高校に通うことになっても、今までの中学校と反対の方向になるだけで、大して違いはないと思っていたジェジュンだったが、真新しい制服に身を包むと、どこか少し背筋が伸びるような緊張感があった。
それは何となく想像がついていたし、きっとそれだけだろうと。
しかし緊張感とは別に思いもよらない感情が湧き上がっていた。
僅かに胸が踊るような気分。
未知の高校生活への期待。
そう思う理由をジェジュンはちゃんと分かっていた。
できたばかりの友達のせいだと。
数日前出会ったユノとは、性格が全く違うのに変に気があった。
多少図々しいとも取れるユノの行動。
それがユノだとユノらしいと取れて、あまり気にならない。
初めて会った日にコンビニの帰り、ジェジュンはユノに自分の家を教えた。
高校は駅とは逆方向で、ジェジュンの家を通り過ぎたその先にあったから。
これから通う高校までの道案内のつもりではあったが、初対面の相手に自宅を教えるなんて普通はしない。
けれどその時既に、ユノが朝迎えに寄ってくれて、ユノと肩を並べて学校へ向かう自分が想像できてしまった。
まるで幼なじみのように。
そして入学式当日。
想像した通りに約束した朝八時きっかりに、家の前で待つジェジュンの視界にユノが姿を表した。
ジェジュンに向けて大きく手を振り、おはようと言いながらの満面の笑み。
清々しいその笑顔は、柔らかな春風を一緒に運んで来た。
少し緩んだネクタイと、まだ折り目の残るブレザー姿が眩しくさえあった。
まるでファッション雑誌から抜け出してきたかのように、ネイビーカラーの制服はユノによく似合っていた。
「外で待ってなくてもよかったのに。
チャイムで呼ぶよ」
「うちの父親夜働いてるから、まだ寝てるんだ」
「あっ、そうなんだ。
これから気をつけるな」
自分が声を大にして挨拶してしまったことを気にするように、ユノが口を塞いだ。
「外でまで気にしなくて大丈夫だよ」
「じゃ、行くか。
って、俺道わかんないから」
「それも調べてないの?」
無頓着な性格もここまでくると、とジェジュンは思ったが、たとえどんな高校だろうと、ユノはすぐに馴染むだろう。
きっとすぐにクラスの人気者になって、友達が大勢できて。
自分など瞬く間にその大勢の中の一人になってしまうに違いない。
何故か胸が痛む。
それは嫉妬に似ていてジェジュンを戸惑わせた。
「俺さ、ここに越してきてよかったと思う」
「どうして?
まだ高校生活も始まってないのに、いいことなんかあった?」
「ジェジュンと会えたから」
「僕……と?」
「そう、それが一番。
俺たち凄く気が合うと思わない?
そう思うの俺だけ?
ジェジュンとはずっと仲良くやっていけそうな気がするんだけど。
俺さ友達は多いけど、ジェジュンには特別なものを感じるんだよね、理由はよくわからないけど何故かな」
ユノの特別と言う言葉がジェジュンの胸にじんと響き、途端に沈みかけた気持ちが上向いてくるのを感じた。
頬が自然と緩んでくる。
「俺なんかおかしい事言った?」
「ううん……僕もユノと友達になれて……嬉しい」
「そっかー」
ユノはさも嬉しそうにジェジュンの肩を抱いた。
楽しい高校生活が目の前に広がって見えて、ジェジュンはなんとも言えない幸せな気分になった。