『荒城に白百合ありて』 感想
須賀しのぶさん4冊目。
まだ文庫化してなく、重い・高い・硬い、というハードカバーなので買おうかどうかと悩みましたが、買ってみました。ひと月近く楽しめたから随分コスパは良いのですけどね。
あらすじはまあ
他のサイトでご覧ください(笑)
あらすじまとめるの苦手です。。。。。。そして、あまり読むのも好きじゃないです。(まあ読まないと買えないから読むんだけど)
結構、ネタバレ書いてあることが多いから苦手ですね。
私はとにかくネタバレが大嫌いなので、もうどことなくハッピーなのか悲しいのかそれすら匂わされるのも苦手なんですよ・・・・でも面白い本は読みたい・・・ということで作家買いになってしまう。
作家買いなら、一切あらすじを読まずとも、自分の好みの内容に会える可能性が高いですから。
ただ、作家さんの中でもどれを買おうかと悩むと、結局はあらすじに目を通してしまう(笑)
この『荒城に白百合ありて』の帯とかに書いてあったのは
「薩摩藩士の男が、災禍で、会津の美しい少女に出会う。その後何度も出会い、お互い強く惹かれあうものの―――」みたいな内容。
そしてもう、帯にでかでかと 「あなたと、ともに生きられない。だからあなたと、ともに死にたい」みたいなことが書かれてるし、明らかに悲恋物語なんです。ネットの「ネタバレなしレビュー」にすら「悲恋」みたいなコメントが山ほどあって、もう悲恋前提のお話。
わたしは『戦場で男女バディが命をかけて闘い、なんやかんや絆を深めていく』という話が大好きなので、そういうのを勝手に期待して、読み始めました。
ネタバレ感想です。
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もう、、、、、まず、、、、「上記の」期待は裏切られました。ええ、「戦場で男女バディが協力し合う」という、期待。 というか、これは私の歴史知識(特に幕末)の大いなる欠落によるものなのですが。
薩摩藩と会津藩は、・・・・幕末には敵同士になったんですね!!orz
私の歴史的興味はと言うと・・・・・
興味のある時代 : 第二次世界大戦前後
興味のない時代 : 幕末
という人なので、とにかく幕末に関連した基礎知識が・・・・おそらく小学3年生にも満たない程度なので、大変でした・・・・。(一応定期テストの時には覚えたはずだが、興味なさすぎてほとんど覚えてない)
めっちゃ恥ずかしいんですけど、新選組が何をした団体なのかも覚えてないのです。勝者なのか敗者なのかすら忘れました。あと、江戸幕府がどうやってなくなって、明治になったのかも覚えてませんでした。
追い打ちをかけるように、 史実・るろ剣漫画・るろ剣映画 の展開が混ざり合って脳内は酷い有様です。
さらに、土地的な要素で言いますと
興味のある地域: ヨーロッパ
興味の薄い地域: アジア(日本ふくむ)
これまで読んだ3作『革命前夜』『また、桜の国で』『神の棘』は全て 「時代は第二次世界大戦前後~冷戦あたり」「地域:ヨーロッパ」だったので、知らない史実や都市名、人物名、が登場しても興味を持って読めていけたのですが。
『荒城に白百合ありて』 は 「時代:幕末」「地域:日本」なので、とにかく読み進めるだけで大変でした。同じ作家さんが、同じように歴史小説を書いてらっしゃるのに、読者の興味の強弱でこれほどまでに読みやすさが違ってくるとは。
さらに、『話の規模が個人レベルなのか団体/国家レベルなのか』というのも私自身の好みにかなり関係しているということを最近発見しました。
興味のある話: 団体/国家レベルの話
興味の薄い話: 個人レベルの話
一番それを実感したのは、漫画『鋼の錬金術師』だったんですよねえ。読む前のあらすじ『禁忌を犯した兄弟が、失った身体を取り戻すたびに出る』というのもあまり興味をそそられなかったし、最初のほうの展開は、それこそその通りで、そんなにハマりませんでした(ていっても力のある漫画家さんだから面白いんですけど)。
だが途中から、国家レベルの存亡をかけた話に膨らんでいき、見事にドはまりしたのです。『人間VS人造人間』なところにはまりました。他に好きな漫画である『HUNTER×HUNTER』も「キメラアントVS人間」だし、『DRAGON BALL』も「人間VS人造人間」「人間VSサイヤ人」「人間VS宇宙生命体」みたいな話なので、そういうのが好きなんだと思います。そういえば、学園ものはほとんど見ないのですが、唯一面白いと思った『帝一の國』も、派閥VS派閥の話だったなあ。
というわけで。
『荒城に白百合ありて』はどちらにあてはまるのかというと。
ちょっとこれが分類が難しい。
基本的には藩同士の戦い、攘夷派と開国派の戦い、ではあるのですが。
あまりそこには焦点があたってない、という作品に感じました。どちらかというとその流れに馴染めず、浮遊している男と女の話を描いた作品でした。
前置きが長くなりすぎましたが。
結論から言いますと。
こんなに『私の興味の薄い要素』が揃った作品だったのに、面白かった!
はい。これを言いたいがために前置きをながながと語りました。
やっぱり須賀さんの文章は、本当にその場にいるような気にさせてくれるところが良いなと、もう冒頭のシーンから思いました。朝餉(朝ごはん)のシーンなのですが、最後まで噛んで食べなさい、という言葉とか、かぼちゃごはんのおいしそうな感じとか読んでると、おなかがすいてくる不思議。
で、そのあといきなり白装束に着替えてる母親・・・・。微かに血の匂いがする・・・ということで、祖母の自害を手伝い、これから娘ともども自害をするというシーンからいきなりはじまります。
なんか・・・結局いつの時代も攻めてこられると逃げ場なんてなかったんだなあと思いました。こうやってとりあえずの平和が当たり前になったのは本当にここ50年程度で、それ以前は生き残るために殺し合うのが当たり前の世界だったんですねえ・・・。
で、この話の主人公・鏡子の夫は、残念ながら、「鏡子からそこまで好かれていない」夫なのですが。この夫が・・・・・不憫なんですよねえ(TT) 私、結構この人に同情してしまいました。
だって鏡子の、夫への愛情のなさが・・・・・強烈です。愛情、というよりは、興味のなさ、ですかね。
もう、、、、例える動物が「イタチ」ですからねえ・・・・。はい。。。。なんか・・・・。決して一般的に愛着をわくような動物じゃない。
もう、鏡子が最初から最後まで興味を持っていた相手は伊織一人しかいないのですが。結局伊織がねえ。。。。。。いわゆる勇気のない、はっきりしない男というか。「恋」の相手にはいいけど、鏡子との未来は最初からなかったのでしょうねえ。という結末でした。
でも、この結末、決して『悲恋』ではないなと思いました。
もう途中から二人そろって死ぬんだろうなというのは手に取るようにわかったのですが。あの最期は悪くはない。少なくとも、愛する妻から実は愛されていなく、戦地で一人切腹し、首だけ故郷に送りかえされてしまった鏡子の夫よりは、百倍幸せな最期を遂げた二人だったと思います。
ただし伊織の最期が・・・・鏡子と同じく突っ込みどころ満載でした。ここまできてなお・・・・・という気持ち。いや、まあ池上にバレたから仕方ないんですけど、それでも辿りつけただけ良かったのですけど。
まあでも私に言わせりゃどっちもどっちかな。
まわりに押されたものだったとはいえ、プロポーズのようなものをあっさり拒絶した若かりし鏡子も鏡子だし。
結婚寸前の鏡子が最後の賭けで伊織に声をかけたのに、止めなかった伊織も伊織だし。
まあ・・・・鏡子と伊織は、結婚してもうまくいかなかったんじゃないかしら。
案外・・・・こういう人たちは、結ばれないからこそ燃えるパターンなんじゃないかと個人的には思います。
須賀しのぶさんはやはりラストシーンの美しさが際立ってます。
余韻の残り方・・・・。最後の一行が素晴らしすぎました。
鏡子と伊織の、「この世になじめない者同士」「世界の終末を待っている」というのが最初は意味がわからなかったのですが。
読んでる間に、こういう面が少し須賀さんにもあるのかなと想像してしまいました。
そして、たぶん私にも、誰にも、少しはある価値観なのではないかなと思いました。
なので、突拍子もないキャラクター設定にも思えるのですが、どこか共感できるところがあるのだと思います。
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以上です。
上の文章を今までの三冊の感想を比べていただくとお分かりの通り、熱量としては低いですが。
冒頭に書いた通り、私のそもそもの「ヨーロッパ」「第二次大戦」あたりが好きという好みの問題でどうしても前述三冊のほうが熱量が高くなります。
が、とても心に残る作品でした。