ユノに心を奪われて、一生愛し抜けると思えるひとに巡り会えたというのに、俺はずっと不安で堪らなかった。
こんな自分でいいのだろうか、もうすぐ飽きられてしまうのではないかと、幸せを感じた直後にまた怯えて。
特にミズキさんとの出会いは俺を絶望のどん底に突き落とした。
けれどもし今回のことがなかったとしたら、俺の心はいつか少しずつ壊れてしまったかもしれない。
ユノの俺に対する気持ちの一片知ることができたのは、ミズキさんのおかげかも。
俺を抱き寄せるユノの腕の温かさが、ユノのそばにいてもいいのだと教えてくれているように思えた。
「ミズキ…これからどうするつもりだ?」
二人の過去に何があったとしても、ミズキさんはユノの大切な幼馴染なのだ。
二度と会わないという選択肢もあったのに、ユノはこうしてミズキさんを自分の元に呼び寄せ、今後のことを気にかけている。
「これからか…自分でもよくわからない。
今までもそうだったように街に出て…誰かに声をかけて…何とかなるよ。
少なくともここにはもう来ないし、二人の邪魔はしないから安心して。
正直言うとどうなってもいい…」
「ミズキさん…」
「最近さ…あの街のことばっかり思い出すんだ。
僕らが生まれた街。
田舎で遊ぶところなんか全然なくって。
早くこんなところから抜け出したいってずっと思ってて、こうして都会に出てきたっていうのにおかしいよね。
一人になった父さんはどうしてるかなとか。
こっちに来てから一度も連絡もしてない。
けど…あそこに戻りたい。
仕事もないのに僕が帰っても父さんは迷惑だろうけど…。
…父さんに会いたい…」
俯いたミズキさんの瞳からは、大粒の涙がぽろぽろと流れ落ち、それが床で弾けた。
「僕…もう行くね。
ユノ、今日は会ってくれてありがとう。
もう会うことはないと思うけど、元気で。
それと…」
ミズキさんは掌で涙を拭うと、まっすぐに俺の顔を見つめた。
「ジェジュンには迷惑かけちゃってごめんね。
ユノは本当にジェジュンのことが大切なんだと思う。
僕にはよくわかるよ。
ジェジュンがそばにいてあげてくれれば、ユノは幸せだって。
だから…愛してあげてね…これからもずっと…」
俺は胸が詰まって、ただ何度も頷くことしかできなかった。
抱きしめて大丈夫だよって言ってあげたかったけど、そんなこと言えるはずもなかった。
ミズキさんが去った後も、その悲しげな表情が目に焼き付いていた。
「ユノ…このままでいいのかな…」
「あいつのことはもう忘れろ。
してやれることは何もない」
「でも…」
「俺たちには俺たちの生活がある。
ミズキのことが済んだら言おうと思っていたんだが」
「何?」
「例のホテル、契約が終わったから。
まだリフォーム前だが行ってみる気はないか?
色々あったし、いい機会だと思うんだが」
俺はユノの提案に同意した。
気持ちを切り替えるためにも少し環境を変えるのはいいと思った。
それでも俺はミズキさんのことを忘れることはないだろう。
彼の幸せを願わずにはいられなかった。