待ちに待った納車日を迎えた。
ユノは真剣に自動車販売店の方の説明を聞いている。
僕は少し大きめのボストンバックを床に置き、
いただいたコーヒーをショールームで飲んでいた。
今朝、自転車でユノの家まで行き、僕のボストンバックにユノの一泊分の荷物を入れ、慌ててタクシーを拾い、自転車販売店に来た。
息つく間もなく、バタバタとやってきたから、コーヒーが身に染みるほど美味しい。
車に乗って、どこか見晴らしのいいカフェでモーニングしようなんて言うから、朝ごはんも食べていない。
熱いコーヒーが胃に染み渡る気がした。
「チャンミン、お待たせ!」
「終わった?大丈夫そう?」
「うん!カタログを隅から隅まで読んだから、操作もだいたいわかってたし!」
そう、
ユノは昨晩、嬉しくて眠れなかったため、何度も何度も車のカタログを読んだそうだ。
だから、案の定寝坊して、朝、僕が行ってから起こしたんだ。
楽しみと言う割には、何にも支度してなくて。
ユノらしいといえばユノらしいけどね。
「ありがとうございました!」
数名の販売店の方々に見送られ、
僕たちは車に乗り出発した。
「ユノ、おめでとう~」
「ん?」
「納車、おめでとう!」
「お、おう!」
ユノは恥ずかしそうに笑った。
ハンドルを握る姿は、やっぱりカッコイイ。
羨ましくもある。
男なら車1台くらい持ってみたいものだ。
近いうちに、僕も免許を取ってみようかな。
でも、教官と1台の車の中にいることは、
今の僕には恐らくできない。
「チャンミン?」
「ん?あ、はい」
「助手席はチャンミンだけだからね?」
「え?」
「ははは…そんなセリフは古臭いかあ…あははは!」
ユノは僕が今考えていたことが
わかったのだろうか。
「長い髪が一本でも落ちていたら、
ぶっ飛ばしてやります」
一瞬びっくりした顔になったユノは、
そのあと、盛大に笑った。
僕はこの人が大好きなんだ。