自分に正直になることは意外と大変だ、、

例えば自分を殺し、嫌な相手と巧くやっていこうと、すればするほど辛くなる、、

運悪く、もう一人の自分が、また出てきたもんだから、一睡もできなかったと思うくらい相手を許せない感情に
縛られ苦しんだ、、

またかという感じで、とうとう最大の理解者である女房に「性格だからしょうがないね」と、
いとも簡単に冷たく突き放された俺は、歳を重ね、角だけじゃ無く、
心棒まで取れた訳では無いだろかと、自分を疑ってみた、、

「やりたいこと見つけたよ、真っ直ぐ生きられるよ!」は錯覚で、
「やりたいこと見つけたよ、だから真っ直ぐ生きたいよ」が正しい、、

そもそも、自己顕示欲が強いくせに、控えめな、おりこうさんを演じる大根役者だった、
自分勝手に、こうでなくてはいけないと、思い込んでるから、相手がそれをしない行為に腹が立つ、

悲しいかな、相手が嫌がってるかも知れないのに、人格者だと思い込むが故に、良いところを懸命に探そうとする、お人好しが招いたことに気が付いた、、  そう、ストーカーみたいに、、

それで、ついに、自分の凛とした心の中で、「やっぱり嫌いです」とキッパリ伝えることができ、巧くやっていけなくてもいいと宣言できた瞬間、、ガクガクと体全体の力が抜けて、あーっ助かったと安堵した、、


にわかに良い気分の晩酌で、ほろ酔いの俺だが、見逃さなかった、、電気を消した隣の部屋の間に30センチ程の板張りがある、

その真ん中あたりに、女房がひどく嫌いな、平べったい黒光した奴がススッと止まった、、細長い二本の触覚をユラリ、ユラリと交互に揺らしてる、、、

こいつを今、仕損じたら、いつかまた辛い自分が襲って来るような気がした俺は、、

一旦、左手を付き体重を乗せた、そして静かに、にじり寄った、、まだ動かない、、その一点だけを睨み、そーっと腕を振り上げた、、よし!一気にいった! バタン!

指先のしびれと同時に俺の手のひらの下で、ゴキブリの白い腸が飛び散った、、


次の日の朝、バスに遅れて駅に向かう車の中、娘が、術後の経過を診てもらうため、
東京へ行く話しを聞いたりした、、

「人生、いろんなことあるよなぁ」

「そうだね」

「だから、面白いんだよ」

「、、そうゆう努ちゃんが、面白い、」


、、「えっ」と運転する女房の横顔をみた・・・。