着慣れない浴衣の裾に、足が絡まり盛大に転んでしまった。
畳だったからそれほど痛くなかったが、久しぶりに転んだからか、自分でもびっくりした。
「チャンミンっ!」
ユノが直ぐに助けに来てくれ、
体を起こしてくれた。
「大丈夫…大丈夫!」
「痛い所は?」
「肘が…畳に擦れただけだから、大丈夫だよ。
びっくりさせてごめんね」
ユノに支えてもらい、立ち上がろうとした。
ん?
んん?
この違和感は…なに?
立ち上がろうとした時に、
背中に当たる物が…。
えっ!?まさか…
一瞬にして蘇る記憶…。
あの時と一緒だ。
電車の中で感じた違和感と
一緒。
でも違うのは、ユノだと言うこと。
ユノだから、逆に嫌な感情よりももっとこう…どう表現したらいいのかわからず、僕は固まってしまった。
「ごめん、チャンミン…」
ユノは僕が感じたことに、
気がついたんだろう。
そう言うとまた布団に戻り、
掛け布団をすっぽり被ってしまった。
「ユノ…」
ペットボトルを持って、
ユノの所に行く。
「ユノ…」
ユノは布団を被ったまま、
動かない。
「ユノ…ユノっ」
ユノを揺する。
「ごめん、チャンミン。
俺…。
嫌なこと思い出したんだろ。
ごめん、サイテーだ」
「ユノ…」
「チャンミンの可愛い寝顔見てたら、おかしな気持ちになっちゃって…ごめん」
「…」
やっぱりユノは僕のことを察したんだ。
嫌な気持ちより、むしろ察してくれて嬉しいし、有り難い。
サイテーなんて思ってもないし、
僕だって男だから、どんな気持ちの時にそうなるかわかる。
だから…嫌な気持ちなんて、これっぽっちもない。
「ユノ…」
僕はどこかで、いつかはこうなることはわかっていたと思う。
それがユノだから。
ユノとだから、何も嫌なんかじゃない。
僕はユノの掛け布団を少し捲り、
ユノをあやすように抱きしめた。