日曜日に国展の絵をたっぷり見て思ったのが....


この大量の絵画は一体この先どうなるのか?ということです。


展示されてる400点余りの力作。


この後作家の元に帰り、おそらくちゃんと常設展示してもらえる作品なんて


ほんの数えるほどだと思います。


日本には大作を飾る場所なんてほんとに限られています。


どうも、日本ではアーティストを育成する大学は多くあるのに


そのアーティストが産み出し続ける作品を消費するマーケットがありません。


だから、作家は他の仕事をしながら自己満足的に絵を発表し続けるしかない。


そんな思いを代弁してくれている論説を見つけました。


日本の美術業界についての山本冬彦氏の論説をご紹介します。

私も山本氏の意見と全く同意見です。

ご興味のある方はご一読ください。

美術界をどう生きていくか【2】

作成: 山本冬彦 日時: 2011年8月24日 10:23 ·

● 構造不況業種の中で芸術家はどう生きるか

  美術界を一つの市場と考えた場合、作家は生産者、画廊が販売者、購入者が消費者ということになりますが、生産者である作家やその予備軍は美大から毎年続々 と量産されます。一方消費者である購入者については、大口ユーザーである美術館や企業はあまり購入できなくなっていますし、個人ユーザーは誰も育成してい ません。一部に活況を呈している現代アートの購入者は、アートが好きというより投機の対象として見ている人が多いことは前にも述べてきました。したがっ て、アート市場というのは膨大な生産者がいる一方、消費者はごく少数しかいないという意味で異常なほどの生産過剰体制にあり、構造不況業種といっていい状 況なのです。これを解消するには生産者を減らすか、消費者を増やすしかないのですが、当面美大はなくなりませんし、購入者が増えるとも思われませんので、 構造不況の状態が今後も続くものと思われます。

従って、「芸術家コース」や「芸術起業家・アートタレントコース」を選ぶ人にとっては受難の 時代が今後とも続くことを覚悟した方がいいと思いますが、その中で芸術家の道を選んだ人はどのような生き方をすべきかについて書いておきたいと思います。 まず「芸術家コース」を選んだ人は昔の芸術家と同様、「絵は売れないもの、作家は食っていけないもの」という前提で、いかにして作家として生きていくか、 好きな絵を一生描いていくにはどうすれば良いかを考えておく必要があると思います。時代やユーザーに迎合せず自分の求める芸術作品を作り、生前理解されな くてもいつかは評価されるという覚悟が必要になります。しかし、芸術家といっても霞を食って生きていくことはできないのですから、支援者やパトロンを見つ ける、定職を持った人を配偶者に選ぶなど、生計を立てる手立てを別途持つことをを考えるか、さもなくばどこかで野垂れ死にするかもしれないという覚悟を持 つとか、それぞれの生き様を考えておくべきだと思います。

一方、「芸術起業家・アートタレントコース」を選ぶ人は、生きているうちに評価や 人気が出ないと意味がない訳で、普通のビジネスマンや起業家と同様に戦略を立て戦術を練る必要があります。今流行のいわゆる現代アート系の作品を描くと か、公募展やアートフェアへ積極的に参加するとか、とにかくマスコミに出て名前を売るとなどのマーケティング戦略や広報作戦が必要になります。また、自分 をアピールするプレゼン能力やコミュニケーション力を持つこと、学芸員・評論家・有力コレクターとの人脈構築、それにきめ細かなファンサービスも必要にな ります。

いずれにしてもプロの「芸術家」と呼ばれるのは、「芸術家コース」を選んだ中で長期的に生き残った数少ない作家と、「芸術起業家・ アートタレントコース」として戦略的な生き方で人気作家として成功者した一握りの人だけなのだと思います。芸術家として生きていくには現実の苦労は覚悟し なければいけませんし、芸術起業家として生き残るにはアート以外の才能と努力が必要になります。ところが大半の作家は、「芸術起業家・アートタレントコー ス」の成功者などは真の芸術家ではないと言って軽蔑したような態度をとるくせに、実は自分もなりたいがなれなかったという「やっかみやひがみ」に過ぎない ことが多いと思います。そのくせ、どこかで野垂れ死にしても良いような「芸術家コース」としての覚悟で制作しているかというとそうでもなくて、その中間で 漂っているような人が多いのです。(このような人たちは大企業のトップや起業家として成功した人に対する、平凡なサラリーマンといったところでしょう か?)昔ならば、このような人は自分の才能に限界を感じたり、世間の目もあって早々にプロの芸術家の世界から退場したと思います。しかし、最近は幸か不幸 かバイトやフリーターをやりながらこの世界にモラトリアム的に留まっている人が大量に存在し、そのことが構造不況の状況をますます悪くしている原因になっ ています。