劇照一家北京珍道中7 | 蛾衣の京劇衣箱

劇照一家北京珍道中7

レスリー・チャンの映画「さらば わが愛 覇王別姫」を観て衝撃を受け京劇の世界に足を踏み入れた私だが何時かはその時レスリーをメイクした宋小川師にメイクして貰うのが夢だった。しかし、どこの世界に素人の日本人(しかもオヤジ)にメイクしてくれる有名人が居るだろうか?だが、私の目の前にはその当人が居て丁寧に慎重にメイクをしてくれている。

宋先生3


それは幻でも無く夢でも無いことは目を開けると実感出来た。顔一面にドウランや粉白粉を着ける時に目を瞑る。そして合図があると目を開けるのだが目の前に宋小川師の真剣で厳しい眼差しがある。私の頬や顔に彼の手の温もりが伝わる。レスリーもこの温もりを感じていたのだろうか?レスリーと比べること自体恐れ多いことだが思わずにはいられない。


前記の小娘が2役こなす間も私のメイクは終わらない。目を瞑った私の意識が2度ほど飛んだのは秘密だ。(笑)それほど気分が良かったと推察頂きたい。美形とは言いがたい私を美しく仕上げるのに苦戦している宋先生。レスリーは元々綺麗な顔立ちだったとも先生は謙遜して言っていたがある意味真実だろう。そのレスリーをより美しく仕上げた腕も奮いがいが無かったでしょう。すいません。


でも、私は非常に満足していた。小娘の嫉妬を帯びた眼差し、中国青年の宋先生を見詰める尊敬と憧れの眼差し、それを受ける宋先生を私が独占していたのだから。そしてこの日の為に持参した衣装を身に着けるのも宋先生が手伝ってくれる。梅蘭芳師レプリカで作った虞姫の衣装。小娘が着ているお店のくたびれた衣装とは格が違うのだ。本当ならレスリーが着ていた衣装を再現したかったのだが資料が少なく断念したのだが今度北京に来たら宋先生の手助けを頂き再現出来る見通しも付いたことを付記しておく。

宋先生4


続いて鉄鏡公主の劇照。この衣装は京劇界最後の男旦と言われる温如華師のレプリカで映画でレスリーの声の吹き替えをした国家一級俳優である。その晩の夕食会の会話で宋先生も友人であることが判明。

やはり何かの因縁を感じずにはいられなかった。

宋先生2


そして最後はやっぱり楊貴妃でしょう!とばかりに梅蘭芳師の着ていた衣装を実際に作った劉店主さまに再現して頂いたレプリカの女蠎でフィナーレを飾った。そしてお手伝いを頂いた仲間と記念撮影、勿論宋先生も入って頂き2ショットもお願いしたところ快く引き受けて頂きまた感謝。もう、思い残すことは無い(笑)

2ショット


着替えを終えてメイクを落とす時も宋先生は親切に接してくれ最後まで気を使うところがお人柄の良さを表してますね。そしてお店のPCモニターで画像のチェックにも立ち会ってくれアドバイスを頂きプリントする画像を選んでくれました。単に上辺だけでは無く「これは表情も良いし目に力がある」などと選んだ理由を説明してくれるなど最後までお付き合い下さいました。(感謝)