お稽古日記担当の三浦です.

年初のみちのくお稽古も終わり,各々が指摘された課題に取り組んでいます.次回のみちのくお稽古までは時間があるため,部内は何となくのんびりとした空気です.

 

 

最近は頻繁にお稽古日記担当になっており,書くことが少なくなってきたので少し能とは関係のない話をしたいと思います.高校生時代に私が感動した数学に関する話です.

 

皆さんオイラーの公式をご存知でしょうか.

 

equation

 

(1)式で表される公式であり,成立自体は両辺をマクローリン展開することで容易に確かめることができます.(1)式に equation を代入して得られるのがいわゆるオイラーの等式であり,数学界で最も美しい式と呼ばれることもあります.

 

equation

 

(1)式は上述の通り,べき級数展開によって示される訳ですが,今回はある動画のとても面白い示し方(もちろん厳密な証明ではありません)を紹介したいと思います.高校数学と高校物理のみで理解できるようになっています!

 

簡単のため(1)式の equation を equation に置き換え,equation は実数であるとします.すなわち

 

equation

 

が成立する理由について考えます.

まず右辺についてですが,明らかに複素数平面における単位円上の点であることがわかります.見方を変えてequation を時間として捉えて変化させていくと,この点は等速円運動をするということです.

 

今度は左辺について見ていきましょう.左辺がどのような値なのかは分かりませんが,とりあえず複素数平面上のどこかの点と考えられます.ここで equation での微分を試みます.指数部分が実数ではありませんが,自然な拡張として

 

equation

 

となることが期待されます.ここで複素数平面上での掛け算の意味について思い出してみましょう.複素数平面上での掛け算は実数が拡大(縮小),純虚数が回転を意味しているのでした.equation をかけるというのは90°回転させることに等しいということで(3)式を眺めてみます.equation を equation で微分した結果,すなわち equationequation は equation を90°回転させた点と考えることができます.したがって equation と equationequation にそれぞれ対応するベクトルは直交している訳ですが,この関係は等速円運動の性質と同じです.等速円運動をする物体は位置ベクトル equation と速度ベクトル equation が直交するという特徴を持っていました.また,この直交条件は物体が等速円運動をする必要十分条件でもありました.

すなわち (3)式より equation は複素数平面上を円運動することから,

 

equation

 

と表されることになります.

位相 equation については(4)式の両辺に equation を代入すると equation より,equation を得ます.角速度 equation については(4)式の両辺を equation で微分すると

 

equation

equation

 

より,equation を得ます.

以上より(4)式に equationequation を代入することにより目的の(1)'式が示されました.

 

 

この考え方の一番面白い点は,やはり equation に等速円運動の性質を見出した点です.物理学の知識(もちろん物理公式の記述には数学を用います)を数学に応用した,この示し方を知った時は感動しました!単純な事実に対しても複数の方向から見ることで全く違った景色が見られることが数学の面白い点の1つだと感じています.

 

 

せっかくなので次回の日記担当者に円運動に関する問題を出題します.担当者は是非解答してくださいね!

 

-- 文系学生用 --

円運動する物体の位置ベクトル equation (equation, equation)と速度ベクトル equation (equation, equation)が直交することを示せ.

 

-- 理系学生用 --

equation と equation が直交するとき,物体が等速円運動の運動方程式を満たすことを示せ.

equation

 

 

(↓今回参照した動画です.他にも理工系の面白いテーマを取り扱った動画がたくさんあります!)