指揮/エリアフ・インバル

演奏/東京都交響楽団

ブルックナー:交響曲第9番 ニ短調 WAB109 (2021-22年SPCM版*第4楽章付き)[*日本初演]


記念すべき第1000回の都響定期にはインバルが2月に続いて客演。ブルックナーの9番、第4楽章付き。22年に初演されたSPCM版だそうです。ブルックナーの版はよくわからん。

二人コンマス体制でのブルックナー一本勝負。

4楽章付きで77分、通常の3楽章でも57分と快速テンポ。

普段のお気に入り席は舞台からは離れ目なのですが、今回は至近距離の席で、音の渦の中でオケの中にいるような感覚でした。

ただでさえ音圧が凄い上に、16型の弦楽器がいつも以上に圧をかけて演奏しているようで分厚い響き。3楽章が終わると楽譜が新しく、小さくなりましたが、全部の楽章が同じ響きの印象でした。

舞台に近いと金管の接触音や木管の管内の雫を拭き取る音、インバルが小さく歌う声いろんな音が聴こえます。

どこかのトゥッティが鳴り始める前のほんの一瞬、弦の擦れる小さい音がフワッと聴こえて時が止まった感覚に。


4楽章を付けた理由は不明ですが、指揮者ご本人は再創造と言っていますが、やはり3楽章で終わる方が良い。弦の高音と金管の重ね方やホルンの響かせ方はワーグナーに近い感じ。

9番は最後の交響曲で、インバルのインタビューでは終末に向けた別れ(farewell)の曲と言っていましたが、演奏ではそんな寂寥感は微塵も感じさせず、これからも元気で頑張るぞというメッセージに聴こえましたが、私にとっては3楽章アダージョまで元気な圧力で押さなくてもいいのにと思いました。

インバルは足取りはしっかりしていてずっと立ったままで振り、腕の振りも自由自在。元気さはこの年代では来週予定のデュトワと双璧ですね。

終わってみて凄かった、気合いが入っていたのは確かだけど、後から振り返って長い間思い出に残るかというとどう思うんだろうか…。

一番印象に残ったのは、オケの奏者の方が目にも止まらぬ速さや細かい動きで吹いたり弾いたり叩いたりしたのを初めて間近で見て聴いて、いつもとバランスの違う渦巻く音でした。

今までは外から見ていたのが、中から見ていた感じでライブの新しい楽しさを発見しました。