東京都美術館「楽園としての芸術」展ブロガー特別内覧会に参加した! | とんとん・にっき

とんとん・にっき

来るもの拒まず去る者追わず、
日々、駄文を重ねております。

rakuen


東京都美術館「楽園としての芸術」展のブロガー特別内覧会に参加しました。


特別内覧会開催日:2014年7月30日

タイムスケジュール:

  18:15 受付開始

  18:30 ギャラリー開場/ミュージアムショップ開店

       (自由鑑賞・ショッピング)

  19:00 フロアレクチャースタート(中原淳行学芸員)

  19:30 フロアレクチャー終了 

       (自由鑑賞・ショッピング)

  20:15 ミュージアムショップ閉店

  20:30 ギャラリー閉場


「アトリエ・エレマン・プレザン」

1991(平成3)年、英虞(あご)湾を臨む風光明媚な三重県大王町の伊勢志摩国定公園のなかに、画家の佐藤肇氏と佐藤敬子氏夫妻により設立されました。
「エレマン・プレザン」とは、フランス語で「現代の要素」という意味です。今この時代において、アトリエが重要な構成要素でありたいという願いが込められています。東京では長女の佐藤よし子氏と佐久間寛厚氏による代々木での活動を経たのち、現在は経堂の閑静な住宅地にアトリエがあり、三重と経堂とも、ダウン症の人たちを中心とした絵画制作が行われています。
作品のスタイルは様々ですが、アトリエで「指導」の手が入ることは一切ありません。スタッフは絵具や筆の準備をし、談笑しながら制作の様子をただ見守っているだけのようにみえます。しかし、日々のコミュニケーションを通じて育まれる、つくり手との絶対的な信頼関係のなかで、その人ならではの造形が生まれ得る「最良の環境」を整えることにスタッフは全力を傾けており、何気ない振る舞いに込められた彼らの眼差しのあり方にこそ、アトリエ・エレマン・プレザンの活動の本質が潜んでいます。
ダウン症の人たちが生み出す、明るく調和に満ちた独特の世界観は、佐藤肇氏と佐藤敬子氏、フランスのアール・ブリュット・コレクション元副館長ジュヌヴィエーヴ・ルーラン氏、三重県立美術館の元館長酒井哲朗氏により、「アール・イマキュレ(無垢の芸術)」と命名されています。
現在、三重のアトリエを拠点として、ダウン症の人たちによる「固有の文化」を発信する芸術家村というべき「ダウンズタウン」設立の計画が始まっています。


「しょうぶ学園」

1973(昭和48)年、鹿児島県吉野町において、知的障害者援護施設として設立されました。大島紬や刺し子、竹細工などの下請け作業を行っていましたが、現統括施設長と副施設長である福森伸氏・福森順子氏夫妻の考え方を柱に、1985(昭和60)年頃から、障害のあるつくり手が本来もっている個性を活かせるような、歓びにあふれた制作環境へと変化していきました。
現在は「工房しょうぶ」の名のもとに、「布の工房」「木の工房(木工)」「土の工房(陶芸)」「紙の工房(和紙)」「絵画、造形のアトリエ」があり、つくり手の自主性を尊重した活動が活発に行われています。「布の工房」からは、「針一本でひたすら縫い続ける」というつくり手たちのスタイルを発展させた、「nui project(ヌイ・プロジェクト)」が1992(平成4)年から始まり、既製のシャツへの刺繍などが行われています。
南国の緑豊かで、美しい光が降り注ぐ広い園内には、企画展を行うギャラリーやクラフトショップのほか、施設利用者の働くパン菓子「ポンピ堂(旧称ル・カリヨン)」、レストラン「パスタ&カフェ Otafuku」、そば屋「凡太」が営業を行っており、一般の来訪者も自由に出入りすることができます。近年では、レストランの食材に無農薬のものを用いるべく、有機野菜や果樹の栽培にも取り組んでいます。
福森伸氏を中心とするパーカッションバンド「otto(おっと)」とヴォイスグループ「orabu(おらぶ/鹿児島弁で「叫ぶ」の意)」は、施設利用者とスタッフがメンバーで、その曲の一つが、アパレル・ブランドのCM(「nico and…」、出演:広末涼子、2012年)に採用、独特のエネルギッシュなサウンドが話題を呼びました。


展示会場風景

a5

a4

a3

a2

tobi5

tobi3

tobi2

tobi4

フロアレクチャー:中原淳行学芸員

a7


「楽園としての芸術」展

人の営みにおいて、芸術は本来どのような役割を担うものなのでしょうか?本展では、「アトリエ・エレマン・プレザン」(三重、東京)と「しょうぶ学園」(鹿児島)で制作された絵画・立体・刺繍などを紹介します。つくる歓びとともに、何か深々とした感情で満たされているような造形の数々は、見るものを陶然とさせる魅力を放っています。ダウン症などの障害がある本展のつくり手たちは、ひとり黙々と、あるいは談笑しながら、何の気負いもなく作品を手掛けていきます。なかには、筆をとる前とは別人のような集中力を発揮し、宝石のような色彩が躍動する絵をたちまち仕上げてしまう人もいます。完成に何年もの時間がかかる場合でも、作品への執着はありません。比較をし、競争することもありません。創造の過程において、息をするように迷いのない彼らの構えが「限りない自由」を呼び込んでいます。芸術の醍醐味とは、つくり手にも鑑賞者にも「特別な経験」が与えられることにあります。制作を通じて心が解き放たれ、その結果生まれたものが、また人の心を揺り動かすという奇跡のようなつながり。本展が新鮮な驚きとともに、世界に調和と幸福をもたらす芸術の可能性ー「楽園としての芸術」のあり方ーを体感いただける機会となることを願っています。


「東京都美術館」ホームページ


tobi1









「楽園としての芸術」展

図録

編集:中原淳行(東京都美術館事業係長・学芸員)

    水田有子(東京都美術館学芸員)

翻訳:ブライアン・アムスタッツ

アートディレクション:永井裕明(N.G.Inc)

デザイン:本間亮(N.G.Inc)

デザインコーディネーション:堀川玲菜(N.G.Inc)

発行:東京都美術館

(公益財団法人東京都歴史文化財団)