夫が手術室へ入ったのは2時少し過ぎだった。
私とルイは入り口の自動ドアが見える窓側の席に座った。
他の親類は、少し奥まった応接室に座っている。
窓の外をぼんやり眺めていた私は、朝のまま、白衣姿だった事に気付く。
「あ。着替えていなかった・・。」
独り言でそうつぶやくと、
「え?今まで気づかなかったの?」
と、ルイが苦笑している。
目まぐるしく変わる状況や状態、落ち着かない時間を過ごしていた私。
「ちょっと着替えて来るから。ルイはここで待っていてね。」
そう言い、猛ダッシュで更衣室へ向かった。
白衣のポケットに入れていた夫の携帯電話をバッグにしまう。
大急ぎで着替えを済ませ、一度院外へ出て、自分の実家へ電話をした。
家の電話を何度コールしても誰も出ない。
母の携帯に電話するも応答が無い。
時間も無かったので、再び走って手術室へ向かった。
息を整えてイスに座った時、スタッフの一人が私のもとへやって来た。
「あ、須藤さん。
旦那さん、今、頑張ってるから。
そのうえね、医者が部屋から溢れているんだよ!もの凄い数のドクターがオペに参加しているよ。ありえない事だよ!
部屋に入れない先生たちは、リカバリールームと麻酔科の医局のモニターで見てるよ。
だから、安心して!大丈夫!旦那さんは絶対助かるから!」
一方的にそう話すと、足早に手術室へ戻って行った。