ヴェルディ:歌劇「ドン・カルロ」(演奏会形式・字幕付) 

【1884年イタリア語版(全4幕 ※第2幕第2場、大フィナーレを除く全曲)】


指揮:高関 健(常任指揮者)

フィリッポ2世:妻屋 秀和

ドン・カルロ:小原 啓楼

ロドリーゴ:上江 隼人

宗教裁判長:大塚 博章

エリザベッタ:木下 美穂子

エボリ公女:加藤 のぞみ

修道士:清水 宏樹         

テバルド:牧野 元美

合唱:東京シティ・フィル・コーア  (合唱指揮:藤丸 崇浩)


日本のオーケストラは4月シーズン開始のところも多いですが、暑い8月は例年演奏会は控えめにして耳休め、涼しくなって生演奏のありがたみへの渇望が湧いてきたころで、個人的には9月がシーズン・スタートと思っています。

今年は9月に入っても暑く、東京はもはや熱帯になってしまいましたが、当日は前日の台風一過で少しだけ涼しく感じられました。


さて、プログラムはヴェルディ「ドン・カルロ」。

以下、高関マエストロのプレトークでの解説の要旨です。

  • 第二幕のグランドフィナーレは3分ほどの時間だが、ブラスバンド別働隊25人や合唱などを追加で必要とする。この部分だけで経費が倍になり経済的に厳しく、本筋とはあまり関係のない音楽でもあり、割愛することにした。
  • 1979年夏のザルツブルクでカラヤン指揮の「ドン・カルロ」を聴いた。当時留学生として欧州に着いたばかりだった。78年8月の録音ではカットがない。カラヤンはこの曲がお気に入りらしく1950年台から最後は1986年まで何度も上演している。
  • ヴェルディ中期の作品、仮面舞踏会以降は主人公や役柄を音楽に入れ込んで作っている。その後のアイーダなどに繋がっている。
  • オーケストレーションはベルリオーズの影響を受けている。トランペット2、コルネット2、ファゴット4など。出版もパリが先で最初はフランス語、パリのオーケストラを想定していた。
  • 初演後も何度も書き直している。5幕から4幕へ、フランス語からイタリア語へ、今回はイタリア語の4幕バージョン。
  • ドン・カルロの演奏は初めて(カラヤンのザルツブルクで聴いてから45年も温めてきたのかと思うと気が遠くなりますね…)


二幕が終わったところで一回の休憩があり、実質的な演奏時間は約2時間40分ほど。

トスカの時と同じように、舞台の後方に台を置いて、ヴァイオリンは対抗配置、下手から順に1vn、va、vc、2vn、cbの順で扇形に並んでいました。



いつも通り、初めて聴く曲でも予習なしで臨んでいて、聴いたことのある曲やアリアはなかったですが、登場人物はみな何らかの葛藤を抱えていて、効果的でドラマチックな音楽で表現されていました。ドラマのクライマックスでの打楽器、金管楽器など強奏では研ぎ澄まされた音の迫力は圧巻で、シティフィルのこれまでの演奏会形式ではベストに感じました。

なんといっても日本人オンリーの歌手勢が素晴らしい!

2年前の「トスカ」演奏会形式と同じ方も多く、声量もホールを揺るがさんばかりの迫力が何回も伝わってきて、演奏会形式の最小限ながら、表情や演技もしっかりつけていました。

タイトルロールの小原さん、いい意味で安定感、安心感のある歌。

エリザベッタの木下さん、声を聴いた瞬間、トスカの記憶がフラッシュバック。長いアリアも聴かせどころ満載で素晴らしい。

ロドリーゴの上江さん、前回トスカは確か悪役だったと思いますが、今回は後半3幕、4幕で利他的な純粋な思いを切々と歌っていたところが印象的でした。

フィリッポ2世の妻屋さんは、ずっしりとした低音で王の威厳、存在感を聴かせるだけでなく、王の内面の孤独感まで伝わってきました。

エボリの加藤さんは初めて聴きました。後半(確か三幕)のアリアはまさに絶唱。また聴いてみたいです。

合唱は1幕、3幕で、舞台奥と2階P席の両端に陣取っていました。この日も暗譜で素晴らしい出来。

オーケストラも14型とは思えないほど密度が濃く、また一段と練度が増し、違う次元に達しているような素晴らしさ。ソロではチェロ、フルート、ホルンなど。


それにしても、ヴェルディはいつも何人も死んでエンディングになりますね…。