3月29日

 

 

別段いつもと何も変わらなく家を出た。

 

自分がこれから九ヶ月間もの間、神奈川の自宅には帰らず、カナダで暮らすことになるということの重大さをまったく感じずに家をでた。

 

 

普通にいつものように駅前のキヨスクで週刊プロレスを買ってみたりする。

別段何も変わりない。

 

飛行場についたときあたりから、いよいよ実感がわいてきた。

不安は半分、期待が半分の微妙な心境だった。

 

そして飛行機に乗り込んだときには本当は興奮でうずうずしているくせに、あえて不機嫌そうなふてぶてしい顔をしてみた。

 

これが人間というものだ。

「ほんとうにワクワクしている」と人間はポーカーフェイスをきどるのだ。

 

この一年間大学に通ってみたが、正直これを超えるワクワクなど一瞬足りとも

記録したことなかったはずだ。

 

出発前の自分の怠惰さにより英語の勉強はほとんどゼロ、

はっきりいって一から英語をやり直す旅のようなものだ。

英語力は現時点で、

 

高校生レベル!!

 

いくら英語部出身だとはいえ、

 

このまま果たして、九ヶ月でどれくらい変わってこれるのだろうか。

 

そんなことばかり考えていて飛行機に乗った。

 

そうして早くも、アクシデントに巻き込まれた。

 

耳に激痛。

 

 

これはおそらく飛行機経験者ならわかるだろうが、飛行機のように急に低いところから高いところにいくと気圧の変化が大きいため、

鼓膜が圧迫され、耳に激痛が走るのだ。

 

もちろん俺も馬鹿じゃあない。

 

それ対策用の耳栓もちゃんと買ってある。

出発前、この耳の激痛のもう一つの対処法である、

「耳抜き」

というテクニックを姉さんに習ったのだ。

 

これは、スキューバダイビングするときにも使う技術なのだが、耳から空気をぬくというテクニックで慣れてものにしてしまえば怖いものはないらしい

耳にはだんだんと激痛が走ってきて挙句のはてに、

スチュワーデスの声も聞こえなくなってしまった。

 

「あー、あのスチュワーデスは何をしゃべっているのだろう」

 

簡単に人はトラブルに巻き込まれてしまう。だが大体がそんなもの、自分が

招いたものがほとんどだ。

 

いわゆる「いらん好奇心」

 

ホラー映画でペンションに「怪しいビデオ」があったとして、

それを「思わず見てしまう」!

 

 

この「思わず」のことだ。

 

人の死の大半は病死ではあるが、そのうち何割かに

「好奇心死」があってもおかしくないと思う。

 

まあ耳のせいで、飛行機では何もすることがなかったので

「プロレス技」シリトリを繰り返して なんとかこの難局を切り抜けた。

 

そうこうしているうちに現地でJALのスタッフにめぐり合えて飛行機では耳が痛かったのだが、しかし車はリムジン少し感動した。

 

リムジンなんて、まるでアメリカみたいじゃないか。

映画みたいじゃないか。

いいえ、カナダだよ。

映画じゃないよ、現実だよ!!

 

私のこの胸高鳴り、、心の踊りようったら、、まったく

 

しかしく

 

 

本当に酔った。

はきそうだった。顔は青ざめ、自律神経は弱りまくり、

 

リムジンでの

俺のポジションは後ろ向きだった。

寝不足もひびいたせいか、厳しかった。

 

俺は車に酔いやすい性格なので

人生の随所随所でいろんな人や書物から対策を学んでいるが

いつも肝心なときであらわれるのは二つ。

 

「他の車のナンバーをみろ」

「うめぼしかスルメをおへそに乗せろ」

 

前者はタクシーの運転手に教えてもらったやつで、後者は、公文式の国語で

学んだやつだ。

 

 

もちろんどちらも効果はなかったし、なによりスルメもなかった。

 

 

初日から、前途多難だなぁ

そんな気持ちでいっぱいでした。

 

 

 

カナダ留学教訓 1~4

 

「いらん好奇心が時に人を殺す」

「飛行機に乗ると耳が痛くなるので耳栓を買おう」

「リムジンに後ろ向きで乗ると、、酔う」

「公文式は応用が利かない」