​母と私の話29


母…
とうとう天にめさらる日が来たんだね…


肩で呼吸する母の手をさすりながら
問いかけた。

『怖くない』
『大丈夫、大丈夫』

それでも母から
『怖い』という感情が
伝わってくる

『そっか怖いよね』

『知らない道を1人で行くのは
確かに怖いよね』

『神様に迎えにきてもらお』
『神様に連れてってもらお』

母の額に手をかざし
『大丈夫、大丈夫』
『怖くない、怖くないよ』
『ほら、神様に連れてってもらお』

私は右手で神様の手をひっぱり
母の左手を繋げた

『神様、私の母をどうか
天国に連れてってあげてください』

『母はとても怖がりなんです。
どうかスムーズに天国へ行けるよう
お願いします』

神様にお願いをして神様の手と
母の手が繋がった手を離した

少し母の呼吸が穏やかになって
安心した顔に変わった

『良かったね』


『あら、お姉ちゃん達を待つのね』

『もう少しで来るよ』