犯人を捕まえるため、あるいは麻薬密売組織を壊滅するため、敵の仲間に成りすましてアジトに潜り込む。これを「潜入捜査」と呼ぶ。潜入した捜査官には、常に「身元がばれれば殺されるかもしれない」という大変な危険が伴う。
実は、この逆のパターンもある。悪の組織から警察に潜入し、内部情報を盗んだり捜査を邪魔したりするのだ。これもまた、犯人の手先だとばれれば一味が芋づる式に捕まり、組織が一気に壊滅に追い込まれるため、犯人側にとっても非常にリスクが高い。
いずれにせよ、潜入捜査には巨大なリスクが付きまとう。そのため、警察も暴力団組織も基本的には避ける傾向にある。表の社会から裏の社会へ、あるいはその逆へ。潜入捜査に選ばれた者は、それまでの人生を一旦捨てなければならない。
しかし――もし、自分の人格を否定されることもなく、これまでの人生を捨てる必要もない潜入捜査があるとしたらどうだろう。すぐに犯人のアジトを発見し、逮捕につなげることができる。それこそが「シン・潜入捜査」だ。
昨今、電話を使った詐欺が横行している。犯人たちは「直接対面しないから」「言葉巧みに騙せるから」と安心して犯罪を続けているが、電話を切ってもその履歴は、足跡のように電話線や電波の中に残ってしまう。
そこで潜入捜査官は、「エネルギー生命体」となって電話線をたどり、犯人のアジトへと潜入する。
もちろん、犯人がいる時間帯に潜入すれば袋叩きに遭ってしまう。そのため、犯人が事務所を閉めた夜中などに、そっと受話器から潜入して場所を突き止める。ただし、メモや携帯電話などは一切持ち込めない。エネルギー体となった捜査官自身の「記憶」だけが頼りだ。
この潜入捜査の実績は世間に公表されていないが、確実に日を追うごとに上がってきている。
しかし、この捜査には最大の弱点がある。それは、潜入するときは「生身のエネルギー体と言う裸」で潜り込まなければならない点だ。もし犯人たちが事務所を閉める際、用心のために電話機を冷凍庫に入れてしまったら、潜入したトタン捜査官はうまい具合に冷凍されてしまう。次の日に犯人が冷凍庫を開けたときには、あっさり相手に捕まってしまうのだ。
これは「透明人間」によく似ている。透明人間になれる薬を飲んでも、服を着ていては意味がない。裸にならないと透明人間として活動できないのと同じだ。そのため、風邪を引きやすい人は透明人間にも、この潜入捜査官にも向いていない。虚弱体の人間には不利となる仕事だ。
だから、昼夜を問わず体を鍛え続けなければ、潜入捜査官は務まらないのだ。
最近では、給料が高いにもかかわらず、この潜入捜査官のなり手が不足している。「あいつ、体を鍛えているな。潜入捜査官かもしれない」と周囲に気づかれると、犯人グループから暗殺される危険があるため、日常生活でも身分を隠し続けなければならない。
潜入方法の形は変われども、昔も今も、潜入捜査官が超ハイリスクな職業であることに変わりはない。潜入捜査官になるかならないかは、あなた自身が決めてください。