理想家には程遠く、現実との乖離に疑念の色

北海道~東北~東京間の日本海側をつなぐ高圧直流送電(HVDC)の敷設と、関門連系線増強を目指す広域系統長期方針「マスタープラン」に対し、再考を求める声が上がっているようだ。電力広域的運営推進機関(広域機関)が昨年に策定したマスタープランは広域連系系統の増強により、増加傾向にある再生可能エネルギーの出力制御量の減少や他エリアからの電受給により緊急時の停電などを抑えることを目的として定められた。しかし、国の審議会などで再エネの出力制御の抑制量がわずかにとどまる点や費用便益評価による増強判断が正しくあるのかが疑問視されている。ただ、留意すべき点は、再エネ設備の増加に伴い、調整力が必要だという点だ。50年カーボンニュートラル実現に向けたビジネスの拡大はすさまじい。次世代技術の進歩も目覚ましく、とりわけペロブスカイト太陽電池などは経産省がFITで優遇する措置を閣議決定しており、普及拡大に追い風が吹く。この再エネ普及の列車を支えるのは基幹系統ではないか。いずれにしても、工事費用は「全国調整スキーム」に基づき、再エネ賦課金や託送料金で回収される。国民の負担は増えるわけなので、官民が納得するエネルギー政策を進めるべきだ。