幸い、男にも女にも
好意を持たれる事が多かった。
それなりに恋人だって作った。
そうすれば、
この不安定さから
目を外らせる気がしたから。
チャンミンはいつだって
そんな俺を咎めることも
しつこく聞いてくることもしなかった。
いつだってこうやって
穏やかに微笑んで隣にいてくれる。
でもたまに
どうしようもなく不安になって。
このまま
無かったことにしたらいいのか
それとも
無かったことにしたらいけないのか
それでも笑って隣にいてくれるのか。
こんなの。
いいわけがない。
だって俺たち。
だって。
「どうしたの?疲れた?」
コーヒーを淹れたチャンミンが
俺の隣に腰掛ける。
頬に触れてくる、温かい掌。
その指がだんだんと
下へ下へと。
俺の左手の薬指の
シルバーの輪っかに触れられて
反射的に手を引っ込めた。
それだけは、触れられたくない。
辛くなるから。
「ユノ、どうした?」
そんな反応も知ってか知らずか
俺を見つめる熱い眼差し。
まだ俺を欲しいという熱をもった眼差し。
その中に
一瞬の翳りが見えた。
ここから抜け出したいと希う
チャンミンの慟哭。
ああ、そうだった。
こんなにも、不安で仕方ないのは
俺だけじゃないんだと。
いや、むしろ
こんなことを続けてる俺より
チャンミンのほうが
辛い思いをしているんじゃないのか?
こんな自分に触らないでくれと
チャンミンの腕を振り払うと、
中庭に飛び出した。
衝動的に薬指の指輪をはずして
思い切り、遠く遠くへと投げ捨てた。
もう限界だった。
だが
どこかで跳ね返ったのか
金属音を響かせだ後に
小さくポチャっと間抜けな音が聞こえた。
「どいてて」
「え」
その一瞬の後、
大きな水音が響いた。
チャンミンが服のままに
プールに飛び込んた。