術館」ホームページ


nel1 「ジョージ・ネルソン展

 建築家・ライター・デザイナー・教育者」

2014年7月15日~9月18日

小冊子

発行日:2014年7月15日

編集:目黒区美術館学芸員 降旗千賀子

発行:公益財団法人目黒区芸術文化振興財団

目黒区美術館




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