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もし海外旅行中にご自分のパスポートが損傷、破れたら、どうされますか?

まずはネットで扱いをどうすればいいか、調べますよね。

でも、再発行の手続きにどんな書類が必要か?

手元に必要書類がなかったら?

そこが、アジアの小さな国だったら?

子どもたちだけの旅だったら?

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と、言ったら、だんだん不安になっちゃいますよね。

 

今回は、長男トムの高校2年生の時の麻布生アジア2人旅のお話です。

 

長男トムが中学3年生の時に初めて海外を一人旅した先が、インドとシンガポールでした。「海外渡航先、まずはインドから⁈」(2021/09/04)でもお話ししたように、度胸があるというか、向こう見ずな性格なのか、海外に行くことに喜びを覚えたようで、それ以降長期休暇にはアジアのどこかに出向くようになりました。

 

高校2年生の夏、来年大学受験を控えて最後の旅行を、ということで、麻布の同級生と2人でベトナム、カンボジア、マレーシアという旅を企画することとなりました。そもそも3回目の海外旅行で、この3か国を選ぶとは、不思議な子です。おまけに一緒にゆくお友だちは家族旅行以外で海外に一人で行ったことがない子でした。一緒に行く友だちのお母さまからもくれぐれもよろしくお願いします、とご丁寧なメールをいただいたのですが、私も同行する訳ではないので、責任の所在をどのように考えれば良いのか迷いながらも、何とも心苦しい返事をさせていただいたことを覚えています。まあ、子どもたちを信じて送り出すわけですが、オトコ親特有の無神経に「何とかなるだろう」と。

 

ベトナムへの航路は、たしか香港経由のトランジット便だったと思います。この時に長男トムの狙いはとにかく格安航空券を買って、飛行機を乗り継いでゆくことが、ある意味マイブームだったようです。航空会社の信用度とか安全性とか、全く考えていなかったわけではないのでしょうが、「そんなルートがあったのか」とか「そんなに長くトランジットで待つのか」など、普通の旅行では成しえないスケジュールを組み、飛んで行く旅を企画していました。(最低限度の安全性を担保するように旅行代理店の人にはチェックのお願いを、私からお願いしておきました)

 

さて、早速ベトナムに到着した日のことをお伝えします。

なんと旅の初日になんとその事件が発生しました。

 

毎回海外の旅では、現地でスマホを安い費用で利用する為に、現地でSIMカードを購入するようにしていました。カウンターでSIMの申込みをする際に、身分証明の確保の為にパスポートのコピーを求められたそうです。求められたとおりパスポートを出してしばらくして、スタッフの人がバツ悪そうな顔をして帰ってきました。そのバツ悪そうな顔の原因は、彼のパスポートの「査証欄」が破れてしまったことにありました。どうやらコピー機の蓋に引っ掛けてしまった、ということ。とりあえずその時は「まあ、しょうがないか」ということで、破れたパスポートを受け取ってホテルに向かいました。チェックインをしようとしたそのときでした。

「このパスポートは有効性がないです。幸い顔写真やその他の個人情報のページは損傷がないので、チェックインはできますが、国境を越える際には有効扱いになりません」と、ホテルのフロントの人に言われました。

最初は「そうなんだ」と、思ったようですが、ホテルの部屋に入っていろいろと調べ出したら、旅行代理店のホームページに、

「(パスポートが)損傷していたり、ページが破れているパスポートは軽微なものでも損傷旅券と判断され、ビザ申請が受理されなかったり、入国を拒否される場合がございます。このような場合、日本国籍の方は各都道府県の旅券窓口に、外国籍の方は自国の大使館・領事館にお申し出の上、旅券を返納し、新規発給申請の手続きを行ってください」

と、しっかり書いてあるではありませんか。

 

ここで初めて事の重大さに気づき、高校生2人はあたふたとすることとなります。

 

突然、日本にいる私の携帯が鳴り、知らない携帯電話番号(多分、海外から発信された番号と思われる)からの電話を受けることとなりました。

「あのー、今ホーチミンなんだけど・・・」

「おー、トムか。無事に着いたの?」と、能天気に私が答えました。

「あのさー、ちょっとまずいことになったんだよね」

「どうしたの?」

「パスポートのページが破れちゃったの。SIMカードを買うときにコピー機で破れちゃったんだ」

「そう、しょうがないね。セロテープか何かで貼ったらダメなの?」と、再び能天気な回答を。

「それがねぇ、このパスポートが無効扱いで、すぐに日本に戻らなきゃいけないみたいなんだ。いろいろな外務省のホームページを見てみるとそう書いてある」と、いつもは淡々としているトムの声も、少々不安げな声になってきていました。

「えっ、そうなの?」と、初めて事の重大さをその時に悟り、自分でもHPをいろいろと検索をはじめました。

「とりあえず、明日ホーチミンの日本領事館に行ってみるけど・・・」と、トムが言いました。

「わかった、まずは日本でも聞いてみるようにするよ」と、その時は勇気づけるような口調で電話を切りました。もっとも私も経験したことのないトラブルです。さて、どうすればいいのか・・・。

 

私も海外出張への機会も多く、パスポートの取扱いについてはある程度理解していたつもりでした。かつて同行者がパスポートを紛失して、日本大使館に同行して、対応する方法に関して経験はありました。でも、パスポートの査証ページが破れて、の対応に関しては経験がありませんでした。よくよく考えれば偽造防止の観点から些細なことでも大事に取られるパスポート、そんな甘くはないということですね。

 

翌日、高校生2人でホーチミンの日本領事館に出向き、事情を説明したそうです。

領事館の担当者は、

「旅券の再発行が必要になる要件となっているので、再発行処理をしなければいけません。旅券の再発行は日本大使館で行うの、領事館で申請書、必要書類、写真等を提出・申請をしてください。あとはこのまま帰国をするかの選択になります」

とのことでした。

「ちなみに申請をしてから新しい旅券を受け取るまで、どのくらいの日数がかかるのでしょうか?」と重ねてトムが質問すると

「だいたい1週間くらいです。ハノイまで書類等を送って、返ってくるまでの時間です」と、極めて事務的な回答でした。

その場は、丁寧に領事館の方にお礼を伝えて、もう一度方策を考えることにしたそうです。

 

実は、ベトナム・ホーチミンには2泊3日の予定で、次の目的地はカンボジア・プノンペンでした。次の目的地に向かうまで1日しか猶予がありません。1週間この地に滞在するしか、帰国するかのいずれかしか方法はないのですが、幸い夏休みだったので、滞在を伸ばすことは可能でした。しかし、残りのフライトチケットがすべて格安航空券で組まれていて、キャンセル不可のものでした。できれば、予定どおり次の目的に移動はしたい気持ちもありました。

 

そこでくよくよしてもしょうがない、と思ったのか、トムとその友だちは、残り1日ホーチミンの街中を探索して美味しいものをまずは食べてその後の方策を考える、ことにしたそうです。よくまあ、この局面で美味しいものを食べる余裕があったものかと呆れるというか、度胸が座ってるというのか、わが子ながら感心してしまいました。

 

ホーチミンの領事館でのやり取りについて、私に電話をかけてきました。

「領事館で本当に対応できないの?」としか、私は返事ができませんでした。

大使館と領事館では対応できる範囲が限られている、ということをそこで初めて知りました。

 

海外で高校生2人がこうしたトラブルに合ってしまったことはしょうがないのですが、まずはできることを確認して、できることがなければ、残りの時間を有効に使う⁈というところは、何とも大人勝りの部分があるのが、麻布生です。一緒に帯同していた友だちもえらい目に逢ったと思ったと思うんですが、その友だちは一生懸命サポートをしてくれたそうです。

 

その後、どうなったのか?当の本人はどんな気持ちだったか?

帰国後に聞くことになるのですが、この続きは<後編>でお話ししたいと思います。

さてさて、アジアの地で麻布生2人はどうなるのでしょう。