2017年06月17日[土]20:00@TOHOシネマズ 日本橋 Scr.7
『22年目の告白 ―私が殺人犯です―』


予告編を見た瞬間、実写版『デスノート』における
キラ生存ルートのアナザーストーリーだと直感しました(笑)



時効を迎えた残忍な連続殺人事件の犯人である
曽根崎雅人(藤原竜也)が手記を発表し、
その話題の波が担当だった刑事の牧村航(伊藤英明)や
遺族をも巻き込み、真意と思惑が幾度と無く交錯する中、
埋もれていた哀しき真実がミステリアスに
描かれ繰り広げられていくスピードサスペンスな物語。



韓国映画『殺人の告白』(2012年公開)のリメイクであり、
小説というよりもこの映画が原作にあたります。

日本版では事件設定を1995年としています。
これは改正刑事訴訟法(時効の廃止)が衆議院可決した
2010年4月27日から逆算されていて、
強盗殺人の公訴期限15年を引き算して1995年となります。
また、1995年は「阪神淡路大震災」や「地下鉄サリン事件」が
起きた年であり、この不穏な時代の空気感が
奇しくも伏線のひとつとなっています。


慌ただしく飛び込んでくる「阪神淡路大震災」のニュース。
そんな中、東京で起きた5件の連続殺人事件。



○事件1:足立区飲食店店主殺害事件(1995/1/4:時効)
 雨の夜、住宅地の定食屋の主人が縛られ、
 妻の目の前で絞殺される。

○事件2:世田谷区会社員殺害事件(1995/2/14:時効)
 団地の一室で、会社員、岸幸生が妻の目の前で絞殺される。
 当時5歳だった美晴(夏帆)は別室で閉じ込められていた。
 美晴は、事件後に牧村から勧められた読書にハマリ、
 趣味が高じて書店員になる。

○事件3:銀座ホステス殺害事件(1995/3/15:時効)
 銀座の高級クラブで、橘組組長、橘大祐(岩城滉一)
 の前で、彼の愛人が絞殺される。
 殺害された愛人の子、戸田丈(早乙女太一)は、
 橘の命を受け、サイン会会場で曾根崎を殺そうとする。

○事件4:練馬区病院長夫人殺害事件(1995/3/31:時効)
 小雨の夜、当時個人病院を開業していた
 山縣明寛(岩松了)の妻、一代が山縣の前で絞殺される。

○事件5:大田区警察官殺害事件(1995/4/27:時効)
 牧村の自宅アパートで、罠にハマった滝がロープに
 首を締められ、部屋に充満していたガスが爆発して殉職。
 本来、牧村を殺害するための仕掛けだった。
 震災で被災した妹の里香(石橋杏奈)は、
 結婚前提の交際中だった小野寺拓巳(野村周平)と
 一時的に牧村の家に居候していたが、
 事件当日から行方不明のままとなっている。



捜査本部が設置され、警察が全力で捜査に当たった一連の事件は、
ほとんど手がかりがないまま2010年に相次いで時効を迎えた。



そして2017年。

22年前の連続殺人事件の殺人犯が告白本を出版するため、
その会見を今から開くという情報が報じられる。

会見場に現れた「曾根崎雅人」と名乗る人物は、
警察の捜査やマスコミ報道の甘さを指摘していき、
殺人のルールを語り始める。



□第一のルール
 殺害の瞬間を被害者の家族、
 または被害者に近い者に目撃させること。

□第二のルール
 殺害方法は背後から縄によって首を締める絞殺による。

□第三のルール
 目撃者を決して殺さず、生かしておくこと。
 警察やマスコミへの被害の伝達者となってもらうため。



会見の最後に曾根崎はこう締めくくった。

 「はじめまして。私が殺人犯です。」

ネットやSNS全盛の現代要素も取り入れられていて、
PCやスマホの前の傍観者たちが、
殺人犯をスターへ祭り上げる様子は見事です。
マスコミはいつも通りですね。



告白本は一瞬で30万部の売り上げを記録し、
山縣への謝罪報道や出版記念サイン会で連日メディアを賑わし、
やがて報道番組「NEWS EYES」への生出演が決定する。



キャスターの仙堂俊雄(仲村トオル)は、
告白本には全てが書かれていないと厳しく切り込み、
独自に入手した「第6の殺人」の動画を曾根崎に突き付ける。



○事件6:牧村里香拉致殺害事件(1995/4/27-28:時効?)
 牧村のアパートから里香を拉致した犯人は、
 4/27-4/28の日付が変わる頃、里香を絞殺。



この事件への関与を否定し、自らの起こした事件は5件であり、
〝作品”として完結していると主張する曾根崎。

数日後に〝自分こそが真犯人である”と名乗り出る人物が現れ、
曾根崎雅人、牧村航との3者対談を実施するという条件で、
「NEWS EYES」の緊急特番が放送されることとなる。

---番組内で生まれる違和感とは?
---犯人の目的である自らの「鏡像」とは?


導入の煽り方とテンポの良さは見所で、
さらに中盤の展開が一気に加速していくところは、
まさに息つく暇もありません。

が。

終盤の冗長感は少し勿体ない気がします。
こういう犯人共感型で頭脳戦的な話は、
タネ明かしにじっくり時間を割く必要があるとはいえ、
肝心の背景がぼやけてしまっています。

△どういう心理で被害者は選出されたのか?
△なぜ曾根崎の体中に無数の傷があるのか?
△里香は最期まで何を訴え続けていたのか?

特に3つ目は、曾根崎の行動に直接影響するきっかけになるため、
はっきりと音声で表現してほしかったです(映像は無音のまま)
〝死にたがっていた”という割にはあまりにも必死な表情なので、
逆に死の間際で自分自身の本当の気持ちに
ようやく気付いたのかもしれませんね。

 〝死にたくない。拓巳くんと生きたい。”

それを曾根崎が読み取ったのだとしたら・・・切ないですね。。。

そんな曾根崎にも〝藤原芸”は健在で、前半でのクズっぷり、
後半での狂気に満ちた血糊顔と2度楽しめます(笑)

作中では効果音やBGMに不協和音が多く使われていて、
不気味さと緊張感をより一層引き立てています。

が。

真相が明かされる前にオペラは流しちゃダメ(汗)
記号的(極度に神経質で潔癖症な完璧主義者)な
悪役の御用達な楽曲の定番なのだから、
暗に〝この人が犯人です”って言っているようなものです。

あと。

ラストシーンで、とある人物が海外へ旅立つのですが、
小説版でその理由として、〝ほとぼりが冷めるのを待ちながら、
今後のことを少し考えたい”とシンプルに説明されています。
ただ、どこへ行ったかは明らかにされていません。


どんなに心穏やかな日々を過ごしていたとしても、
ひとたび震災や紛争が起これば、人の心は大きく変化し、
時には捻じ曲げられてしまうことを改めて見せつけられました。

  憎むべきは罪か?人か?
  罪だけを切り離して裁くことができるのか?
  それが無理だから人なのではないか?

どんでん返しを見せるだけではなく、
法制度も含めて何かと考えさせられる作品です。