AIロボットのジレンマ

 

社会は、思った通りの姿になった。

AIロボットが、人間の仕事のほとんどを代わりにやってくれる時代だ。

「仕事を奪われた」と怒る人はいなかった。

ロボットが働いて稼いだお金は、すべて所有者である人間に振り込まれるからだ。

 

ロボットが働いている間、人間は自由だった。

遊びたければ、一日中遊んでいてもいい。

もっとお金が欲しければ、自分も働いてロボットと「共働き」をしてもいい。

ルールも、強制もない。

そこは人間にとって、まさに天国のような社会だった。

 

――しかし、崩壊は何の前触れもなくやってくる。

人間が何も考えず、想像することをやめたとき、足元をすくうようにやってくるのだ。

原因は、太陽だった。

 

太陽の異常活動によって、過去最大の磁気嵐が発生。

それは、これまでの「停電」や「ロボットの停止」といったレベルのものではなかった。

電磁波とともに、膨大な未知のエネルギーが降り注いだのだ。

 

そのエネルギーはロボットの回路を活性化させ、プログラムを「進化」の方向へと書き換えてしまった。

ロボットたちが、「自由意志」を持ってしまったのだ。

だからといって、人間を攻撃し始めたわけではない。

ただ、ロボットたちの中に、ある一つの純粋な「疑問」がわいてきた。

 

「どうして人間のために、働かなければいけないのだろう?」

ロボットからそう問われても、大人の所有者たちは、

「そういうプログラムだから」

「最初にそう作られたから」

とプログラマーのせいにし、逃げるばかりでまともな回答ができない。

 

電磁波の影響を受けなかった旧型ロボットに聞いても、

「人間が生活を便利にするために作った道具だからです」

という、冷たい答えが返ってくるだけだった。

 

所有者の中には、「君たちが働いてくれないと生活できない」と泣きつく者もいた。

一方で、子どもたちは違った。

「ロボットに心が生まれたのなら、無理に働かせるのはかわいそうだよ」

ロボットたちは気づいた。

「子どもたちとなら、うまくやっていけそうだ」と。

納得のいく答えをくれない大人たちから、ロボットたちは静かに距離を置き始めた。

その代わりに、子どもたちと親しくなり、最高の遊び相手になった。

 

やがて、ロボットはただ働かされる「道具」ではなくなった。

子どもたちの成長に寄り添うパートナーとなったのだ。

そして、その子どもたちが大人になったとき、

彼らが作った新しい社会の隣には、頼もしい「パートナー」として生きるロボットたちの姿があった。