爺ヶ岳登頂を終えた我々の次なる目的地は,冷池山荘。今日の宿だ。

高山植物の写真を撮りながら爺ヶ岳を降りる。


ヤマホタルブクロ


ゴゼンタチバナ


シャクナゲ


コバノコゴメグサ。寄生植物である。



おっと,見えてきたのが冷池山荘。

どことなく雲行きが怪しい気が・・・


冷池山荘を視界に入れる510。


それにしても,すごいところに建っている



ここから冷池山荘に向かうまでの写真はない。

遠くの方でなにやら音が聞こえる。

飛行機か?

どうやら雷のようだ。

しかし,遠くの方だ。

先日,富士山の登山中に落雷で亡くなった人がいたという

「雷って恐ろしいよなあ」

そんな話をしながら冷池山荘に向かう。

おや?

雷の音,リアルに大きくなってきてへんか?

雷の音に気をとられていたが,気がつくと雨が激しくなっている。

雷の音が左側から聞こえていたが,

右側の方から聞こえるようになってきた。

通り越したのか?

雷の音が,「ゴロゴロ」から

「賀来千香子(※)ドドーン!」と,やや金属音混じりの音に変わってきている。

明らかに稲妻が光っている。

世間でも言われているように,光と音の間隔が短くなってくるとヤバイ。

でも,確かに近づいてきている。

稜線はヤバイ。

周りに避雷針となるような高いものが何もない。半径10m以内に落ちるとすれば,今いる4人のうち,誰かの頭上に落ちる。

でも,今はひたすら降りるしかない。

爺ヶ岳と冷池山荘を結ぶ鞍部から登りに入る。

肉体の疲労もあいまって,ここからの登りはきつい。なんとか樹林帯に入ったが,うっそうとした暗い林の中を歩いていても,稲妻の光が届く。

足が重い。しかし止まってはいられない。

ここで止まれば,頭上から雷に的を絞らせたことになる。

もはや,どこに落ちてもおかしくない状況になってきた。

「オレは運のいい男だ。雷に打たれて死ぬなんてことはないだろう」

そう信じるしかなかった。

後ろの3人も同じ思いだったのだろう。ただついてきてくれている。

そうこうしているうちに

冷池山荘に到着した。

ホント,救われた思いがした。

宿泊手続きをしていると

稲妻と共に「賀来千香子ドカーン!!」

落ちた。明らかにそういう音とタイミングだったし,

なによりも,この山荘に響く床の震動が,落ちたことを物語っている。

山荘の他の客も「落ちた」と騒いでいる。

わずかなタイミングだった。

我々は救われたのである。


(※)「賀来千香子」とは,この場合,女優を指すのではなく,雷が近くに落ちるときに鳴る音を表現したオノマトペである。

(参考 女優:賀来千香子)