私を見ると車いすの彼は、自分の部屋の方を指さし
 
部屋に連れて帰れと暗黙のうちに訴えます。
 
「ごめんなさい。いそいでいるので、ちょっと待ってください。
 
もう10分したら、きれいなおねえさんが来ることになっています。
 
もう10分待ってくださいね。」
 
彼は、頭をコクンとうなづきました。
 
しかし、数分後、彼は、テーブルをドンドンと叩いて
 
私に再び意思表示をします。
 
「あと5分ですよ。5分したら、きれいなきれいなおねえさんが来ますからね。
 
もうちょっとですよ。きれいなおねえさんが来ますよ。」
 
彼は、ゆっくりうなづきました。
 
 
 
2時間後
 
大柄な後輩が、私の方に駆けつけてきて、顔を覗きこむようにして尋ねました。
 
「今度は、何をしたんですか?
 
・・・・さんが、私の顔を見た途端、吹き出しました。
 
いったい、なんて言ったのですか?
 
急に吹き出したので、心配しました。」
 
 
私は、ふきだした彼を想像して、笑いが止まらなくなりました。
 
一日中、全く会話もしない彼がふきだしたなんて
 
なんど思い出しても嬉しくなります。
 
なんどもその光景を想像しては、にやけています。
 
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