土下座したままサトミは言った。

 

「腕を強く掴んで、すみませんでした。」

 

 

しばし無言。

 

それだけ?

 

それだけの為の、土下座?

 

 

 

私「言いたいことは、それだけですか?」

 

サトミ「あ、あと、クズさんと、こういう関係になって

すみません。」

 

私「これから2人、どうするの?」

 

サトミ「クズさんと話し合って・・」

 

 

この期に及んで別れる気はないのか・・チーン

 

 

私「クズ?話し合いがあるらしいよ。

この場できっぱり終われないみたいだから

もう帰って来なくていい。

好きなだけ2人でずっと話し合いしてたらいいよ。」

 

クズ「話し合うことなんかない。

今この場で全部終わり。

(サトミに)わかるだろ?もう終わりだから。

れいに謝って!終わりにするって!」

 

 

クズの言葉に、またサトミが錯乱した。

 

 

サトミ「私たちはずっと一緒でしょ!

こんなことで切れる関係じゃないでしょ!

そんなに奥さんに気使うことないよ!」

 

目に涙をたくさん浮かべて叫んだサトミ。

 

 

 

もう人目は気にならないのか

全裸のまま立ち上がったサトミは

私の両腕を掴んで揺さぶり叫んだ。

 

サトミ「クズちゃんの弱み握って!

いろしろしてやってるからって!

優位に立って!

そうやって縛り付けて!」

 

クズ「やめてって!もうやめて!」

 

 

慌てたクズも立ち上がって、私とサトミの間に入った。

腕を引き離し、サトミに背を向けて、私を抱きしめた。

 

 

 

 

気持ち悪い!ゲロー

 

触るな!ゲロー

 

さっきまでサトミに触れていた手で

私に触るな!ゲロー

 

 

 

サトミ「ねえ!こっち向いて!

なんで奥さん抱きしめるの!

そんな姿、見せないでよ!

ねえ!ねえ!」

 

 

 

クズを私から引き離そうと、クズの腕を必死に引っ張るサトミ。

子どもの様に、声をあげて泣きながら。

 

引かれるほど、力を込めるクズ。

 

クズの腕から、何とか逃れようと必死の私。

 

 

なんとも、おかしな構図だチーン

 

 

 

私「クズ、離して。

気持ち悪くて無理だから。」

 

 

 

私の言葉に驚いて、一瞬力が弱まった瞬間に

腕の中から逃げた滝汗

 

 

私「もうね、当人同士での話し合いは無理だと思います。

今後は弁護士を通して進めましょう。

ご主人に知られたくないのであれば、真摯に対応してください。」

 

サトミ「・・・・え」

 

 

少しずつ冷静さを取り戻したサトミ。

 

 

サトミ「あの、これから私は・・」

 

私「こちらの弁護士からの通達をお待ちください。」

 

サトミ「何で弁護士!謝ったのに!」

 

私「嫌なら私と直接交渉しますか?

当然、ご主人にも交渉の場に参加して頂きます。

それで進めましょうか?」

 

サトミ「主人は!関係ない!

絶対関係ない!主人に言うなんて!

なんでそんなことできる!

だめ!主人はっ!」

 

 

 

もう堂々巡りだ・・

 

もはや大人の、人としての、会話は

彼女とは成り立たない。

 

 

私「もう話すのは無駄ですね。

今すぐ退室してください。

この部屋は清掃に入ります。

クズ、さっさと会計済ませて出て行って。」

 

 

私はスタッフに「剥がして」と伝え、一度部屋を出た。

 

外へ繋がる入り口を開けると、2人の服がびちょびちょのまま

コンクリートの上に投げられていた。

上には、しっかりローションがかけられていて

ヌルヌルしているのが見ただけでわかる。

 

 

これ着て、徒歩で帰るんだ。

晴天の昼間に。

 

思わず、笑みがこぼれた。

 

ざまあみろ。

たぶん人生で初、そんなことを思った。

 

 

 

部屋の入口で中を見る。

もくもくと作業をするスタッフと

清算機で会計中のクズと

ベッドわきで茫然と座ったままのサトミが視界に入った。

 

 

清算を終えたクズが、脱衣かごの前で固まった。

 

ちょっと、とサトミを呼んだ。

 

 

 

服がないと、パニックになるふたり。

 

 

 

私「勢いあまって浴室で脱いだの?

濡れていたから外に干しておいたわよ?

床が濡れると迷惑だから。

さあ、出てって。」

 

 

顔を見合わせたふたり。

全裸のまま階段を下りてドアを出た。

 

私はすぐ、ドアロックをかけて、フロントに戻り

モニター越しに二人を観察した。