2017年03月25日[土]21:00@ユーロスペース シアター1
『この世界の片隅に』


予定していた『PとJK』の舞台挨拶が落選したおかげで、
ようやく観に行くことができました(笑)



こちらの劇場では、いまだに1日複数回上映するほど、
この作品を猛プッシュしています。



コメントボードには素敵なコメントだらけ。






ただ、ポップコーンを売ってないのが唯一残念なところ(苦笑)


浦野すず(CV:のん)の故郷である広島市と
嫁ぎ先である呉市を舞台にして、
幼少期からの物語が私小説風に展開されていきます。


太平洋戦争という時代の最中、
ワクワクするような遊興も無ければ、
ドキドキするような恋愛もできない。


それでもせめて自分の周りにいる人達がみんな
笑って過ごせるようにと頑張っているも、どこか抜けている
すずの姿に自然と笑みがこぼれます。(≧▽≦;)アリャー


そんな何気ない毎日がノスタルジックな作風で綴られています。

 ・川を渡ってのお届け物
 ・人をさらう毛むくじゃらの怪物を退治
 ・祖父母の家での座敷童子との出会い
 ・家業である海苔作りの手伝い
 ・突然決まった嫁入りと戸惑いばかりの夫婦生活
 ・山の中腹にて眺める軍艦の入港風景
 ・配給制限による食事の試行錯誤
 ・希少な砂糖を求めてヤミ市へのお使い
 ・遊郭での白木リン(CV:岩井七世)との再会

戦争末期が近づくにつれ、空襲の頻度も増し、
のどかだった日常も戦火にさらされるようになり、
日付の間隔もどんどん短くなっていきます。


そして。

  誰よりも自分に心を開いてくれていた人・・・
  何よりも自分の心が夢中になれていた物・・・

すずは“右手”の先に繋がっていたそれらを一瞬で失います。
悔やんでも悔やみきれない、すずの心情を描写したシーンは、
とても重々しく刺さってきます。。。


一方で、この物語には、
「すずが選ばなかった」あるいは「選べなかった道」が、
他の登場人物という形ですずの前に現れるんです。


中でも印象的なのが、8月6日の広島への原爆投下での母娘。
爆発によるガラスや破片は、右側に位置していた母に刺さり、
すずとは逆の“左手”を繋いでいた小さな娘は奇跡的に生き延び、
この後にすずたちと出会うこととなります。


時には躊躇ったり、迷ったり、後悔したり・・・
でも選ばなかった道は未来がないんです。

 「過ぎた事、選ばんかった道、
  みな、覚めた夢とかわりやせんな。」

自分が本当に選びたかった道ではなくても、
自分の歩いている道が現実である以上、
自分はここで戦って生きていくしかない。


この物語の根底にある「覚めた夢」というテーマは、
『LA LA LAND』のラストと通じるものがあって、
奇しくも両作品が伝えたいことは同じで、

  過去に自分で選択した結果が現在の自分だと
  自覚することが幸せになるための第一歩

ということだと思います。


 「ありがとう。この世界の片隅に、
  うちを見つけてくれて。」

いつも大切な人が健在であり、
何気ない毎日の生活を平凡に送ることができることが、
どれだけかけがえのないことであるのか、
そのことへの感謝は忘れないようにしたいですね。


ま。

大切な人を見つけるのが先決なわけですけど。ヽ( ´ー`)ノフッ


ちなみに浦野家で祖母のイトが、
嫁入り前のすずにしていたアドバイスの内容が不思議でした。

  新婚初夜に婿から「傘を1本持ってきたか」と聞かれたら、
  「新なのを1本持ってきました」と答え、
  「差してもええかいの」と言われたら
  「はい」と答えるように

調べてみると、通過儀礼として新婚初夜に夫婦が交わす、
テンプレート的な「まくら言葉」だったようです。(*ノ▽ノ)イヤン