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彦星様

拝啓

天の川にも多数の衛星が飛び交う今日この頃

ここ数年間、天候不順状態で、当分貴方様にお会いすることが出来ませんが、

その後、如何おすごしでしょうか。

 こんなことを申し上げては、貴方様に嫌われるかもしれませんが、織姫は、最近物忘れが激しくなり、

彦星様のお顔がどんなお顔をしていたか、どんなお声だったかはっきり思い出せません。

 その間、織姫は貴方様のことをお慕いしながら、ただ黙々と織物の製作に集中いたしておりました。

その織物の量たるや、相当の物になってしまいました。地球の惑星である月の倉庫は、もう一杯になり

織り上げた品物も微妙に時代遅れの物のような噂話を耳にし、少々ブルーな気分で最近立ち上がれずじま

いでした。

 そんなとき、天の川の浅瀬に、地球というちっぽけな星から打ち上げられた衛星からこぼれおちた「パ

ソコン」という奇妙な物体が流れ着き、ちょっと隙をみて拝借いたしました。(こんなことを父上でもし

れたらどんなお叱りを受けるかわかったものではありません。どうかご内密に願います。姫の一生のお願

いでございます。)

 気合を入れて祈るとその機械のふたにきれいな絵や字が見えるようになりました。パソコンは、どんな

に凝った織物より勝り、姫は楽しくて仕方がありません。

 ただいま、星の王子様というかたとメールのやり取りも出来るようになりました。

そこで本当に申し訳ないのですが、姫のことは、もうお忘れください。

 天候不順で、次はいつ会えるかわからない状況は、もう姫は耐えられません。

地球の星の人たちからは、「織姫はいったい何歳なんや。」と言われるほどに、この二人のたった一年に

一度の逢瀬を地球を巻き込んで続けることは、心苦しいものがあります。

 姫は、疲れました。ちょっとの間、自由でいさせてくださいまし。

 彦星様に素敵な出会いがありますように天の川の向こうからお祈りいたしております。

                                           かしこ


彦星様

                                            織姫