ICUは仕事中に何度か来たことがあった。


でも、仕事で来る時とは違った雰囲気のICUに少し戸惑った。


8室ある個室の一つは夫の為に準備されていた。


ここで夫は手術の為のルートの確保やその他の準備をする。


私とルイは一旦ICUを出て、家族控室で待つ義母と姉のもとへ向かった。


狭い控室には、夫の母と姉、姉の夫、祖母、叔父がいた。


一通り状況を説明し、これからの予定なども話した。


義姉は私よりも8歳年上の鬼小姑。


そんなくせ、いざという時はダメな女で、案の定、「具合が悪くなって倒れそうだ」と、言いだした。


義母も高血圧の持病がある為、あまり刺激を与えるような発言はできない。


こんな最中に、義母にまで倒れられたらたまったもんじゃ無い。


素人がわかるように、且つ、遠まわしに説明するのは一苦労だった。


10分もしないうちに、ICUのナースが呼びに来た。


「これから手術室へ向かいます。息子さんと奥さんは一度部屋に付き添ってください。それから一緒に手術室へ向かいます。他の御親戚は直接手術室待合へ行っていてください。」


私は義母に手術室までの行き方と、待合の場所を説明して、ICUへ入った。




麻酔科の若手医師が夫の傍らに立ち、呼吸バッグで酸素を送り込んでいた。


私とルイの来室を待っていた様子で、すぐに緊急用のエレベーターへ向かい、手術室へ向かった。



手術室の自動ドアが開く。


中には手術室のスタッフが数名、夫が来るのを待っていた。


「よろしくお願いします。」


私は頭を下げ、夫を見送った。