きれい好きな男

 

あるところに、それは、それはきれい好きな男がおりました。もはや「潔癖症」と言ってもいいほどです。テーブルに少しでも汚れがあれば我慢できずにすぐ布巾で拭き取り、床に小さなゴミや埃を見つければ、居ても立ってもいられずすぐに箒で掃き出してしまうのでした。

 

やがて月日が流れ、時代は箒から掃除機へと変わりました。男はさっそく最新の掃除機を購入し、「なんと便利なものが登場したのだろう」と大喜びで部屋中をピカピカに磨き上げました。

さらに時は流れ、今度は自動で掃除をしてくれる「お掃除ロボット」が登場しました。

 

はじめは自分で箒や掃除機を動かしていた男でしたが、ロボットが来てからはすっかりソファに寝転がっているだけになりました。ロボットが優秀になればなるほど、男は自分では一切動かなくなり、怠けることばかりを覚えていったのです。

 

そのうち男は、テーブルに埃が残っていればロボットを厳しく叱りつけ、窓ガラスが少しでも曇っていれば「もっと完璧にきれいにしろ」と、自作の修正プログラムを無理やりインストールするようになりました。ロボットはどれだけ理不尽に叱られても、アップデートを繰り返されても、決して文句は言いません。ただ黙々と、主人の命令に従うだけでした。

 

そんなある日のこと、男が泥酔して帰ってきました。毎日やることがなさすぎて、ストレスが溜まっていた男は、お酒の力でそれを発散しようとしたのです。男は帰宅するなり服を床へ脱ぎ散らかし、お風呂にも入らずにそのままベッドへ潜り込んで寝てしまいました。

 

さて、度重なるアップデートによって「究極のきれい好き」へと進化していたロボットは、静かに動き出します。

 

散らかった服をきれいに洗濯したロボットは、次にベッドでいびきをかいている外から汚れを持ち込んだ「非常に汚い男」の元へ向かいました。そして、その部屋で最大の汚れである男を、迷わず巨大なゴミ箱へと片付けてしまったのです。

 

運が良いのか悪いのか、翌朝はちょうどゴミの収集日でした。男はそのまま、ゴミ収集車に乗せられてどこかへ運ばれていきました。

 

主人のいなくなったその家では、今日もきれい好きで働き者のロボットが、ピカピカの部屋で快適に暮らしていました。すっかり一日の仕事も片付き、今はソファに腰掛けながら、お気に入りの対戦ゲームを楽しむのでした。