俺は今日の日を待っていた、、
呼び鈴を鳴らして娘の名を呼んだら「どうしたの?」とドアの向こうで小さく声がした、、

退院して旦那のもとに帰って来たんだ、それも、息がしっかり吸える完全無敵の体に変身してね、、

まるでタイムスリップしてるようだ、入院する二週間前の、このアパートの玄関先に、
こうしてまた三人でいることが、不思議に懐かしくて、くすぐったい、、

まだ、お粥しか食べられない娘の体を気遣い、ポタージュスープや茶碗蒸しを作って入れた容器を、
「これがこうでね・・」と説明してる女房の仕草は実に微笑ましい、

心配+キャラメルプリンぐらいしか用意できない俺と違い、
その機転の良さと優しさは、まさに母親そのものだ、、
だから、さっき駅前で、迎えが遅いイライラの訳がこれだと聞いて、一転、急がせて悪かったね
と謝った俺が悲しかった、、

隣町という、子離れ親離れできない距離が、ありがたい訳だが、
嫁に出す前より娘を気にしてる自分が、いまさらだけど残念無念である、、

「喉のカサブタが自然に取れるまで気をつけろよ」と言った俺は思いだした、気を付けるのは俺の方だってことを、、

兄弟の無い娘の幸せを願うなら、健康に気を付けて、嫌がられるほど元気で長生きしてやるぜ、
と開眼した俺は、絶対正しいに決まってる、、

さあ、これで、それぞれが、いつもの淡々とした生活に戻って行くんだ、、
何も無かったかのように、それが懐かしい思い出になりながら、、

何も言わず、車の窓越しに伸ばした握手の娘の手が、少し冷たかった・・・。