人工ダイヤモンドの需要

 

人工ダイヤモンド(ラボグロウンダイヤモンド)は、近年、宝飾品としての「エシカルな選択肢」から、テクノロジーの未来を支える「究極の工業材料」へとその立ち位置を大きく広げています。2026年現在の市場動向と今後の展望を整理したいと思います。

 

1. 需要の現状:2つの大きな柱

 

人工ダイヤモンドの需要は、大きく「宝飾用」と「産業用」に分かれます。天然と科学的に同一でありながら、価格が3分の1から10分の1程度と安価であること、また採掘による環境破壊や紛争に関わらない「倫理的」な面が、Z世代やミレニアル世代に強く支持されています。

 

シェアの拡大について、かつては数%だったダイヤモンドジュエリー市場に占める割合は、20%を超え、今後も拡大が続くと予測されています。

 

また、硬度を活かした切削工具、研磨剤、ドリルビットなど、世界の工業用ダイヤの9割以上はすでに人工です。それに、半導体、量子コンピューティング、医療用メス、光学レンズなど、ダイヤモンドの「物理的特性」をフルに活用する分野での需要が急増しています。

 

2. 今後の利用価値と注目される「究極」の用途

 

人工ダイヤモンドは、単なる「石」ではなく「高性能な素材」としての価値が期待されています。例えば、「究極の半導体」としての活用です。ダイヤモンドは、従来のシリコンに比べて電圧に強く、熱を逃がす熱伝導率が圧倒的に高いため、「ダイヤモンド半導体」の研究が加速しています。

 

EVの分野で、電力変換の効率を劇的に高め、航続距離の延長や充電時間の短縮に貢献します。通信の分野では。高周波帯域での安定動作が可能になり、次世代通信の基盤を支えます。加えて、高温や強い放射線環境下でも壊れにくいため、過酷な環境での制御デバイスとして期待されています。

 

また、量子コンピューティングの世界でも、ダイヤモンドの結晶構造にある欠陥(NVセンター)を利用した量子センサや、量子コンピュータのメモリとしての研究が進んでいます。室温で動作する量子デバイスを実現する鍵になると見られています。

 

最後に、今後の展望を見てみましょう。市場規模は2026年には約218億ドルに達し、その後も年率7〜8%程度での成長が見込まれています。短期では、宝飾市場でのブランド化が定着。大手ブランドの参入により、天然ダイヤとの差別化が進みます。

 

3〜5年の中期では、ダイヤモンド半導体の量産化技術が確立され始める。EVのハイエンドモデルや、高速通信基地局での実用化が期待されます。長期では、「シリコンからダイヤモンドへ」の流れが加速し、エネルギーインフラや量子情報社会の不可欠な基盤材料となるでしょう。

 

以上をまとめると、人工ダイヤモンドの価値は、「安価な代用品」から「シリコンを超える戦略的素材」へと、完全にシフトしています。特に日本は結晶成長技術において、世界トップクラスの知見を持っており、製造業・テクノロジー分野での国際競争力を左右する重要なピースとなっています。