『こんにちは。初めまして今日から働かせて頂くキリです。
 よろしくお願いします。じゃあ服を脱ぎましょうね。』
『・・・・・。』

返事がない。聞こえてるのだろうか?

『靴下から脱ぎますね』
『・・・・・。』

やっぱり反応がない。
靴下を脱がせる為にしゃがみこみ、
そっと彼女の顔を覗き込んだ。眼は開いていた。
今度は顔を見てこれでもかというくらい満面の笑顔で声を掛ける。
 
『お風呂に入るから靴下脱ぎましょうね。』

すると、ゆっくり顔をこちらに向けうっすらと笑みがこぼれた。
(よかった。聞こえたんや。)と少しほっとして靴下を脱がした。
次は上着だ。
寒い季節だったので、当然何枚も着ている。
まず、袖を抜くことにした。
だけど、麻痺はないのだろうか?
迷っていると、誰かが『この人麻痺ないからね。』と教えてくれる。
親切な人にお礼を言い、いざ開始!
しかし、彼女の服は思っていたより小さく、
なかなか身体に密着して離れてくれない。
しかもトレーナーの様な被り物。
背中はピッタリ車椅子にもたれている。
無知な私は、袖をひっぱって腕を抜こうとするが肘を曲げてくれないので抜けない。
諦めて今度は胴体から挑戦してみる。
当然、背中がういていないから前しか上がらない。
とうとう、無理やりやったもんだから頭の部分で止まってしまい、
お婆ちゃんは【ムンクの叫び】みたいな姿になってしまった。

(ひぇ~!)

まさしくこっちが叫びたくなった。