施設では、食卓に座ると食事が運ばれてくる。
お風呂は危険のないように、責任を持って洗ってもらえる。
だから
生活をすることを、何も考えなくなる。
99歳がお一人暮らしでがんばっておられるかたがいる。
「横を向こうと顔を横に向けます。
体を横に向けます。
が、足が横を向こうとしてくれないんですよ。」
「あのゆるい坂をお花屋さんまで行こうと
シルバーカーを押して歩き始めたのですが
前に進もうとしても
車ごとゆるゆる後ろに下がっていくんです。」
私の頭の中に、吉本新喜劇に出てくるおばあさんが現れ、
吹き出しそうになる自分を一生懸命に抑えた。
感心したのは、彼女が一番不安に思っていることを
笑顔で堂々と表現できるということ。
いつか「終わり」が来るということを
人に話せるということ。
一生懸命生きたら、何もこわくないのかなと
思ってしまう。
もちろん、彼女を様子観察し
困ったときは、両手を差し出すのが我々のお仕事。
本人的には、延々と喘ぎながらマラソンし続けているように
「生きていること」は、大変なことなんだろうけれど、
出来うれば、彼女のように最後まで
自分の家で自分の判断で生きて
「ああ、がんばったな。」と目を閉じることができたら
幸せやろなと思う。