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2013/10/03 15:38
〔アングル〕中国、地方の抵抗で不動産データベース化進まず 

[北京 3日 ロイター] - 中国では、中央政府が進める汚職撲滅運動を後押しすると期待された「不動産データベース化」計画が、地方政府の抵抗を受け遅れている。 不動産データベースはそもそも、住宅政策の一環として構築が計画された。しかしそれ以外にも、たとえば、地方政府の高官が不正に取得した資金で不動産を購入した場合、データベースがあればその事実が白日の下にさらされるため、汚職を抑止する効果があると見られていた。 習近平国家主席は3月の就任以来、汚職を共産党への脅威と位置付けており、これまでに複数の政府高官の調査・身柄拘束を行ってきた。 しかしデータベース化の遅延が示すように、トップダウンの汚職撲滅運動は地方の既得権益層の抵抗で頓挫しかねない事態となっている。 中国不動産協会の副会長は「データベース化で何が起こるのかについて、計画に影響力を持つ一部の高官の間では警戒感がある」と指摘。「そうした高官は計画を意図的に遅らせようとするだろう」と述べた。 データベース計画は2010年に始まった。データベースでは、保有する不動産の数やその物件の詳細が閲覧できようになる。また、住宅保有者が追加的に購入した不動産に関する情報も掲載される、という。 ただ、地方政府の高官は、不動産購入に関する情報が中央によって集められ、簡単に検索できるという計画に強く反発。同計画の対象となった最初の主要40都市が参加を拒否したことから、住宅都市農村建設省は一転、情報を一般には公開しないことで合意することとなった。

<中央と地方に温度差> 計画の第2段階は、500都市が新たに加わり6月までに完了するはずだったが、実現していない。住宅都市農村建設省は遅延の理由を明らかにしていないが、メディアは地方政府の抵抗のためと報道。 新華社は「期待は打ち砕かれた。地方の一部が協力していない」と報じた。 チャイナ・デーリーは、データベース化の遅れは「既得権益団体の抵抗」のためだと広く考えられていると指摘。「健全で汚職のない不動産市場を求める国民の声に対して、中央政府に応える意思と能力があるのかは、計画が最終的に実行されるのかどうかで分かる」としている。 不動産の保有情報が全国的にデータベース化されれば、複数の豪邸を保有していることを隠ぺいしたい政府高官にとっては大きな脅威だ。 中国のメディアではここ数カ月、公務員の給与では購入できないような住宅を保有している地方政府の高官に関する報道が氾濫している。 とくに有名なのは、広東省広州市で都市行政を担当していたある高官のケース。新華社の報道によると、この高官は月給が1万元(1600ドル)にすぎないにも関わらず、20戸以上の住宅を保有していた。

中央政府の高官の一部は、汚職撲滅運動に必要だとして、保有資産に関する情報を公開することに支持を表明している。共産党中央委員会の政治局員に名を連ねる汪洋副首相は、中国の政府高官は資産を公開すべきだと発言。政治局常務委員で、党内序列4位の兪正声氏も資産情報の公開を支持、自らの情報を公開することにも前向きな姿勢を示した。 ただ地方では、資産情報を公開すれば、高官のぜいたく行為への批判を強めている住民から報復を受けるのではないか、との懸念が強い。 香港浸会大学の政治学者は「地方政府の高官は、社会の怒りの矛先が向かうのは自分たちだということを知っている」と指摘。「地方社会は狭いため、中央の高官よりも懸念は強いと言えるだろう」と述べた。