「デジタル遺言」は、パソコンやスマートフォンを使って遺言書を作成・管理できる、新しい遺言の仕組みのことです。
日本では長年「遺言書は手書きで紙に残すもの」とされてきましたが、時代の変化に合わせて法律や仕組みの大改革が急速に進んでいます。
現在、この言葉には「国の法改正による公的なデジタル遺言制度」と「民間企業が提供するサービス」の2つの意味があります。それぞれ詳しく解説します。
1. 国が進める「公的なデジタル遺言制度」
法的な効力を持つデジタル遺言です。従来の「手書きが大変」「紛失や改ざんが心配」といったデメリットを解消するため、2025年から2026年にかけて大きな動きが起きています。
① デジタル公正証書遺言
公証役場の公証人という専門家に作成してもらう「公正証書遺言」の手続きがデジタル化され、2025年10月から全国でスタートしています。
特徴は、 自宅にいながらWeb会議システムを使って公証人と面談し、マイナンバーカードによる電子署名などを行うことで、公証役場へ行かずに遺言を作成・電子保存できるようになりました。
② 新たなデジタル遺言「保管証書遺言」
2026年4月、自筆証書遺言のデジタル版とも言える「保管証書遺言」を新設する民法改正案が閣議決定されました。
これは、手書き不要で、 パソコンやスマホで遺言データを作成できます。また、押印も廃止され、 これまで必須だった「印鑑」が不要になります。そして、完成したデータはオンラインで法務局に保管されます。
なりすまし防止として、 偽造や脅迫を防ぐため、作成時に法務局の担当者に向けて、遺言の全文を自ら読み上げることが要件となる見込みです。実際に私たちがスマホやPCでこの制度を使えるようになるには、国会審議を経て施行されるまで、数年以内ともうしばらく時間がかかります。
2. 民間企業が提供する「デジタル遺言サービス」
アプリやWEBサイト上で、自分の死後にメッセージや情報を残せる民間サービスです。スマホで動画やメッセージを遺したり、銀行口座やSNSのアカウント情報(いわゆるデジタル遺品・デジタル資産)のリストを記録したりできます。
注意点として、 誰でも手軽に利用できますが、これら単体では法律上の「遺言書」としての効力(財産を誰に譲るかといった強制力)はありません。 あくまで「デジタル版のエンディングノート」として、残された家族へのメッセージや備忘録として使うものになります。
最後に、メリットと今後の注意点を記載します。まず、最大のメリットは、何より「手書き」の労力から解放されることです。財産が多い方でもパソコンでサクサク作成・修正ができるようになり、法務局や公証役場にデータが安全に保管されるため、紛失や親族による改ざんのリスクがほぼゼロになります。
注意すべきポイントは、便利になる一方で、本人の「認知能力」がより厳格にチェックされるようになります。たとえば新制度の「保管証書遺言」では、担当者の前で全文を読み上げる必要があるため、認知症などが進行して会話や音読が難しくなると、デジタル遺言制度自体が利用できなくなる恐れがあります。そのため、「元気なうちに早めに準備する」ことがこれまで以上に重要になります。